スカウト
「ど~れ、今日もバイトいきますかね。」
俺は無事成人を迎え、あの一件以来、魔術師の便利な木こりのバイトと陰で呼ばれながら、暮らしていた。
ニートとか、穀潰しとか言われるよりはマシだ。
最近は木を使った家具や、小物の作り方も教えてもらっている。日本では出来なかったことをやれて、かなり楽しい。
「今夜一杯どうだ?明日休みだしよ!」
ガイや仲間たちが誘ってきた。花金である。日本じゃ酒は20歳からだったが、この世界では16歳でなんでもOKらしい。
「ぜひ行きます。」
花金だからね。どんな酒飲めるんだろう?とウキウキしながら仕事終わりの一杯を待ちわびた。
「「かんぱーい!」」
「いやーこれのために生きてる」「これがないと死ぬ!」
と思い思いに口走りながら酒を飲んでいる。微笑ましいことだ。実は日本いた頃も酒
を呑んで休日を過ごしていた記憶がほとんどだ。
彼女ができても、一緒に飲みに行ってた記憶しかなく、今更だけどちょっと申し訳ない。
ちなみに休肝日は日曜日と決めていた。
「ところでヤヒロ、魔法は婆さんから習ったとして、体術なんて誰から習ったんだ?」
「えっ?」
「いやなんだ、この間のアレだよ、アレ!なんだこう・・・動きにキレがあったって言うか」
「すいません、そのへん俺もよくわからなくて」
「とっさに体が動いたようなもんか?にしてもすごかったなぁ!」
確かにモンテウルフとの戦いの際、自分でも信じられないくらい頭が回ったし、体の反応も良かった。むしろ、あんなに早い反射は自分でも怖いくらいだ。
しかし、異世界に来たからと言って、変わるものでもない。それに、この体はまだ16歳であり、俺の知らないくらい、運動神経が良かったのかもしれない。
(そうだ、俺はこの体でまだ死ぬわけにはいかないんだ。)
俺は改めて認識させられた。
この体を「借りている」と。
そうしてモンテウルフとの戦いの話に盛り上がりながら、盛大に飲んだ。
そして宴も終わりになるころ、カウンターに座ってた人に声をかけられた。
「なぁ、キミが山の狼を、一人で4体も倒したって子かい?」
声の主を見ると、顔に傷があり、ヒゲがボツボツと生え、傷の多い胸当てをしている中年のおっさんだった。しかし、その出で立ちから、クッソ強そうなオーラを纏っていた。
「あぁ、すまんね、キミらの会話が聞こえたからさ、どうしても声かけたくなって。俺はアミューレ王国直轄ヴァーミリオン傭兵団団長、ジェリドだ。」
そのセリフで回りの連中がざわついた。
(おいマジかよ)(この街にいたのか)(おっさんじゃねえか)
コソコソと話声が聞こえるが、もろ聞こえだ。
当の本人は無視してるが。
俺もセイルに教えてもらったことがある、ここアミューレ王国の最強の傭兵団であり、アミューレ国の治安を守る遊撃隊、アミューレ王の切り札だと。
「あっどうも、ヤヒロ=モリユギと申します。それと、俺が撃退できたのは3匹です。」
「あぁそうかい、これは失礼。」
そのジェリドと言う男は舐めまわすように俺を見てきた。
「キミ本当に16歳?」
俺はドキッとした。
「いや、実は異世界からの年も含めると31歳です。」なんて言ったら信じるだろうか。
信じるわけ・・・いやこの人なら半分くらい信じそうだな。なんて
「年の割には落ち着いてるなぁ、うん、よし、キミうちの傭兵団、入らない?
金もいいよ、なにより、強くなれる、今を変えれる。でも、死人が出ることもある
けど。」
俺は今この異世界に何しに来たかわかるかもしれない。
なにかわかるかもしれない。
俺は彼のド直球な言葉に、まんまと乗せられてしまった。だが、踏みとどまった。
「・・・考えさせてください。」
「わかった、明日の夜、ここで」
意外と考えさせる時間は与えてくれなさそうだ。しかもこっちは酔ってる。そうそうに酔いを冷めさせて、家族と話あった方がよさそうだ。
ジェリドと名乗る人物が去った後、なんで即答でついていきますって言えねえんだ、あの傭兵団にスカウトされたんだぞ、この安月給!とか罵られつつも、そのまま俺は帰路についた。
ありがとうございます




