203 ベイシックダンジョンの冒険者ギルドにて その2
「あんさん達はものごっつい凄腕なんやね。そこのお嬢ちゃんでさえ金色の冒険者にふさわしいステータスを持っとると聞いて、えらい驚いたわ!」
王子のメイフォン様ではなく、奥方のエイビー様から会話の口火が切られました。どうやらこの夫婦の主導権は奥様が握られているようです。
僕等のステータスはレベルの高い鑑定をされて把握されているようです。鑑定レベル1で判明するペガのレベルだけなら、金色にふさわしいかはまだ微妙なところでしょう。ちなみにペガの現状のステータスは…… こっそりと確認しておきましょう。鑑定(6)!
【馬獣人 ペガ 女 7歳 レベル29 御者】
体力 28/37 x2
魔力 85/85 x2
スキル 体術(剣術2+2、格闘2+2)
詠唱省略
魔法 生活1+2(時間、着火、照明)
水3+2(水生成、氷弾)
火3+2(火の玉)
空間1+2(収納、地図)
鑑定1+2
状態 バフ
ペガはほとんど戦闘には参加していませんが、気が向いたときには魔法攻撃をしていたので少しだけ魔力が上がり、レベルも以前から1だけ上昇しているようです。ミラーゴーレム相手では魔法が効きませんので、ダンジョンボスとの連戦では完全なる傍観者となっていました。
ペガのレベル29でも詠唱省略が使える魔法使いとしてみれば、わずか7歳にして充分に超一流の冒険者として見ることができますね。まあ、現状のペガのステータスに表示される年齢7歳は、幼女モードの外観にあわせた数値になっているだけなので、本当の年齢は不詳です(笑)
「わたくしはマサト殿の元でそれなりに厳しい鍛練を重ねてきましたわ。わたくしのステータスが年齢の割に高いのは、すべてマサト殿のおかげですわ」
ペガが謙遜をして僕を持ち上げてくれますが、たぶん僕に出会う前から詠唱省略は使えていたと思います。今僕が確認したステータスは、たぶん偽装されていると思います。なにしろその正体は幻の神獣『天馬』なのです。実は竜並みに強いと言われても、僕は驚きません。
「シロさんやクロさんも強いのは、マサト殿のおかげなん?」
「もちろんそうです! すべてはマサト様のおかげです」
「そうニャ! マサトにいろいろ教えてもらって、ここまで成長してきたニャ!」
エイビー様の質問に二人とも食いつき気味に肯定したので、エイビー様も少し引き気味になりましたが、それでもさらに質問をしてきました。
「ま、まあ、マサト殿への恩もあるから、これほどの戦力で行商人を護衛しているんやな…… そして、ベイシックダンジョンにも深く潜れる…… それでダンジョンはどこまで行ったんや?」
「10階層以降を攻略していたニャ」
クロが即答しますが、具体的な階層は答えません。正直にダンジョンボスを何度も撃破しましたなんて言ったら、どんな顔をされるかわかりませんね(笑)
「もし最後まで行ってボス討伐の報酬を得たんなら、その魔導具を売って欲しいのやわ」
どうやらエイビー様はボス討伐の報酬が何なのか知っているようです。そりゃまあ、このダンジョン王国の王族であれば、それくらい知っていても当然ですね。
「その魔導具を何に使うのですか?」
少しカマをかけてみました。
「そうやって聞いてくるっちゅーのは、討伐報酬をゲットしたってことやな?」
「さあ、どうでしょう…… 単に僕が討伐報酬の正体を知っているって事なのかもしれません」
「ふふふ、まあえーやろ…… その魔導具を使って王城の外をお忍びで動き回りたいだけや」
ボス討伐の報酬が『匿名のマント』であることを知っているのは確定しました。
「そんなことをしては、危険ではないのですか?」
正体不明の怪しい人物が堂々と街中をうろついていて、喧嘩を売られたりしないのでしょうか?
