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言いながら、路地へ向かう曲がり角で、誰かと接触する直前でりっくんが足に急ブレーキをかけた。相手は小さな身体らしく、影が胸の辺りまでしかない。
「あっ、ワリい! 急いでるんだ! って、晶ちゃん……?」
「……はい。来てくれたのですね」
雲が隠れ、電灯が切れて何も見えないが、小さな背丈から見上げてくるような視線を感じた。
いつものファミレスへの直行道は、街灯がほぼ無い小道を通る。あっても二つ、三つ程だ。しかも、その三つとも全てが切れている。電灯変えろよ。
何はともあれ、晶とは合流出来た。それは事実。どこにも怪我はないようだ。今から三人で向かおう。と、ちょうどその時。着信が入る。
『二人とも、どこにいるの?』
美香からだった。
「あぁ、今晶と合流したぞ。今から向うから、もうちょっと待っててくれ。……ン?」
何かがおかしい。電話の向こうから、晶らしい喋り声が聞こえてくるのだ。
『晶なら、もうこっちにいるよ?』
「えっ……?」
安心したようなりっくんと、晶が喋っている。しかし、どこから聞いてもあの声は晶そのものだ。ただ、姿が見えない。一つ分かった事といえば、心拍数が急激に上がった事だけだ。
「す、すぐ向かう! ちょっと待っててくれ!」
どういう事なのだろう。晶が二人?
雲が移動する。月光だけが、最早頼りだった。電灯がない田舎ならこういう事は日常茶飯事なのだが、都会でこういう現象に巻き込まれるのは滅多にない。
影。今まで晶だと思っていたのは、影というよりも……真っ黒なモヤだった。優太たち二人は、どうやら幻覚でも見せられていたらしい。
突然、トラックの咆哮が轟いてくる。横断歩道を渡ろうとするりっくんと、モヤ。その黒々しいモヤは、どこか笑っているように思えた。
「りっくんさん!」
自分の責任だ。
最初に出会ったあの時、りっくんの背後に、モヤのようなものが見えた気がした。そんな気がしたのだが見間違いのはずだと自分に言い聞かせた。だけど、違う。見間違いなんかではなかったんだ。
《闇の波間が誘ってるのね》
《このうちの誰かが……死ぬ。近いうちに》
どんな些細な事でも報告していたのなら、こういう事にはならなかったかもしれない。
死なせない。何があっても、守ってみせる。
みんなが不安な状態の時に、りっくんに出会った。彼は優太たちを笑わせ、安心させてくれた。
優太は、気が付けば横断歩道に突貫していた。暴走したトラックよりも狂った行動に出るなんて夢にも思っていなかっただろう。




