2.アレではないみたいです
「テオ、いったい何をしているんだ」
「いや、お約束かなって、はは」
「テオくん……」
どうやら、スキル《糸》だとしても、アレではないらしい。
うん。
これはちょっと恥ずかしい。
それにしても、どうやってスキルは使うのだろうか。
「スキルの発動には、神に捧げる祝詞など、条件があることもございます。テオ様の先ほどの動作も、そうしたものではないのですか?」
「確かに、私も祝詞が浮かんできて、それを唱えることで炎が出たわ」
姉のメイもそうだったらしい。
「テオ、そうなのか?」
「いえ。特にそういったものは浮かんできませんでした」
その場にいるみんなの視線が、僕に集まった。
――じゃあ、さっきのはなんだったんだ。
言葉にされていないのに、なぜかはっきり分かる。
……顔が熱い。
この視線は甘んじて受け入れるべきだろう。
「こほん。先ほどは不発のようでしたので、改めて試してみようと思います」
「えっ、いや。スキル自体は使えていたようでしたが」
「はい?」
使えていた?
「いや、糸ならそこに落ちていたぞ」
兄のカイが指さした先を見る。
けれど、そこには何もない。
「テオよ。ひとまずもう一度、余計なことはせずにスキルを使ってみよ」
「はい。お父様」
余計なこと。
……はい。
今度はただ右手を伸ばす。
変なポーズはしない。
祝詞もない。
ただ、《糸》と念じてみる。
すると――。
するり。
「おお……」
すごい。確かに手のひらに、糸が現れた。
指の隙間から、細い糸がこぼれ落ちる。
そのまま落ちていくのを、今度はしっかり目で追った。
十センチほどの糸。
やがて糸の先が床に触れる。
そして――。
消えた。
「へっ?」
今度は、僕の声が静謐な聖堂に響いた。




