195 東への旅
朝食をブリアント亭でとった後は、プゴル村でのワインの仕入れとワイン樽用の材木の販売、僕がオーナーとなったヘスキド商会を含めたプゴル村の各商会に商品を卸し、再びブリリアント亭に戻って昼食を食べ、昼過ぎにはプゴル村から東に向かって出発しました。
まあ、馬車で東に向かって出発するフリをしただけで、人気の無い道に出たらすぐにベイシックダンジョンの16階層に戻ったのですが(笑)
16階層ではレベル17前後の骸骨騎士が同時に5体くらい出現し、さらにレベル20以上の大鬼も3体以上出てくることもあるため、一般的な冒険者ではかなり厳しい戦いを強いられそうです。ただ、シロやクロにとってはまったく問題にならない相手なので、魔法の練習のためということで剣や槍は使わずに魔法攻撃ばかりしています。枯渇する魔力は僕の特別魔法ですぐに補充できますので、魔法は盛大に撃ち放題です。
「ニャニャ! また宝箱が見つかったニャ!」
16階層以降も探索している冒険者はいないようで、ぼちぼち宝箱は見つかります。ダンジョン内の宝箱の出現位置は変わらないようなので、地図魔法に宝箱の位置がマークされていきます。僕の空間魔法レベルは高いので、瞬間移動+魔法だと再使用可能時間が1分と非常に短かく、ダンジョンの地図が完成すれば瞬間移動でものすごく効率的に宝箱を開けて回ることができそうです。ダンジョン内の瞬間移動は通常よりも魔力の消費が大きいのですが、これも僕の高い魔力値がさらにバフによって3倍にも増やされているため、魔力枯れの心配はしなくても良さそうです。人気の無いダンジョンではまさにチート能力の組み合わせですね……
「ニャニャ? なんか小っさい照明が入っているニャ」
クロが開けた宝箱の中を覗くと、小さいシャンデリアが入っていました。デザイン的にはものすごく豪華なシャンデリアですが、実用性に疑問が生じるミニチュアサイズです。
「ダンジョン内の宝箱の大きさは一定なので、大きなお宝は縮小されて収納されておりますわ」
ペガの言葉を受けてクロがミニシャンデリアを宝箱から取り出すと、ちゃんと豪華な照明として使えるサイズのシャンデリアに拡大されました。
「おお、大きくて豪華な照明ニャ!」
たしかに、舞踏会の会場などに使われていそうな立派なシャンデリアです。
「点灯しているところを見たいニャ」
えーと、エネルギー源である魔石を入れるところは…… あった! この手の天井に設置する照明については、親切にもリモコンが付属しています。そして魔石はリモコン側に入れれば使えるようになるという、これまたすごく親切な設計になっています。エネルギーを無線で伝達しているのは、どういう原理なんでしょうか? まあ、質量保存の法則とかも完全に無視しているファンタジー世界なので、細かいことを気にしてはいけませんね(笑)
おや、魔石はレベル20以下のものが必要なようです。これまで見つけた魔導照明はすべてレベル10以下の最低レベルの魔石で使えましたが、さすがに立派なシャンデリアだけあって魔石のパワーが必要なようです。
「魔石をリモコンにセットしたので、点灯するよ!」
スイッチを入れるとシャンデリアは無事に光り始めました。照明からぶら下がっている多数のガラスの玉に光がきらめいて、とてもきらびやかにダンジョン内を照らしています。まあ、このダンジョンは洞窟の中なので、豪華なシャンデリアはとても似つかわしくないのですが(笑)
ちなみにシャンデリアはシロのハラターマの槍によって高く掲げられています。市場価格が1億エン以上もする魔槍を照明の架台に用いるなんて、ものすごい贅沢ですね……
「キラキラと輝いて綺麗だニャ! きつねのしっぽ亭のマサトの部屋につけるニャ!」
「あの落ち着いた雰囲気の部屋には似合わないよ……」
その後も16階層を探索して魔導照明や魔導蛇口、魔導天秤、魔導鑑定具を入手し、17階層も引き続き探索したところ、レベル2の魔導鑑定具もゲットすることができました。最初に見つけたレベル2の鑑定機はすぐにクロの所有物となってしまいましたが、まあレベル2の鑑定機ではレベル1の鑑定ができませんので、鑑定レベルを使い分けるためにしょうがないですね……
「これで17階層もすべて回ったことだし、そろそろダンジョンを出て今日の宿を確保しに行こうか?」
すでに時間は15時45分過ぎです。冬なのであと1時間もすれば日没です。この世界の普通の旅人であれば、日が出ている間に移動を済ませるのが常識です。
「やっとダンジョン探索も楽しくなってきたところですが、しょうがないですね……」
やはりダンジョンの低層階探索だと、シロにとってはつまらない単純作業にしか感じられないですよね……
「でも、まだ昨日よりは時間は早いと思うニャ。まだ2階層くらいは探索できるニャ!」
「昨日はプゴル村のブリリアント亭という宿の目当てがあったので、19時過ぎまでダンジョン探索しちゃったけど、今日はプゴル村から東に進んだ未知の村に行かなきゃならないので、日の出ている間にその村に入るよ」
「宿はきつねのしっぽ亭で良いと思うニャ……」
「それではいつまで経ってもホウライ国にはたどり着けませんわよ! そんなにきつねのしっぽ亭が良いなら、ユキやクミと一緒にきつねのしっぽ亭に住み込んで、魔石や食肉の確保を仕事とすれば良いと思いますわ!」
「それはマサトと離ればなれになってしまうので駄目ニャ! 宿の食事は我慢するニャ……」
ペガがクロを説得してくれたので、ダンジョンからプゴル村近くに瞬間移動し、マロンが牽く荷馬車で飛行して東に向かう道を辿り、無事に次の村に辿り着きました。辿ってきた道は東西を結ぶ大きな街道からは外れていますので、村は宿場町としては規模が小さく、立派な宿もありませんでしたが、その中でも整っていそうな宿に宿泊しました。
「食事はおいしくなかったニャ……」
「まあ、宿の感じからして妥当なレベルだったよね」
「お風呂もないニャ」
「豪華な宿ではないからしょうがないよ。清掃魔法が使えるんだから、まあいいでしょ」
「マサト殿には強力な瞬間移動魔法があるのだから、いつでも利用できる秘密の拠点を作れば良いのですわ」
ペガが良いことを思いついたという感じで挙手をして発言しました。
「でも、東に向かっているというアリバイ作りのために、結局宿には泊まる必要があるのでは?」
シロがペガの案に疑問を投げかけますが、ペガは自信満々って感じです。
「宿には泊まって部屋には入る必要がありますわ。でも、そのあと拠点に瞬間移動してしまえば良いのですわ」
なるほど、アリバイ作りのために宿の部屋は確保するけど、実際には豪華な拠点に瞬間移動してそちらに泊まるって事ですね。アリバイのためだけに宿代を払うのはもったいない気もするけど、まあ僕等の現在の稼ぎを考えるとそのくらいはなんともないですね……




