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「……どうやって、息子さんは生き長らえたの?」
ちなっちゃんの淹れたお茶を飲みながら、遠い目をして、
「孤児院だよ。もう、それしかないって思って」
と答えた。安らかな美香の声に優太は、これは美香のたちの悪い冗談で、演技ではないだろうかと思い始める始末。どう見ても、美香にしか見えなかった。
「不思議だね、このお茶。何でも答えたくなっちゃう」
「えぇ。軽い副作用として、ちょっとした自白剤のような効果もあるわ」
「なぁ、美香」
「違うよ。私の名前は……んーん。今は美香でいいかな。どうしたの?」
「お前、何の目的があってここにいるんだ?」
お茶の不思議さに小さく驚きを隠せていない美香に対し、落ち着きを取り戻そうと必死に自分に言い聞かせている優太が質問を投げかける。
「息子のため。あの子は、自分の作品を作り変えてるの。みんなが意識していたあの人形って、あの子自身が作ったのよ。親として、見届けてあげたいって気持ちが強くてね。猫がスズメや虫を捕まえて、自分の前に持ってきたりするでしょ? あんな感じで、あの子は今、身体を集めて私の前に持ってきてる最中なんだよ。すごいでしょ!」
すごい、か。その感想が人として難しい。
「どうして、名前で呼んであげないの?」
「名前で呼んだら、警察や霊保が動いてあの子に迷惑がかかっちゃうじゃない。それだけは避けたいじゃん」
「たしかに、そうね。だけど、悪いけどあなたは何年間か捕縛させてもらうわ。人間が霊保に厄介になるなんて、本当に珍しい。生物学的にヒトとは異なる進化を辿った種族……『妖怪』でも何でもないのにね」
「捕縛?」
聞き慣れない言葉が出てきた。
「えぇ。あんまり聞かない言葉だと思うけど、逮捕の霊保ヴァージョンね」
「あー……」
何となく、分かった気がする。どこぞの妖怪が捕縛されました、とか、普段ニュースで流れない。浄化か除霊か。だいたいその二つに一つだ。余程、情状酌量の余地があるのだろう。
17
美香は死んだ。……優太は、その事実を突き付けられるまで何も気付く事なく、親友の一人を失っていた。
もう、優太がこのアパートにいる意味はない。撤退だ。あとは晶に連絡を入れて、部屋を解約すると、この戦いは終わる。敗走という形にはなってしまうが。
「それじゃあ、二十三時五十九分、捕縛するわね」




