209 ルージュカルテットのデビュー
シロ、クロ、アケミさん、ミオさんの4人による魔物討伐祭りはいつまでも終わりそうにありませんでしたが、そろそろ日が落ちる頃だということで終了してもらいました。
「アタイは今日一日だけでかなりレベルアップできたで! 鑑定!」
【人 アケミ 女 17歳 レベル51 商人】
体力 47/178 x2
魔力 6/106 x2
スキル 体術(剣術5+2、格闘4+2)
詠唱省略
直感1+2
魔法 生活1+2(時間、着火、照明)
火3+2(火の玉)
水2+2(水生成、氷弾)
身体強化2+2
空間2+2(収納、瞬間移動、地図)
鑑定2+2
「とうとうアケミもレベルが50を超えたニャ! 超一流冒険者ニャ!」
「アタイは商人なんやけど…… まあ、それだけマサト君のバフの恩恵が大きいちゅーことやね」
アケミさんは満足そうに笑っていますが、17歳という若さでレベル51はものすごく高いです。それでいて大きな商会の会長もしているのだから、周囲からはどんな風に見られるのか予想もつきません……
「ミオも、レベルが上がった気がする…… 鑑定!」
【豹獣人 ミオ 女 13歳 レベル57 冒険者】
体力 72/369 x2
魔力 13/13 x2
スキル 体術(剣術6+2、格闘5+2)
魔法 生活1+2(時間、着火、照明)
火1+2(火の玉)
身体強化4+2
「レベルは上がったけど、1だけだった……」
ミオさんのレベルも今日一日でひとつ上がったようですが、浮かない顔をしています。
「いやいや、レベル50を超えた人ってそんな簡単にはレベルが上がるもんではないで! ちゅーか、レベル57なんてサニミ市の冒険者ギルドにもなかなかおらへん高さや!」
「……クロに追いつくにはまだまだ遠い…… もっと頑張る……」
ミオさんはクロをライバル視しているのですか……
ミオさんは僕等の行商に付いていきたいとの希望があったのに、ミオさんのレベルではダンジョン内では足手まといになるという理由で、アケミ商会での活躍をお願いしていますので、クロのレベルに追いついたら僕等と一緒に行商ができると思っているのでしょう。しかしまあ、異世界転生の恩恵を受けているクロのレベルには到底追いつけないと思います……
6人を僕の瞬間移動魔法でアケミ商会の会長室まで移動させたあとは、本日の大きな目的のひとつ、アケミ商会への魔石納入を実施しました。魔石はすべてを収納+魔法に入れた後、魔石レベルごとに取り出すことで、レベル分けができました。
「マサト君の収納魔法はいろいろと便利やね。数千個の魔石のレベル分けをするとなると、ほんまに気が遠くなるところやったで……」
魔石をレベルごとにいっぺんに取り出すなんて、通常の収納魔法では不可能です。僕の収納+魔法はものすごくレアのようで、過去に使えた人がいたという記録はなさそうです。きっと神おじいさんが特別に僕に与えてくれた能力でしょう。おまけに特別魔法なんてものも与えてくれていますね。至れり尽くせりです……
ちなみに魔石のレベル分けは鑑定魔法とか鑑定機で頑張るという方法もありますが、もっと簡単な手法があります。それは、魔石の大きさはレベルによって決まりますので、魔石をレベルごとの大きさに合わせたゲージにあてがい、嵌まる限界を確認する方法です。この方法なら魔力や魔石を消費しませんし、はるかに早く魔石レベルを確認することが可能ですが、それでも数千個の魔石をレベル分けすると考えたら、確かに気が遠くなりますね(笑)
魔石を卸したあとは、シロ、クロ、JKモードのペガとともに口紅を塗りあい、赤の『匿名のマント』を着てルージュカルテットに変身し、サニミ市の東門近くに瞬間移動しました。
「うおっ! 突然現れた奴らがおるやん!」
「なんや、あの赤いマントは?」
「美人揃いやけど、顔が覚えられへんで?」
「全員金色の冒険者じゃねぇか?」
サニミ市にやってきた商人さんや周辺で仕事をしていた冒険者さん達が、サニミ市に入ろうと門の前に並んでいました。そこに突然現れた僕等を見て、口々に噂話をしているようです。
「あら、結構並んでおるんやな。列の最後尾はあっちやね」
