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「ただ、ボーッとするだけ。気にしないで。変なものは一切入れてないから」
消臭するために、様々な物を買ってきた。この臭いは、本当に一般人の女性にはキツすぎるし、トラウマになる。優太もそうだ。もう、トラウマになりつつある。人間の部位があれほどまでにグロテスクだなんて、思ってもいなかった。
美香が到着するのに、そう時間はかからなかった。それもそのはず。お隣さんだし。
ちなっちゃんから空いたペットボトルを突然渡され、困惑する。彼女は押されたインターホンに向かって歩き、解錠していた。
「なに? なぁに? どうしたの?」
「メーカーから新しいお茶のモニター品が届いたの。そしてちょっとお話がしたいな、って思って、呼んじゃったのよ。よかったら、飲んでね。ごめんね、私たち、先に飲んじゃった」
見た目は嘘をついていない。たしかに見た目はお茶っぽい、得体の知れない飲み物を渡している。
「いただきまーす」
何の疑いもなく、彼女は口をつけた。その瞬間、大きく目が見開かれたと思ったら、安らぎを得るような眼差しに変わっていく。
「……おいしい。何のお茶なの、これ」
「それは、自分の中の霊を呼び出すお茶。ごめんなさいね、騙しちゃって。奥様、教えてくださいますか? どうして、美香ちゃんの身体を借りたのか」
「……まいったなぁ。いつからバレてたの?」
このお茶、降霊術をしなくても霊を呼び出せるお茶だったのか。一般人が飲んでもボーッとするだけのお茶。つまりはトランス状態になるって事だったらしい。さすが魔女、とでも言えばいいのか。
いや待て。ちょっと待て。て事はだぞ、俺たちはいつの間にか、三山の奥さんの霊と会話してた事になるのか?
優太は今一度視線を日記に移す。どおりで、口数が少ないはずだ。病弱だったと日記には書かれてあった。おそらくは内向的な性格だったのだろう。引っ越してきたばかりの東京で、友達も少なかったために、誰にも頼れなかった。そして、自殺したのか……?
「何となくは気付いていたの。ただ、それまで証拠がなかった。今もそう。証拠なんてないの。ただの推測で言うけど、ヒントになったのは、あの福岡支部での結界システムだったわ。別の隊員は業者に修理を依頼している、という事だったけれど、その業者に問い合わせたところ、もう修理は完了したって言ってたから」
「どうして、私をあの時斬らなかったの?」
「最初は私も結界システムの誤作動かと思っていたの。その上、たとえ結界システムが壊れていたとしても、邪悪な寄生型の悪霊はシャットアウトされるようプログラムされてある。だから、最も敵意の少ない潜伏型の霊だと判断したのよ」
なるほど、分からん。
優太は頭を抱えた。
「ぶー。あなたの推理は、最後だけはずれー」
「「えっ」」




