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さて、どうしてくれよう。覗くか、こっそり見るかの二択だ。濃くなったその湯気は妄想の契機と誰かが言っていた。
い、いや待て、ちょっと待て。違うんだ、美香。なんで今あいつの怒った顔が浮かび上がるんだ。
『優太さん』
「はっ、はいっ!?」
ユニットバスの前で右往左往していた優太に、中から彼女の声がかかって飛び退いてしまった。
『近くにいてくれて、ありがとうございます。本当は、お風呂、壊れてないんです』
普段の彼女にしたら、珍しく素直だ。ちなっちゃんと出会って、ちょっと変わってきたのだろうか。
「えっ? それじゃあ、何で」
そ、それはもしかして、この俺に……? 恋しちゃったのぉー! 初めてはやっぱり、好きなヒ・ト・と……! なぁーんて! どぅへへへ。
『今思えば、長い時間こんな風に二人きりになれる時を、ずっとずっと待っていたのかもしれません。いつもいつも、あなたの隣には美香がいた。面と向き合ってから言わなきゃいけない。だけどそうなると二人きりでも上手く言えない。ようやく私は、自分の気持ちに気付きました。あなたとなら、行ける。どこまでだって行ける。だから……』
……これだからA型ってやつは。
不器用な生き方をしている。冗談でも、さっきみたいな事、思い浮かべるんじゃなかった。本命はりっくんじゃなかったのかよ。勘違いしてたぜ。俺に暴力振るったり暴言吐いたりしてたのも、全部照れ隠しからの行動だったのか。
「……『だから』?」
『最期ですから、ちゃんと言わせてください』
「最期……?」
『はい。私の力では、あの霊を浄化する事は難しいです。なので、先ほど司令官から貰った白紙で、お札を作ります。……優太さん。――優太さん? 優太さん!』
……冗談じゃない。要するに、こいつは二○一号室の霊を自分の命と引き換えに倒すつもりなんだろう。たしかに、初見の相手に命を惜しまず特攻すると勝率は上がる。格闘ゲームで実証済みだ。本当はもっと複雑な戦いなんだろうけど。
「ワリ。晶、俺……ちょっと用事思い出した。絶対に、助けてやるからな」
そんな奴を、あの部屋に行かせられない。
優太はビデオカメラを片手に、部屋から出ていく。彼はあの時、誓った。晶が危ない目に遭ったら助けてやろう、と。
「バッチリ撮ってやるぜ。俺が、あの霊を。そして正体を見破ってやる」
この二○一号室の霊と決着をつける。一体どういう目的で色んな人を傷つけるのか、それを確かめてやる。幸い、優太に霊は見えない。ハードディスクタイプのビデオカメラ。これなら、一日中録画出来る。このカメラを定点で設置しよう。
扉を開けた。相変わらず、この部屋だけはエアコンがいらないらしい。節電で地球には優しそうだ。




