出会いの理由
『やぁ、初めまして。キミが僕の体の本来の持ち主、ヤヒロ=モリユギです。』
2年間過ごした異世界の自分が俺に挨拶してきた。
「あぁ、えっと、初めまして。なんだかわからずにキミの体で過ごした○○です。」
そして俺は元の世界の身体になっていた。
なんで、この世界に来たか。色々な謎があったが、俺は冷静になる。
『まず、あなたに謝らなければならない。突然この世界に、しかも僕の体で過ごさせてしまってごめんなさい。』
「なかなか、いい経験させてもらったよ。それに・・・・俺の本来のいた世界は、俺自身人生詰んでたしね。」
ははっと乾いた笑いが口から出てしまう。
『なぜ、世界が違うとこに行ってしまったか、説明しなければなりませんね。』
「あぁ、頼む。」
『僕の祖母は元々、未来視できる能力がありました。そして祖母によれば、僕は10歳から23歳まで、
自宅のベッドの上でほぼ寝たきりのまま、病死するのです。』
「・・・」
『それを祖母がなんとか生かしたいと考え、ある禁術を使ったのです。』
「禁術?」
『はい、延命するかわりに、その術の対象が、違う世界の人間と魂が入れ替わることで生き永らえる[魂の交換]という魔術。』
・・・?
「つまり、俺の体とキミの体の中身が入れ替わったのか・・・?」
『そうです。祖母と相談して、僕が決めました。勝手なことをして申し訳ありません。』
『死にたく、なかったです。』
彼は正直だ。本来の世界で自暴自棄になった俺とは違う。なんとかして生きようとした。
しかし、それなら本来の世界の俺はまだ生きてたということになる。
「えぇっと、あ、あっちの俺どうだった?」
『すごく大変でしたけど、楽しかったですよ。もちろん家族と離れ離れになったのは悲しかったですけどね・・・』
「あー、そうじゃなくて、周りの環境とかさ・・・それに俺の体おっさんだろ?嫌だろ普通。」
俺は両親のことを思い出し、思わず口ごもってしまう。
仕事も無断欠勤に近い状態で、3カ月程度暮らす程度の貯金しかない。
それに、その世界のことを教える奴なんて、周りにいなかっただろうに。
『・・・たしかに、全くわからないことだらけでしたが、あなたの飼ってたペットが教えてくれましたよ、ほら猫のナナちゃん。僕は動物と意思の疎通ができるんです。』
まぁ異世界に行った時点で、不思議なことが起こっても、感覚がマヒしてしまっていた。
ナナとはほぼ飼い猫に近い野良猫だ。母が死んでふさぎ込んでる時も、酒を飲んでる俺の膝の上で眠っていた。
おれの唯一の心の癒しだった。
『あの子が、あの世界のことを教えてくれました。・・・あなたが何故あんな状況になってしまったのか、も全部。』
そうか、俺もナナも生きてたか、よかった。
俺は多分、もう元の世界には帰れないだろう。異世界が、俺の生きる世界になる。
俺はヤヒロ君と長い時間喋った。あれはどうなんだ。あっちでは仕事してるのか。魔法やべえな、とか。
いろんなことを。
そして最後に
『僕があなたの前に現れた理由を教えなければなりません。』
ありがとうございます。