「ちゃんと護衛はつけるで。ただその護衛対象はやんごとなき身分のもので、下手に関わると危ないって事だけ周囲に伝わり、その正体が不明ってことになれば良いんや」
なるほど。マント着用者の周囲に強そうな護衛がいれば、喧嘩を売ってはいけない人物だと周囲の人達に認識されるのですね。
「それに王城の外どころか、ダンジョン王国の外でも行くことが可能や」
「鑑定不能な人物が他国に入国できるのかニャ?」
国外から入国する際や、大きな町に入る際は、必ず鑑定されて犯罪者が入らないように衛兵にチェックされるのが普通です。先ほど僕等自身で『匿名のマント』を着た人への鑑定結果を確認しましたが、フードを頭から被ってしまえば【鑑定不能】しか表示されませんでした。
「ステータスに黄色や赤色があれば、鑑定レベル1でもちゃんと表示されるんや。だから鑑定不能と出ても入国チェックにはひっかかからへんよ。逆にやんごとなき身分の人だと衛兵には思われるので、丁寧に扱われるそうや」
なるほど、『匿名のマント』でも山賊などの犯罪歴は隠せないのですね。さすがに犯罪者には厳しいこの異世界なだけはあります。ものすごく賢いであろう高次元の神おじいさんがこの世界の創造主なだけあって、そのへんの抜け穴はしっかり塞がれているのでしょう。
そして、マントを着ていても入国が可能って情報は助かりました。これで『ルージュ カルテット』としての行動も自由にできることが確認されました。この情報のお礼にマントを売却しても良いかな? もちろん購入元の情報は秘匿するのが条件ですね。
「なるほど、目的はわかりました。それで、いくらで買っていただけますか?」
「おお、売ってくれるんか? それはありがたいんやが、確認までに何を売ってくれるんや? まあ、一応の最終確認や」
確かに、今までひとことも『匿名のマント』という具体的な情報が出ていませんでしたね……
「僕等が売却するのは、もちろんベイシックダンジョンのボス討伐報酬である『匿名のマント』です」
「そうや、そうや。やっぱりダンジョンボスを討伐したんやな……」
「ウチらが討伐したとは断言していないニャ」
「まあそれはどっちでもええんや…… そうやな…… 滅多にオークションにも出てこないんやが、その際の落札価格が5億エン前後なんやし、6億エンでどうや?」
僕の鑑定魔法では、その価値は5億エンと出ていました。ただし価格を鑑定できるのは鑑定レベル5以上なので、エイビー様はその鑑定結果は知らないのでしょう。そこで過去のオークション落札額のなかでは高めの値段を言ってくれたようです。誠実なその姿勢に感銘を受けましたので、その値段を受け入れましょう。
「6億エンで承知いたしました。特に色の希望はありませんよね?」
赤色だけは売ることができません。もう一着赤色のマントをゲットする必要が出てくると、また何十回もボス戦を繰り返すことになっちゃいます……
「色を希望できるほどの選択肢があるんか?」
しまった! 失言でしたね。有無を言わさず赤色以外の『匿名のマント』を差し出せばそれで終わった話でした……
「い、いや、選択肢は全然ありませんが……」
「もし2着有れば2着欲しいのや! ウチと旦那の分…… いや、護衛も含めて3着や!」
この夫妻は奥様のエイビー様が主導権を握っている感じでしたが、旦那様のメイフォン様にチラリと向けた視線を見るに、夫婦仲は良さそうな感じです。そして、さらに護衛の分というのは、きっと名の知れた強い護衛も連れて行きたいのでしょう。夫妻の正体を『匿名のマント』で隠せても、夫妻専属の有名な護衛の正体を隠せなければ意味がありません。
「僕等から購入したということは、絶対に秘密にしてください」
そう言って3着の『匿名のマント』を魔法袋から取り出すフリをして、収納+魔法から取り出しました。色はランダムですが、もちろん赤くないことだけは確認しています。
「おお、おおきに! もちろんマサト殿から購入したことは秘密や! ダンジョン王国親衛隊が過去にゲットした魔導具ってことにしておくで。自国のダンジョン産出品を外部の冒険者から購入したなんてこと、周りに知られたら恥や! 王族には昔から伝わるマントがあるさかい、その一部って事にするんや。本当はお義父様やお義兄様がマントを貸してくれたら、それで済むんやけど……」
どうやらメイフォン様は第一王子ではなく、お兄様がいるようです。
「はい、そういうことでお願いします…… そうすると3着で18億エンですね」
「18億…… えーと、今さら言うのもなんなんやけど…… まとめ買いってことで16億にまからへん? 今はそれしか手持ちがあらへんのや……」
さすがに王族といえども、18億エンものキャッシュは持っていなかったようです。まあ、鑑定では1着5億エン、3着で15億エンなので、16億エンでもまったく問題ありません。了承して大白金貨10億エンを1枚と、白金貨1億エンを6枚受け取りました。
大白金貨を見るのはこれが初めてかな? さすがに10億エン硬貨ってことで、ものすごい威厳というかオーラというか、なんとも言えない迫力があります。通貨もダンジョンから産出する魔導具の一種らしく、魔法袋や収納魔法内で勝手に両替される不思議な機能を持っていますので、その利便性からこの異世界共通の貨幣となっています。偽造は不可能らしいので、これも神おじいさんの綿密な異世界運営の要となっている感じですね。




