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「りっくんさん、危ない!」
走って、彼の背中を思い切り押す。トラックは、もう目と鼻の先だ。
何の取り柄もない。この先、生きていても、結局何物にもなれない奴より、りっくんのような明るい人に生きてもらいたい。
トラックはクラクションを鳴らすわけでも、ブレーキを踏むわけでもないようだ。苦し紛れに運転席を見ると……、誰も、乗っていなかった。無人だ。
体格のいいりっくんを付き飛ばせるはずもなく、逆に腕を取られてしまった。
「生きろ」
たった一言。それだけしか時間はなかった。火事場の馬鹿力とでもいうのだろうか。優太の身体を投げ飛ばした直後、色んな物が潰れていくような、聞きたくない音が優太の耳に入ってくる。
「何で……どうして!」
どうして、彼は命を救ってくれたのだろう。優太は、りっくんに対して命を救われるような事は何一つやっていないはずなのに。
「りっくんさん……!」
返事はない。一瞬で判断出来るほどの法定速度以上出ていたので、おそらくもう駄目だろう。
12
警察が来て、ちなっちゃんたちが来て。救急車までが到着し、そしてまた野次馬どもの目に晒される。
ブルーシートが張られてある。警察の話によると、遺体は、どこにも無かったらしい。血溜まりがあり、そして破裂したかのようにブルーシートの外にまで様々な場所に血潮が飛び散っている。スピードの凄まじさを物語っていた。
「優太くん、来る途中に、これを蹴っちゃったのだけれども……まさかとは思うけど、これって、りっくんの六文銭なのかしら」
優太は、答えられる状態ではなかった。ただコクリと頷く。
嗚咽が飽きもせず続く。
「君……ちょっと署まで同行出来るかな? 詳しく話が聞きたいんだ」
「あら。それは出来ないわ。これは、人為的な事件ではないんですもの。警察ではなく、日霊保の仕事です」
「ン? 何だ、貴様は。最近では、何でもかんでも、日霊保、日霊保と。どれだけの悪党を逃がしていると思っているんだ!」
「悪党……? この俺が? りっくんさんが戻ってくるのなら、俺は喜んで悪党にでも何にでもなりますよ……!!」
「たまたま警視が現場にいらっしゃる。お前ら日霊保にも分かりやすく言うと大隊長……特級クラスだ。お前たちの、ここにいる最高責任者は誰だ?」




