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「…………思い出したわ。はっきりと。先生……このご恩、一生忘れません」
い、いやいやいやいや、変わりすぎだから。一体今、何が起こった。
モクモクと湯気が去った後、浦島太郎のように元に戻るかと思いきや、そんな事はなかった。容姿は変わらず、性格だけ戻ったらしい。その三枚のうちの一枚はもう使い物にならなくなったのか、文字がビッシリと刻まれていた。一般人には解読不能な文字だ。各国霊保専用文字とでも言えばいいのか。
「まったく。三島も墓穴掘ったものね。若返ったおかげで、私の力は倍以上に跳ね上がったわ」
「年齢によって違うのか?」
「えぇ、そうよ。スポーツ選手だってそうでしょ? 十代の半ばが、一番身体能力が高くなる時期なの。これ、一枚は優太くんが肌身離さず持ってなさい。きっと、何かの役に立つわ」
あの優しいちなっちゃんが、帰ってきた。何だか、安心したような、ちょっと寂しいような。もう、さっきみたいにはしゃげないのかな。
「なぁ、ちなっちゃん。本当に、三島をいじめてたのか? 俺、どうもそうは思えないんだけど」
「……残念ながら、真実よ。こればかりは、過去は変えられない。ごめんね、話がガラリと変わっちゃうけど、最近、三島の事を話したら美香ちゃんの様子が急に変わっちゃうのよ。お願い事があるんだけれど、いいかしら」
「お願い事?」
「うん。美香ちゃんを、ここに呼んでもいい?」
「俺は構わないぜ。どうなるかは知らないけどな」
電話で和気あいあいと喋っている。緊張感のないこの図。もう、いつ三島が襲ってきてもおかしくないというのに。よっぽど余裕があるのだろうか。
そうだ、そういえば、『思い出した』という事は、ちなっちゃんは究極大魔法が使えるという事! 一体どんな術なのか知らないけど、余裕を見せてくれているちなっちゃんに感謝する。実は、トイレにも行けないほどビビってた。
閑話休題。美香も美香で、普段のほほんとしていて霊とか信じてないだろうから、呼ぶくらいなら平気だろう。
ちなっちゃんは、ここに美香を呼んで何をするつもりなのだろうか。電話を切った後、彼女はスマホを置きながらつぶやく。
「私の予想が正しければ……」
さらに一枚『思念の書』をギュッと握りしめて液体状にし、親指先からグラスにポタポタ移している。まるで魔法だ。……いや、魔法使いだから魔法使えるのは当然なんだろうけど。
緑茶のように緑色になったその液体は、一体何なのだろう。
「これは?」
「美香ちゃんが飲めば分かる事よ」
美香が、飲めば……? どういう事だ?
「これ、俺が飲んだ場合どうなるんだ?」




