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「おら、出てこいよ」
ぶっちゃけ、本当に怖い。勢いだけで来てしまったが、この勢いだけでどこまで乗り切れるだろうか。武器といえば、晶の入浴中にミニショルダーバッグから拝借した、親父さんが書いた日記という情報だけだ。あとは、何に使うんだ、司令官から貰った、この真っ白な紙たちは。
『優太さん! 開けてください、優太さん!』
すぐ真後ろから扉をドンドコ叩き、ドアノブをガチャガチャ回される音が耳に響く。鍵も掛けたし、チェーンロックも同時にかけた。まず、人間の侵入は不可能なはず。
「ちゃんと服着たのかよ? その《ぺったんこ》見られても、俺知らねぇからな」
特に秘策など、何もない。晶を護りたい。それだけの気持ちで、一体どこまで通用するのだろうか。
『もう、私を置いていかないでよ……!』
涙を押し殺し、この二○一号室にもたれかかってくる。だけど、泣こうが喚こうが、あいつに見せれるわけがないんだよな、こんな部屋。
何としてでも生きて帰らなきゃいけない。親父さんも失い、新たに友達になったりっくんも失い、俺までいなくなったら、彼女は塞ぎこんでしまう可能性が高い。
雨天により灰色と化した部屋。電気を入れてみたが、おかしな事に、点く気配はない。上等だ。徹底的にやり合おうっていうのか。
「風邪ひくぞ。風呂、入りなおしてこいよ」
遠雷が轟く。それはどこか、誰かの叫びにも似ていた。
急に強く降りだしてきた。雷光で部屋の中が一瞬だけ照らされる。卵が腐ったような臭いが漂う中で、異様な光景を目の当たりにした。
まただ。また、あの時と同じ場所に、同じ形で生首が落ちている。軽い羽音が支配している。ここが元美香の部屋だとは到底思えない。
いつまでもここに突っ立っているわけにもいかないので、ビデオを回しながら一歩ずつ勇気を振り絞って入っていく。
この部屋には窓が二つあり、一つは、全部屋同じで奥の方に一つ。そしてもう一つは、外の階段方面。その二か所だ。階段方面のガラス窓には、お札は貼られていない。その他は全方位にビッシリと……。あの時から、この部屋の時間は止まったままだ。
……と思っていたが、そうでもない。
「――?」
こじ開けられたクローゼットの中に、また画用紙が落ちていた。
「……手?」
ごくり、と固唾を飲んでしまう。間違いない。描かれた手だ。手、というよりも上腕からなので、結局のところ腕と表現した方が正しいだろうか。以前は頭だった。それが、腕に変わっている。
また、雷光が差し込んできた。
違う。頭の絵は、こっちに落ちている。まさかとは思うが、このクローゼットの中に入れられた絵が、次の被害者の残る部位なのか? 今腕の絵がこのクローゼットの中に入っているってことは……。




