198 匿名のマント
「鑑定!」
【匿名のマント 超希少 5億エン 鑑定妨害7 認識阻害】
ダンジョンボスクリアでゲットした赤いマントを鑑定すると、『超希少』の魔導具であることが判明しました。
「おお! なんかすごそうニャ!」
「超希少で五億エンとは、さすがにダンジョンボス討伐報酬のことだけはありますね。さすがはマサト様です!」
「具体的にどんな効果があるのか、早速試してみたいですわ。とりあえずクロが着てみなさい」
「なんでクロで試すニャ? ペガでも良いニャ!」
「今手に持っているのがクロなんだから、そのまま着てしまうのが合理的ですわ!」
「……わかったニャ」
クロが匿名のマントを着ると、すぐにその効果が現れました。なんとクロの存在感がすごく薄れて、その印象がよくわからない感じになりました。
「鑑定!」
【猫獣人 クロ 詳細不明】
「レベル5の鑑定魔法をクロに掛けましたが、種族と名前しか鑑定できないようですね」
シロがすかさずクロの鑑定をしてくれましたが、たしかに『鑑定妨害7』の効果があるようです。この7というのはどう意味でしょうか? シロの鑑定レベルは元々1しかありませんが、現在はバフが2重に掛かってレベル5となっています。試しに僕のレベル6の鑑定をしてみましたが、結果は変わりませんでした。もっと鑑定魔法のレベルが上がると鑑定できちゃうかもしれませんが、鑑定レベル6でも前代未聞なので、まあ鑑定できなくなるという認識で大丈夫でしょう。
「マントにはフードもあるので、すっぽり頭からかぶって欲しいですわ」
「ペガは注文が多いニャ……」
クロが渋々とマントのフードを頭からかぶせると、なんとクロの顔も認識することができなくなっちゃいました。それにクロの声も途中から変な感じになっています。
「あら、クロの顔がよくわからなくなってしまいましたわ。それに途中から声も変わっていますわ」
「たしかに声が変になったニャ!」
やっぱりクロの声が変わっています。元世界のテレビで匿名希望の人が声を変えてしゃべっているのとそっくりです。
「男だか女だかわからない、不思議な声ですね……」
シロの言うとおり、性別を判別することができない声になっています。クロの顔も見えているはずなのに、個人が判別できない感じになっています。まるで脳がバグってしまっているようです。
「鑑定!」
【鑑定不能】
シロが再度鑑定をしてくれましたが、フードを頭までかぶるとすべてのステータスが鑑定ができなくなっていました。
「これはすごい効果ですわね……」
「そうですね。ある意味危険な魔道具にもなり得ますが、さすがはダンジョンボス討伐報酬って事ですね……」
ペガとシロもその効果に感心しています。
「クロもマントの効果を確認したいニャ。マサトが着ると、きっと面白いことになるニャ!」
クロがそう言ってマントを脱いで僕に着せてきました。まあ、実際に自分が着てみるとどんな感じになるのかも確認したいので、おとなしくクロにマントを着せてもらいます。フードも頭まですっぽりかぶせられました。
「おお! これはすごいニャ……」
「そうですわね…… マサト殿が着ると……」
「さすがはマサト様……」
3人ともなぜか感心しているようですが、何に感心しているのでしょうか?
「何に感心しているの?」
「声も性別不明ですわね」
「試しに口紅を塗ってみると完璧になると思うニャ!」
「そ、それはさすがにマサト様に失礼では? い、いや、でも、見てみたいですね……」
なぜか嫌な予感がしますが、3人に押し切られて赤い口紅をクロに塗ってもらいました。簡単な化粧品も日用品として僕の行商で扱っていますので、無いから無理というロジックは使えませんでした……
「すごいニャ! 完璧ニャ!」
「……さすがはマサト様です……」
「そうですわね…… どこから見ても女性にしか見えませんわね……」
……やっぱりそんなところだとは思いました…… 元世界でも同級生の女子達にさんざん女装をさせられていたので、どうせ僕は女顔ですよ……
「これでマサトの正体を隠して行動するニャ! やりたい放題ニャ!」
「やりたい放題はともかく…… マサト様の身の安全に資する魔導具にはなり得ますね」
「マサト殿の分だけではなく、いっそのこと全員分のマントをあつめて、別働隊として行動する時に着るのが良いと思いますわ!」
「おお! ペガにしてはいいこと言ったニャ! あと2着集めるニャ!」
「2着じゃなくて3着ですわよ!」
なんだかよくわかりませんが、3人に押し切られて『匿名のマント』をあと3着集めることが決定されました。まあ、正体を隠して行動したいことがあるかもしれませんので、おとなしく3人の決定に従いましょう。女性から一致団結して要求を突き付けられると、断るのは難しいですね……




