193 鉄の破軍
10階層でのボスは骸骨騎士が5匹でした。レベルは20以下だったので単体の強さは大鬼以下だと思いますが、五匹がそれなりに連携してくるので一般の冒険者には手強い相手かもしれません。まあ、僕等にとってはまったく相手にもなりませんが(笑)
11階層は他の冒険者に会うこともなく、宝箱も多く見つけることができました。魔導照明や魔導蛇口、魔導天秤、魔導鑑定具などをゲットしました。11階層からの地図はもらっていませんので、隅々まで探検して宝箱の位置を確認できました。
12階層も11階層と同様に攻略し、13階層への階段を降りたところで久しぶりに他の冒険者パーティーと出会いました。4人組のパーティーで、3人は金色、1人が銀色の冒険者証をしている高ランク冒険者達のようです。フロオさんが忠告してくれていたタチの悪いパーティーかな?
「おいおい、このダンジョンの11階層以降はレキャ様率いる『鉄の破軍』のテリトリーだぞ? 初めて見る面だが、そこんとこ聞いてなかったのか?」
先頭で魔導ランタンを持っている狐獣人が僕等に向かって挑発的な事を言ってきました。
「そんなことは冒険者ギルドからも聞いていませんね。誰が決めたルールですか?」
シロが冷静に返答しました。いつもなら真っ先にクロが返事をすると思うのですが、今回はこの様子を面白そうに眺めているだけです。
「このダンジョンにいる冒険者達全員の暗黙の了解だ。11階層以降にゲットした魔導具もすべてレキャ様の物なので、すべて差し出して10階層まで戻るんだな!」
これは脅迫ですね。そうなると満を持してクロが動き出しました。
「ウチらはベイシックダンジョンの冒険者ではないから、そんなルールは守る必要が無いニャ!」
「このダンジョンに入ったらよそ者も守る必要があるんだよ! ごちゃごちゃ言ってないで、さっさと戦利品を差し出せ!」
「こんな勝手なことを言ってるけど、レキャの見解はどうなのニャ?」
クロは狐獣人を無視して、後方で腕を組んで偉そうにしていた熊獣人に質問を投げかけています。この熊獣人は大きな魔剣を持っており、一番強そうな雰囲気を纏っていたので、『鉄の破軍』のリーダーであるレキャさんに間違いないでしょう。
「てめえ、なにふざけた口をレキャ様にきいているんだ?」
狐獣人の横にいた虎獣人が剣をクロに向けながら叫んでいます。剣先を僕等に向けたことで、この虎獣人のステータスにも『正当防衛』の表示がされていることでしょう。
「まあまあ、よく見ればまだ若い冒険者さんのようやし、世間の常識にもうといんやろね。年配者の言うことはよく聞いた方がええと思うで」
3人目はインチキくさい関西弁を話す魔法使いでした。この人も僕等を脅迫したことになるのかな? たぶんクロは向こうの4人全員に『正当防衛』が表示されるのを待っているのでしょう。
「腰巾着ではなく、レキャに聞いているニャ!」
「フフフ、なかなかに気の強いお嬢ちゃんだな…… あまり舐めた真似していると長生きできないぞ?」
クロはとうとうレキャさんを引っ張り出すことに成功しました。でもまだレキャさんには『正当防衛』の表示はされていないでしょう。
「汚いおっさんをなめるなんてとんでもないニャ! とにかくウチらはこのダンジョンのローカルルールなんて関係ないんだから、勝手にさせてもらうニャ!」
クロは彼らを無視して横を通り抜けようと歩き始めましたが、それを狐獣人が通せんぼしました。
「おい! 勝手に先に進もうとするな!!」
「さっきからこのキツネがキャンキャンとうるさいニャ! レキャはちゃんと躾をしておけニャ!」
クロの挑発が続いたおかげで、とうとうレキャさんも剣をクロに向けてこちらに歩いてきました。
「いい度胸をしているな…… こんな人気の無いダンジョンで殺されても、誰もその犯人を捜してはくれないぞ!」
これでレキャさんにも『正当防衛』が表示されたことでしょう。
「やっと引っかかったニャ……」
そう言うとクロは先ほどまでさんざん練習していた鑑定魔導具の早撃ちを披露してくれました。
【熊獣人 レキャ 男 43歳 レベル42 冒険者 正当防衛】
【人 グレデ 男 38歳 レベル38 冒険者 正当防衛】
【虎獣人 ヌセル 男 32歳 レベル32 冒険者 正当防衛】
【狐獣人 ホリカ 男 29歳 レベル30 冒険者 正当防衛】
見事全員のステータスに黄色い『正当防衛』の文字が表示されています。
「ほう、俺たち全員が黄色くなるのを待っていたのか? しかし、無駄な努力だった……」
レキャさんは感心したようにクロの行動にコメントをし始めましたが、それ以上の言葉を発することはできませんでした。なぜならレキャさんの頭は胴体と別れを告げていましたので……
一瞬で鑑定魔導具と剣を入れ替えてレキャさんを討伐したクロに驚いた残り3人も、その直後に魔槍を振るったシロに討伐されました。一般的には超一流と目されるレベル40前後の冒険者でも、シロやクロの前では赤子に等しいですね……
「このダンジョンに巣くっていた害獣を討伐できたニャ!」
クロがドヤ顔で胸を張っています。フロオさんが懸念していたタチの悪い冒険者パーティーというのは、この『鉄の破軍』に間違いないでしょうから、排除できたのはこのダンジョンを攻略する冒険者達にとっては良かったことなのでしょう……
レキャの持っていたごっつい魔剣はそこそこの業物でしたが、僕等の戦闘形態には合わないので後で売り払うことにしましょう。他の3人の装備品にはめぼしいものはありませんでしたが、だからといって捨て置くのはもったいないので、討伐した僕等がもらって売り物に加えちゃいます。
その後の15階層までの宝箱はまったく見つからなかったので、『鉄の破軍』が開けた後だったのでしょう。15階層ボスの岩ゴーレム1匹をさっくり倒して16階層に到達すると、再び宝箱が見つかるようになったので、『鉄の破軍』のテリトリーは11階層から15階層までの間だったようです。
「11階層以降は俺たちの独占だとか言ってたくせに、15階層のゴーレムは突破できなかったようだニャw」
クロが『鉄の破軍』を馬鹿にして笑っていますが、1匹だけとはいえゴーレムはかなりの強敵です。一般的な冒険者や騎士団が20人くらいで囲んで討伐するような魔物なので、彼らが挑まなかったも不思議ではありません。それに先ほどのゴーレムはレベルが48しかなかったので、飛行船に使える高価なレベル60以下の魔石には該当しないのです。どうせ命をかけて挑むなら、レベル51以上が望ましいですよね……
今年もご愛読いただき、ありがとうございました。
明日は元旦ということで、特別に更新予定です。




