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「よっ。お疲れ」
振り返った顔で、何となく分かった。
「ちなっ……ちゃん……?」
あんな臭いを嗅ぎ続けていたからだろうか、たばこの匂いがバニラアイスの香りに思えた。
それにしても、印象がガラリと変わっていた。この間までウェーブをそのまま垂らしていたが、今では髪型を変えたようでそのままの髪質でサイドテールにしている。羽のように優しい笑顔はどこへ行ったのか、凶悪な目付きが優太の瞳を貫いていた。一体何があったんだろう。
「邪魔するよ」
ニッと笑って、バルコニーからレジ袋を持って侵入してくる。
「ちなっちゃん、こんな所から入ってきて、何やってんだよ!」
「ナンだよ。文句でもあんのかよ。お前、腹減ってんだろうな、って思って買ってきたのに」
何か……何か、色々変だ。こんな人だったのか? ていうか、ぶっちゃけて言う。
どんだけ若返ってんだよ、この人! 別人じゃねぇか! 待て、学校は? どこの中学生なんだ?
司令官のようにドーピングではない。目の位置が、耳よりも若干下に下がってる。そもそも身長からして大きく縮んでいる。夢でも見てるのか?
色々とツッコミ所満載だが、会話のキャッチボールを成立しようと、たった今言われた事を思い出した。
「腹……?」
言われてみればたしかに、腹は減っている。減ってはいるものの、食欲はない。食欲があったとしても、この部屋で食べるのは、どうかと思うが。
「あんま外食ばっかりしてっと、身体壊すぞ。私が今からオイシー物作ってやっから一緒に食おうぜ。な?」
ネギなどがはみ出している袋を冷蔵庫の前にドカッと置き、スーパーで買ってきた食材をちりばめていく。
「どうして、俺がこの部屋にいる事、分かったんだ?」
「……この部屋の前で泣いてた晶に聞いた。お前が晶を助けたいっていう気持ち、分からなくもないけどさ、どうするつもりだったんだよ。霊も見えないド素人が敵う相手じゃないだろうに」
「そ、それは……」
「だいたい、邪魔なんだよ、この死に損ないが。いい加減燃やすぞコラ」
あらかた冷蔵庫の中に生ものを入れ込んだ直後、晶の親父さんの頭を蹴り飛ばすちなっちゃんの姿を見てしまった。白骨も見られる頭部は豆腐の如く、とてもお子様には見せられないような頭蓋の中の物体を撒き散らして、玄関を染めていく。
「……おい、いくら何でも、そりゃねーんじゃねぇのか」
「ザコが勝手に死にに来ただけだろ。こんな所の霊、特級の私一人で十分だったんだ」
「どんなに強くなったところで、他人の気持ちを分かってやれない、腕っ節だけの強さになんて、俺は頼りたくねぇよ。ここの霊は俺に任せてもらう。帰れ!」




