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流浪の剣士と隻脚の奴隷  作者: しろたけ
22/24

撤回

後ろで聞いてたネレイドが


「な、なんで?」と俺に言い寄ってくる。うーん、その表情もかわいい。


「まぁ、ネレイド、落ち着いて、ヤヒロの理由、ちゃんと聞こうよ。そこ座って、

 ネレイドも。」


俺はソファに促され、正面に団長のジェリドとネレイドが腰を掛けた。


「で、なんで?」

「はい、実はもう一度人生やり直したくなって。」


ネレイドが何言ってんだお前と言わんばかりに、ガンを飛ばしてくる。ジェリドは何一つ表情を崩さない。


「そっか、それって、前から考えてたこと?辞めて、どうする?」

「わかりません。俺の故郷に戻って、木こりになるのもいいかなって思ってます。」


ネレイドが今度は悲しい顔をしている。

ジェリドがピクっと眉を上にあげた後


「ははっ、ほんとに、なんも決めてないんだね。」

ジェリドは軽く笑った後、こう続けた。


「なら、冒険者になればいい。」


俺がなぜ?と答えると、


「この傭兵団に、5年以上所属して、国が依頼してくる、魔獣を討伐すると、Bランクからスタートできるんだ。もちろん、冒険者ギルドの、審査はあるけど、俺が推薦しとくよ。悪い話じゃ、ないだろ?だから、あと1年、頑張ってみない?」


またこの人に言い含められそうだ。

でも、なんの伝手もないまま生きるのは、正直厳しい。ここは、素直に親切心を貰っておいた方がよさそうだ。


「わかりました。ありがとうございます。それならば、後1年厄介になります。」


「うん、いいよ。その間に、心変わりするかも、しれないからね。」


ジェリドはニコッと笑うと、今日はもう帰っていいよ、と言われ帰路につく。

そしてジェリドが病み上がりの護衛ということで、ネレイドが自宅まで付いてきてくれたのだが、


「・・・・・・・・・」


「急にあんなこと言ってごめんなさい。」


「・・・・・・・・」


そりゃそうだろう、ホントに急だったのだから。それに、副隊長であるのならば、隊長に一言相談するべきだ。


「仕事が終わったら、俺の部屋に来てください。俺の快気祝いに、メシ行きましょう。」

「飲めるわけあるかっ!!!!」


そう言うと走って帰ってしまった。

耳の奥でキーンと金属音がする。鼓膜が破れそうだ。そりゃ怒って当然だよな。


その夜



「あのさぁ!なんであたしに相談しないの!?私そんな頼りなかった?ゴメン!!!」


(結局飲むんじゃないか・・・)


飲み屋街にあるちょっと広目の大衆居酒屋で、ネレイドと飲んでいた。そして彼女の酒を飲む量が、ヤケ酒そのものだ。飲まないわけあるか!と一蹴された。

だが、そうしてしまったのは自分のせいだが。


「あたし、そんな頼りない?魔族だから信じれない?ねぇ!なんで!?」


これは俺も腹をくくるしかない。それに、この人には元々言うつもりでもいた。

俺の行動への鬱憤を出し切り、落ち着いてきたころに、俺は切り出した。


俺が異世界人だというとことを。前の世界で自暴自棄になって、生きるのをあきらめ、それでも、この体で生を送ることに決めたことを。


包み隠さず、すべて彼女に話した。


彼女はしばらく黙り込んだ後、口を開いた。

「・・・ヤヒロさ、私とあった時の事覚えてる?」


「残念ながら」


「・・・当時副隊長だったの、アタシ。でも隊長が怪我で引退してね。アタシが隊長になった

 の。それで副隊長に抜擢されたのが、ヤヒロってわけ。見た目は女の子みたいなガキ、

 変にどこか行き急ぐような奴だっけど、実力はあってね。若くて見込みがあるから、    団長の指示で、お前が育てろだってさ。」


テーブルに頬杖を突き、ネレイドは続ける。


どうせ、こんな奴甘やかされて育てられて、ちょっと他より力があるから、チヤホヤされて、この傭兵団に入ったんだろうって。でも、違った。厳しい訓練には着いてくるわ、

座学では誰よりも真面目。ただの真面目君だったけど、ある日事件が起こったの。」


「事件?」


「そう、事件。鍛錬中にね、模擬戦をやる事になったんだけど、部下の一人が私に負けて

 ね。そしたら周りの連中が、魔族の女に負けるなんてみっともねえぞ、そもそも魔族に

 負けるなんて、傭兵団の恥だ、とかね。」


「うん」


「たまに言われるのよね、そういうの。いつものことだと思って流してると、ヤヒロが隊

 長の悪口言ったやつ全員表出ろ!!って、今まで見た事もない剣幕で怒ってね、言った

 奴らは5人いて、取っ組み合いの喧嘩になっちゃったのよ。ヤヒロ含めて、6人全員ボ

 ロッボロよ、フフ。今思い出してもあんな腫れあがった顔見たことないわ。」


「正義感の強いいい男じゃないか。」


「えぇ、本当に。聞こえない振りでもしとけばよかったのに。それでね、続きがあるの。

 皆に止められて、抑えてけられて。でもその時彼が言ったの。

 ネレイド隊長は訓練が終わった後も、おまえら一人一人に合った鍛錬の仕方を考えて、

 討伐任務の時は、全員生き残るために、一人眠らないで戦略立ててるんだぞ!

 それだけじゃない!魔族なのに先頭張って俺らのこと守ってるんだぞ!

 それがお前たちにできるのかー!

 って。あぁ、私の事こんなに見てくれてるのか、って思って初めて嬉し泣きしたわ。」


「良かったな、ちゃんと見ててくれて。」


「ええ。その後ヤヒロは謹慎処分で3日間営倉に入れられて出てきたけど、私に罵声を

 浴びせた連中が謝るまで許さない!って言って、絶対に折れなかったわ。意外と頑固 

 なのよね。彼が出てきたその日に、あたしに罵声を浴びせてきた連中が、頭を下げに来

 たわ。それ以来私の最高のパートナーよ・・・」


「わかってくれる人がいるだけで違うからな・・・・なんか、ごめん。先にネレイドに言うべきだった。」


「謝らないで、違う世界だけど、彼生きてるんでしょ?」


「ああ、多分心配ない。34歳のおっさんだけどな。」


「フフ、見てみたいけど。できないのよね?」


「うん、もう二度とない。」


「そっか・・・じゃ、これからよろしく。新人の副隊長さん」

「あぁ、よろしくな隊長」


二人はロックグラスを軽く合わせ、ティンと子気味のいい音を鳴らし後、酒を一気に煽った。

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