ルージュカルテットの1人が門の前の行列を見て発言しました。ルージュカルテットは基本的に他人の前ではサニミ弁で会話をすることに決めましたが、シロとクロはサニミ弁を使いこなすことができなかったので、発言はペガのものでしょう。
『匿名のマント』を着ると個人の認識がほとんどできなくなります。僕等4人は本来肌の色がそれぞれ異なるのですが、それすら認識ができないのです。見えているはずなのに認識ができないというのは、かなり不思議な感覚ですね。
「ちょっと待ってや!」
僕等が列の後方に歩き始めた直後、背後から呼び止める声がしました。振り返って確認すると、衛兵さんが僕等の方に向けて駆け寄ってきています。
「なんや?」
ペガが振り返って応答しました。JKモードのペガはどこかしら尊大な雰囲気を漂わせていますので、衛兵さんは少したじろいでいます。衛兵さんの話では、どうやら『匿名のマント』を知っている衛兵の隊長さんが、僕等を優先的に門を通してくれるということで、僕等を呼びに来てくれたようです。
隊長さん自らが鑑定機を持って僕等を鑑定しますが、その結果表示されるのはやはり【鑑定不能】の4文字のみです。しかし『山賊』などの赤い文字や、『正当防衛』などの黄色い文字が表示されなければ門を通ることに問題は無いようで、僕等はあっさりと通過することができそうです。
ちなみに冒険者証も本来は持ち主の本名が表示されているのですが、『匿名のマント』の効果によって他人からみると文字が認識できなくなっています。冒険者証も特定のダンジョンから産出する魔導具の一種なので、魔導具同士の連携がとれているようです(笑) 隊長さんも冒険者証の名前を確認しようと頑張っていましたが、すぐに無理だと気付いたようです。
「ちなみにサニミ市での目的を伺ってもよろしいか?」
門を通過しようとすると、隊長さんから質問が飛んできました。僕等を優先的に通してくれた目的は、隊長さん自ら僕等の正体を見極めたいからでしょうか? ダンジョン王国の王族のように、やんごとなき貴人が身分を隠している可能性があると考えたのでしょう。
「たんに冒険者としての活動をするためやで」
ペガはあっさりと回答して、有無を言わせずそのまま門を通過しました。隊長さんはまだ何か聞きたそうな感じがしましたが、『匿名のマント』を着て金色の冒険者証を首から下げているものすごい美女相手には、気後れしてしまう何かがあるようです(笑)
門を通過してサニミ市に入った後も、僕等を遠巻きに見ている人達がいましたが、直接アプローチしてくる人はいません。
「ナンパしてくる度胸のある冒険者がいないニャw」
この発言はクロですね(笑) 近くに他人がいないので、サニミ弁を話せないクロも小声での発言が可能です。
「このままではルージュカルテットの鮮烈デビューにはインパクトが足りませんわね。こんなに美女だけが4人で歩いているんだから、アタックしてくる馬鹿な男がいても良いはずですわ」
ペガも小声で発言していますが…… そうなんです! 今後のルージュカルテットの活動のためにも、鮮烈なデビューが必要です。つまり、ナンパしてくる無礼な冒険者に対して派手なお仕置きをすることで、町の噂になることを目論んでいるのでした。そうすることで、アケミ商会への高レベル魔石の供給元を偽装することに繋がります。本来の僕等の行商は、ひっそりと目立たず行いたいのです……
「来たニャ!」
ようやく前方からガラの悪い男が3人やってきました。待望の本日の犠牲者です。犠牲者と言っても、ひどい怪我などはさせないつもりです。
「ねーちゃん達、見かけないツラだが、ものすごい格好をしているやんけ。初めてこの町に来たんなら、俺たちが案内してやるぜ!」
「そうそう、なんなら気持ちいいところにも連れてってやるぞw」
「……ちょっと待て、彼女たち全員、金色だぞ?」
僕等に近づいたことで、やっと4人全員が金色の冒険者証を首から下げていることに気付いたようです。しかしもう遅いです。本日の犠牲者は確定しています(笑)
それにしても、この状態の僕はやはり女性にしか見られていないのですね……




