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「私ですわ」
相変わらずというべきか。警察と日霊保は仲が悪い。
嫌そうな顔つきになりながらも、ちなっちゃんは霊保手帳を取り出した。
「どう? これで満足かしら」
見下した警官たちの顔から、みるみる血の気が引いていく。
「ば、バカな……! その年齢で、特級クラスだと……?」
「ここは穏便に済ませましょう。警視は、どちらに?」
「私だ」
メガネをクイッと上げ、壮年男性はちなっちゃんに詰め寄ってくる。
「部下が無礼な真似をしたようだ。詫びよう」
「あら。意外と物分かりがいいのね」
「相坂さん。実は、私は昔からあなたの大ファンでね。何でも、失われた魔法を次々と復活させているようではないか」
「たしかに魔法だけれど、本来これは、誰にでも出来る事よ。時代の波に流されて、今は忘れている事。だけど、それがなかなか出来ないから、人は『魔法』と言うのかもしれないわね」
「……なるほど。噂の『究極大魔法』も、本来誰もが使える物だと……?」
「えぇ、そうよ」
「……分かった。あの青年の身柄を、信頼しているあなたに託そう。どうやら、彼は嘘をついていないようなので丁重に扱ってくれ」
「もちろん。私の友達ですもの」
――あれから、一体どれだけの時間が過ぎ去っていったのだろう。隣の、美香の部屋で晶とちなっちゃんの声が聞こえてくる。どうやらショックで気を失っていたらしい。
このアパートに引っ越してきてからというもの、環境がガラリと変わってしまった。短期間で人が死にすぎている。本当なら……りっくんが生きているのなら、彼の声も混じっていたに違いない。深刻な話ではなく、笑い声が絶えなかっただろう。
本当に、いろんな事が起こった。晶の親父さんが亡くなり、りっくんも亡くなり。そして親父さんの首に関しては、二○一号室からペンで描かれてあるような画用紙が見つかった。ただ、首から下がどこを探しても見当たらなかったが。
もしかしたら、りっくんの遺体もあの二○一号室にあったりして……って、それはさすがにないだろう。
ただ気になる事の一つに、人形の姿がどこにもないのだ。綿が飛び出した、あの人形は一体今どこに……?
そのまま寝ていても何も始まらないので、優太は身を起こし美香の部屋の呼び鈴を鳴らす。
「あっ、起きたみたい」
中から美香の声が聞こえた。元気のなさそうな声で解錠してくれる。
「やっぱり……りっくんさんはいないのか」
中を見てみると、女性しかいない。りっくんの姿は、どこにもない。




