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映像は、そこで途切れていた。
「美香は? 美香は、今どこにいるんだよ」
「一応、連れてきたさ。今頃、二○四号室……自室で寝てるだろうね」
それなら少し安心した。
「晶は?」
「泣きながら出て行った。単車のキーを持って、な」
暴走行為してんのか、あいつ。……頼む。絶対助けてやるから、我慢してくれ。
「こっちの映像も見せろよ。何撮ってんだ?」
「あー、ダメダメ。何にも映らなかったぜ」
「でもまだ録画されてるぞ。ここ光ってる。お前、さっきまで寝てただろ? 映ってるかもしんねーぞ」
たしかに、ちなっちゃんの言うとおりだ。寝ている時、クローゼットの方で何かが映っている可能性がある。早速優太は一旦停止し、ビデオカメラから電波を飛ばしてテレビに規格を合わせた。
映像が流れ始める。
「それにしてもお前、ここのお札全部剥がしたのか。思い切った事するよな。普通、何があってもそんな事やらねーぞ」
……え。失敗したから大丈夫なんじゃ……
「普通に考えたら自殺行為だぞ。しかも、ゴミ袋に! ったく、大したタマだよお前。お前がその気なら、私の相棒として手を組んでやってもいいけど、どうする?」
「お断りします」
「あ、そ」
「前のちなっちゃんだったら、喜んでついていってたと思うんだけどな」
「……」
「一体何が起こったんだよ? 記憶喪失か?」
伏し目になった彼女。喋る気配はなかった。まるで自分のどこがいけないのか分かっていない様子だ。
記憶喪失になった上、身体が小さくなる装置があって、起爆ボタンがあるのならば優太は全力で連打しているだろう。もう一度人生をやり直したいと思っているだろう。小学生くらいにまで今の時代で遡りたいと願っているだろう。そんな装置があるわけがないのだが。
それからしばらく、お札を剥がすだけの動画になる。
「そういや、お札って二種類あるんだよな」
ようやく喋ったと思ったら、独り言らしい。放っておこう。




