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201 ルージュ カルテット

「ダサイというなら、ペガがパーティー名を考えるニャ!」


 『赤いマントの4人組』というパーティー名をペガにダサイと言われたクロは、挑戦的な視線をペガに向けているようですが……


「僕等の間で会話するときは、とりあえずフードは取ろうよ」


 『匿名のマント』のフードを頭まですっぽり被ったままだと、個人の認識が阻害されて誰が誰だか混乱してくる感じがします。


「そうですわね…… それでパーティー名ですけど、最近のマサト殿は命名にも才能を発揮しているわけですし、マサト殿にお願いしたいですわ」


 みんなが被っていたフードを取ってくれました。これで個人の認識が復活しましたので、会話もしやすくなります。

 その後のペガの『最近の』という言葉には、クロがニヤリと反応しています。まあ、白い犬に『シロ』、黒い猫に『クロ』と名付けた僕の命名センスは褒められたものではないとの自覚はありますので、特にその点に僕が反応するのは控えておきましょう……


「マサト様の名付けは、昔からすばらしい才能を発揮していました。パーティー名もすばらしい名前をつけていただけるでしょう!」


 シロが僕の命名センスを褒めてくれましたが、きっとシロは僕を慰めるつもりでお世辞を言ったのではなく、本気ですばらしいと思っている感じです。


「そうだニャ! ペガはマサトの昔の命名センスに思うところがあるのかニャ?」


「……いいえ、まったくありませんわ……」


 クロとペガの様子からは、少なくとも過去の僕の命名センスについては疑問があるようですね……


 ペガが才能を発揮したという最近の僕の命名とは、ペガの馬形態の姿につけた『マロン』のことでしょう。でもそれは単に栗毛の馬に元世界の外国語で栗色って名付けただけなので、僕の命名センスはあんまり進歩しているとは言いがたいです(笑)

 でも『マロン』って言葉はこの世界では認知されていないようだったので、不思議な響きを持つ良い感じの名前として受け止められていると思います。よってパーティー名も同じ方法で考えてみましょう。この世界の言葉は日本語がベースとなっており、日本語として一般化されていた外来語は、カタカナ言葉としてこの世界でも通用しているようです。例えば『レベル』『ステータス』『ギルド』『ハーティー』などが該当します。しかし日本で広く通用していなかった外来語については、この世界では認知されていないのでしょう。外国語という概念がこの世界にはありませんので、カタカナ語の語源は何なのかという疑問を持つ人もほとんどいない感じです。


 赤い四人を外国語で言うと、『レッド フォー』? なんか違う感じがします…… レッドも格好悪く感じるので、英語ではなくマロンと同じフランス語にしましょう。えーと……『ルージュ』はフランス語でしたっけ? まあ、何語だったかなんてこの世界では関係ないし、『ルージュ』って良い感じなので採用しましょう。

 4人は『カルテット』ですね。これはフランス語でしたっけ? まあ、何語だったかなんて(以下略)


「『ルージュ カルテット』なんてどう?」


 とりあえず提案してみました。


「さすがはマサト様です! すばらしいと思います!」


 シロが真っ先に褒めてくれましたけど、僕に対するシロの評価は正直あてにはできません(笑)


「……良いと思うニャ。どっかで聞いたことがある響きな気がするニャ。でもそれが良い感じに受け止められるニャ……」


 クロはきっと元世界のテレビなどで聞いた覚えがある言葉なのでしょう。なにしろクロからはガン○ムなどのアニメ知識をベースにした言葉が飛び出してきますので(笑) それらはどうやらお母さんと一緒に視聴していたアニメ知識のようです。僕から見たお母さんは若作りの良妻賢母という認識でしたが、その中身はヲタク腐女子だったという疑惑が生じています……


「なぜかマロンと似た印象を受けますわね。マサト殿の命名センスはやはり素晴らしいですわ!」


「3人とも異論は無いようなので、『ルージュ カルテット』に決定だね」


「いいと思いますわ。……それとわたくしたちの正体を隠すのなら、話し言葉も変えた方が良いと思いますわ」


 ペガの後半の発言は、それとなくクロに視線を向けながらのものでした。


「クロは特に特徴の無い話し方をしているニャ! それよりもペガがなんとなく気取った感じでしゃべっているのが目立つニャ!」


 クロがペガに反論していますが、第三者としてクロの発言を聞いている限り、その内容に賛同できません(笑)


「そうですわね…… マサト殿、どうされますの?」


 ペガはクロには反論しませんでした。クロの語尾『ニャ』については無意識に発言しており、変に指摘するとクロがバグってしまうことが過去にありましたので、ペガとしても反論は自重してくれたようです(笑)


「みんなで大阪弁、じゃなかった、サニミ弁をしゃべろうか?」


 みんなでサニミ弁を話せば、普段の僕等の話し言葉との違いから、正体が判明しづらくなるはずです。


「サニミ弁って何だったかニャ?」


「アケミはんのしゃべり方を真似せいっちゅーことやな」


 おお、ペガのサニミ弁は完璧です。ペガの発言は大阪弁としてはインチキ臭く感じますが、アケミさんの話し方自体がインチキ大阪弁にしか聞こえませんので、サニミ弁としては問題ないでしょう(笑)


「ペガはんの話し方は完璧やな! ほな、シロやクロもサニミ弁をしゃべってみてや!」


 シロやクロもサニミ弁に挑戦を(うなが)してみました。


「えーとニャ…… アケミみたいにしゃべるんやニャ…… 儲かりまっかニャ? ぼちぼちでんなニャ……」


「アケミのようにと言うと…… なんですと?」


「二人ともダメダメでんがな」


 ペガから二人に不合格が言い渡されました。その後もしばらく特訓してみましたが、ダメダメ状態からの改善が見られませんでしたので、シロとクロは1単語のみを短く発言することにしてもらいましょう。基本的に『ルージュ カルテット』として対外的な会話をするときは僕かペガが発言し、シロとクロには必要最低限の単語のみを発声してもらいます。


「個別の名前はどうするニャ? 1号、2号、ブイスリーかニャ?」


「1号、2号はダサイし、3番目は意味不明ですわ」


 クロの提案にペガは意味不明と反応していますが、僕は元ネタがかろうじてわかりました。それにしても、昭和の特撮ヒーローまでもがクロの守備範囲だったとは……


「これもマサトに決め手もらうニャ!」


 クロの仮面ラ○ダー風の提案はもちろん本気ではなかったようで、再びあっさりと僕に命名権が回ってきました……


 これも元世界の外国語由来で考えましょう。『ワン、ツー、スリー、フォー』は格好悪いし、何か違う気がします。英語でもこの場合は『ファースト、セカンド、サード』でしょうか? 4番目はホーム? ……これじゃ野球です! えーと…… 『フォース』ですかね? でもあんまり格好良く感じられませんので、やっぱりここはフランス語でしょう。

 フランス語だと『アン、ドゥー、トルゥー』でしたっけ? 自信がありませんし、4番目がわかりません。まあ、何語だったかなんてこの世界では関係ないですが、英語では良い感じとは思えませんので不採用でしょう。

 何語だったか不明ですが、化合物の命名に使う数え方なら、ネット動画などで憶えた記憶があります。


「順番に、モノ、ジ、トリ、テトラ、なんてどう?」


 この世界にはモノレールとかモノクロ、テトラポッド、テトラパックなんて言葉はないはずです。


「さすがはマサト様です! 命名由来がまったくわかりませんが、なぜか統一感のある名称ですね」


 まあ、シロの賞賛は当てにはならないので(笑)


「マサト殿は不思議な響きの名前をつけるのが上手ですわね。良いと思いますわ」


「いいと思うニャ!」


「3人の賛同も得られたので、これでいこう! えーと、僕が『モノ』、シロが『ジ』、クロが『トリ』、ペガが「テトラ」だね」


「ペガの名前のほうがかわいい感じだニャ……」


「マサト殿が決めてくれた名前に文句つけるのは良くありませんわよ!」


「文句はないニャ……」


「まあ、変装時の仮の名前なので……」


 今さら名前を交換するのもペガに悪い気がしますので、なんとかクロには納得してもらいましょう。でも、たしかに『テトラ』が奇跡的にかわいい名前ですね(笑)


「そうだニャ…… クロには『クロ』というマサトが命名してくれた素晴らしい名前があるニャ! これ以上の贅沢はバチが当たるニャ!」


「わ、わたくしの分身にも『マロン』という素晴らしい名前をマサト殿から(たまわ)りましたわ!」


「まあまあ、この名前は元世界の知識由来なので、特に深い意味は無いよ。それにこの命名法だと、さらに人数が増えても『ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ、ノナ』と続けて命名できるし……」


 10番目の『デカ』は格好悪すぎなので、9番目までですね(笑)


「続けてとニャ?」


 あれ? なんかまずいことを言った気がします……


「あと5名増やせる余地があるとは…… さすがはマサト様です!」


「べ、べつに無理に増やす予定はないけど……」


「いや! 5名分の名前が用意されているのなら、赤いマントもあと5着用意するべきニャ!」


「そうすべきですね! さすがはマサト様です!」


 いや、さらにマント5着の用意は僕の提案ではありませんが……




 結局、シロとクロに押し切られて、追加5着の赤い『匿名のマント』をゲットするため、ベイシックダンジョンのボス戦をさらに53回も繰り返すことになってしまいました……




ちなみに『ルージュ』はフランス語、『カルテット』はイタリア語、『モノ、ジ、トリ……』はギリシャ語、フランス語の数は『アン、ドゥ、トロワ、カートル』だそうです。


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