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208 魔物討伐祭り

 明日の行動について、さらに詳細な打ち合わせをアケミ商会で実施した後、夕食は以前も利用した立派なホテルで取りました。もちろんアケミさんやミオさんも一緒です。

 ちなみにホテルの名前は『丁字路(ていじろ)ホテル』で、サニミ市を東西に貫く南街道と、サニミ市南門を起点として南に延びるダンジョン街道を丁字路に見立てて名付けたようです。この世界ではアルファベットは普及していませんので、アルファベットの『T』ではなく、漢字の『(てい)』であることに注意が必要です。まあ、その注意が必要なのは僕くらいでしょうし、まちがえて『T字路(てぃーじろ)ホテル』と言ってしまっても、この世界の人達には『丁字路(ていじろ)ホテル』と言ったと思われるだけでしょうけど(笑)

 このホテルにはアケミ商会から砂糖や食器、果物、ワイン、魔石なども直接販売するようになっているようで、僕等もお客様としてかなり丁重に扱われました。宿泊も6人で利用しましたが、それなりに立派な部屋に泊まることができ、価格も割引してくれたようで格安でした。アケミさんとミオさんは別の部屋にしましたが、寝る前には特別(モフモフ)魔法でバフを満タンにしておきました。



 翌日は4人で馬車に乗ってサニミ市を東門から出て、すぐに南街道から外れた人気(ひとけ)の無いところからテンサイ村の近くに瞬間移動し、アケミさん、ミオさんと落ち合いました。アケミさんは自身の瞬間移動魔法でミオさんとともにサニミ市から直接ここに移動してきています。


「マサト君の特別(モフモフ)魔法と特訓のおかげで、アタイの空間魔法レベルは4にあがっとるで! 再使用可能時間はなんと半日の12時間や! 魔力も増えたさかい、サニミ市とテンサイ村間の瞬間移動も余裕で可能になったんや!」


 空間魔法使いでも瞬間移動が使える人ってかなりのレアですが、その人達のレベルはほとんどが2以下です。瞬間移動可能距離も短いですし、再使用可能時間は6日とか3日もあります。それでも貴族や大きな商会には破格の待遇で雇って貰えるのですが、アケミさんは僕のバフも併せてレベル4もあるので、それなりの距離があるテンサイ村付近まで、ミオさんと2人で移動してもまだ余裕がある感じです。アケミ商会を急激に発展させていますし、アケミさんの商人としての適性は、僕が見込んだ以上に大きいです!


 すぐにテンサイ村に到着し、まずはテンサイの収穫を実施します。僕の収納+魔法を使えば畑から直接収穫できるのではと試したところ、無事に可能な事を確認できました。


「ほー、テンサイが植わっとった形がそのまま土に残っとるやん。マサト君の魔法は本当に便利やねぇ……」


 アケミさんも感心していますが、『なんやて!』が出なかったので、それほどの驚きではなかったようです(笑)


 僕がテンサイから直接抽出した砂糖は、従来流通していた砂糖よりも真っ白で上質なため、サニミ市では少し高い価格をつけて売り出しています。従来品は南国のサトウキビから取り出した砂糖を遠路はるばる運んできたものなので、どうしてもかなりの高級品となってしまいます。その商流を僕等の都合だけで破壊するのは忍びないので、高めの価格をつけて差別化を図っています。しかし、それでも砂糖を扱えるようなお金持ちは上質なものを求めるためか、高価な僕等の砂糖を買ってくれており、在庫がかなりの速さで減少しているのでした。なかには大量に買い付けて、王都に転売している商会もあるようです。僕等も早く王都に行って、直接砂糖を卸すようにすべしなんて意見も出ましたし、王都にも商会を所有すべきだなんて事も言われましたが、商会のオーナーになんて簡単になれるものではありません! と僕が言っても、なぜかみんなには説得力が無いと否定されちゃいましたが……

 ちなみにトリマ村やビオン村のような元々砂糖が流通していないところでは、かなり安く砂糖を販売しています。かなり安くと言ってもサニミ市と比べての話で、僕がテンサイから直接抽出して作っているコストから考えたら、かなり大儲けできる価格ではあります(笑)


 テンサイ収穫後はアケミさんの弟さんが経営する村の商会に様々な商品を卸し、アケミさんのご両親から昼食をいただきました。アケミさんのご家族からはすっかり婿殿扱いされている感じがしましたが、気のせいではないですね……


 午後はテンサイ村周辺で木を伐採して魔物を呼び寄せ、大量の魔石をゲットしました。アケミさんやミオさんも参加しましたが、以前よりも上手に魔物を討伐できている感じです。2人でサニミ市周辺の森に入っていると言ってましたので、その成果が現れているのでしょう。

 テンサイ村での最後の作業は、畑の拡張と牧場造成のための森の開墾です。テンサイの収穫作業は僕が収納+魔法でやった方が効率が良いので、村の人手が余ってしまいます。そこで畑や牧場を作って雇用を増やすのです。さらに、砂糖を抽出した後のテンサイが大量に発生しますので、その利用先として牧場の牛や鶏のエサにします。これまでテンサイを購入してくれていた顧客に対しての販売は継続しますが、こちらは手間が掛かる割に儲けが少ないので、無理に販売はせず、求められたら応える程度にして段階的に縮小していく予定となりました。

 牧場の柵や建屋に関しては、サニミ市での材木販売で大工さん達との伝手(つて)がたくさんできたとのことで、アケミさんが手配してくれるようです。建築材料に関しては、今日も木材を大量にゲットしたので売るほど有ります(笑)



 昼食後はコダダンジョンに瞬間移動して、大空洞でのトカゲ討伐祭りです。


「うぉー! ほんまにダンジョン5階層まで一気に瞬間移動してもうたで!!」


 アケミさんが地図魔法で現在地を確認して驚いています。ダンジョン内の瞬間移動はダンジョン外と比べて格段に必要な魔力が増えます。もっと具体的に言うと、ダンジョンの階層間を超えるときに大量の魔力を必要とするので、同じ階層内なら通常の瞬間移動と魔力消費量は変わりません。


「なんやてって言わなかったニャw」


「そら、事前にマサト君に聞いてたんやし…… もうアタイはそんな簡単にはなんやてとは言わへんで」


 アケミさんは自信満々に胸を反らしていますが……


「なんやて~!! どんだけ岩トカゲが出てくるっちゅーねん!!!」


 大空洞に入るとすぐに大量の岩トカゲに囲まれました。たぶん100匹近くはいることでしょう。事前にそのことは言ってましたが、実際に()の当たりにすると驚きは大きいようです……


 アケミさんは驚きながらも、うまく魔物討伐を進めています。ちなみにアケミさんの剣は、陶器の町アセイ町で決闘したルーモイ領親衛隊のケクパさんからゲットした魔剣『獅子の剣』を渡して使ってもらっています。アケミさんのフォローは、バフが2重に掛かってものすごい速さで討伐をしているシロがやってくれているので、僕は自分の戦いに集中することができています。前回は僕に襲いかかってくる魔物達を魔法で間引きながら、数匹の魔物を相手に刀で戦っていたのですが、僕も成長したのかほとんど魔法を使わずに刀のみで討伐ができています。まさに無双状態って感じで、シロやクロがこの大空洞での戦闘を楽しみにしていたことが理解できちゃいました……


「魔剣ゲットニャ! マサト、鑑定するニャ!」


 大空洞の魔物たちを無事に殲滅(せんめつ)し、中央の宝箱を開けると魔剣が出てきました。なんだかするどい感じの剣です。


「鑑定!」


【タカの剣 超希少 1.7億エン 攻撃速度x1.4 攻撃範囲x1.2】


「おー、超高価ニャ! 格好いいだけあるニャ!」


 この剣は鑑定で一番安い剣を使っていたクロのものとなりました。ミオさんもその次に安い魔剣を使っていたのですが、このタカの剣とは系統が違ってミオさんとは不釣り合いにゴツい豹の剣に慣れているので、使い辛そうという理由で辞退しています。

 まあ、タカの剣はクロが気に入って振り回していますので、この選択で良かったのでしょう。いつかごっつい魔剣を入手できたら、ミオさんにあげることに決めました。


「この剣ですぐに戦いたいニャ! まだ15時前なので、もうちょっと魔物討伐するニャ!!」


「いやいや、アケミさんも疲れているようだし、もうサニミ市に戻ろうよ……」


「……いや、アタイはまだ大丈夫やで! なんだか魔物討伐のコツを掴めてきたようやわ! その前に体力の回復を頼んまっせ!」


 結局みんなの熱意(ペガを除く)に押されて、再びテンサイ村周辺での魔物討伐祭りが開催されました。もちろんその前にみんなをモフって体力や魔力の回復をしています。


「今日だけでまたレベルがぎょうさんあがっておるで! 魔物討伐がこんな楽しいとは思わんかったわ」


「今週はサービスサービスニャ!」


 クロが楽しそうに魔物を討伐しながら、相変わらず意味不明なことを言ってます。


「そうやな。大満足や!」


 それに対して、アケミさんもまんざらでもないと言った感じで返答しています。


「サービスに満足したなら、高評価とチャンネル登録をお願いするニャ!」


 クロは某動画投稿サイトの配信者みたいな事を言い出しました……


「チャンネル?ってなんや?」


 この世界にはユー○ューブはもちろん、テレビもありません!


「ニャハハハ、間違えたニャ…… 高評価とブックマークをお願いするニャ!」


「ブックマークってなんや?」


 僕にも何のことやら理解不能です……



 僕自身の体力は自分で回復できないので、祭りの様子はペガと一緒に呆れながら眺めていました。調子に乗ってどんどん森の中に入っていくので、最終的には狂い熊やゴーレムの集団まで出てきたのですが、ミオさんは平然としていたし、アケミさんもなんとか対応できていたので、僕が魔法でフォローする必要もありませんでした。


 特別魔法で自分の体力だけでも回復できれば、僕も祭りに参加したい気持ちが出てきちゃったのには、我ながら困ったものですね……




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