第三十八話
日が差し込む〈アルビオン・シリコニア〉の〈屋上〉。
〈原初の樹シリコア〉の〈麓〉。
ノボルとタチアナは乾燥させた食品類が納められた箱を運んでいる。
ノボル「キタカゼ〜♫♪ウルト〜ラマンタロ〜♫♪」
タチアナ「何言ってんだテメェ」
・・・旅立ちの準備が進められていた。
ノボルとタチアナは荷物の選別、マリとミユズは必要情報の書き写し、リュウは食料の確保。
本格的な出発場所は〈トンボロジャンヨ〉の向こう、〈サム城塞〉となる為、〈トンボロジャンヨ〉を渡っての必要な荷運びをリケイとシャルが担った。
私は狩りや駆除だ。
一ヶ月程前、ヨシミとトウジが旅の道程を確認する為に飛び立った。
そして戻って来た。〈原初の樹・シリコア〉の麓に降り立つ。
トウジ「やっぱり〈カンナ大湿原〉の地上に陸生生物は皆無でしたね。樹上には居たけど。
湿原に入る事はまず無いそうです。
あとヨシミさんへの信仰具合が、多分ヤバい。」
樹上?信仰?
ヨシミ「〈湖上の台地〉と〈トライ・カミラ〉が点在していたわ。
〈湖上の台地〉と〈樹洞〉に〈ハイエルフ〉が住んでる。
結構な割合で御老体も居たわ。
かなり古い集落かもしれない。」
〈ハイエルフ〉の老人か。そういえば見た事無いな。
ミユズ「あ・・・あぁ、それ多分〈エルフ〉ですね。〈ハイエルフ〉の時間による変化とは違いますので。」
?
ヨシミ「・・・何か違うの?」
ミユズ「はい。
〈エルフ〉は、〈猿型〉の幼体の様な姿で産まれ、やがて〈ハイエルフ〉に似た姿に成長し、〈チャケアンドン〉の様な姿に変化してやがて寿命を迎えます。
時間経過によって死亡する訳です。
〈ニゲン〉や〈オークリン〉もほぼ同じ変化をしますが、青年期の時間がかなり違います。
〈オークリン〉や〈ニゲン〉の青年期は三十年程。
対して〈エルフ〉の青年期は二百年程です。
老化すると体力が落ち、動けなくなる様ですね。」
・・・どういう事だ?〈ハイエルフ〉は違うのか・・・?
〈チャケアンドン〉はゴリラとオランウータンを足した様な外見の生物。
〈チャケ〉は分からないが、〈アンドン〉は〈地面を叩く者〉のはずだ。
色が違うだけのように見える別種の、〈シャブアンドン〉というものもいる。
ミユズ「〈ハイエルフ〉、〈アルブ〉、〈オーガ〉の場合は、長く生きると、〈オルガンバニィ〉の様な姿に変化し、判断、知覚能力が低下します。
その後自発的に、森の中へと生活の場を移します。
〈ヘプバァン〉もほぼ同じです。
一般的にこれを〈森へ帰る〉と表現しますね。
変化するまでの時間は大きな個体差があり、数十年とも千年とも言われます。
この変化は〈病〉と認識されており、〈リワァド〉に訳すと〈先祖還り病〉、と呼ばれますね。
因みに、〈センゾガエリビョウ〉でも大体通じます。」
〈オルガンバニィ〉。
〈ハイエルフ〉等〈長指動物科〉の中で、最も古いとされている危険生物。
〈ハイエルフ〉達は自分達の祖先動物だと思っている様だ。
尾が短く、ほぼ直立二足歩行をするカンガルーの様なシルエットであり、全身が鱗で覆われ、一部体毛がある。
耳が横に長く伸び、眉の位置から〈外鱗角〉と呼ばれる角の様なものが伸びる。
この見た目と危険性から、〈ドラグリィン〉、〈竜人〉と呼ばれる者達と混同されていた事もあったらしい。
〈ドラグリィン〉については外見以外の情報がほとんど無い。
[竜が産み落としたリィン]、[センシンのドラグリィンは数多の敵を屠った]等といった、〈マルキド語〉での記述が残っている。
〈オルガンバニィ〉の名で呼ばれてきた歴史は相当に古く、語源はかなり曖昧である。
〈バニィ〉については仮説がある。
〈バァン〉は〈トカゲ〉、〈ニィ〉は〈魚〉、これを語源とし、転じて〈危険な生物〉であるという説だ。
頭部の横から耳が長く伸びる動物は賢い場合が多い為、この形状を持つ動物全般を指す場合が多い。
・・・〈ハイエルフ〉等〈長指動物科〉の老化プロセスは、確率で〈先祖還り病〉を患い、〈オルガンバニィ〉の様な姿に変化する事である、という事か?
痴呆症になるみたいな事も言ってたな。
ミユズ「〈ニゲン〉、〈エルフ〉、〈オークリン〉、〈ディブリン〉、そして巨人〈アマゾネス〉。
彼等の時間による変化はとても似ています。
そして彼等は混血します。
間違い無く近縁種ですね。」
トウジ「〈アマゾネス〉?聞いた事無いっすね。」
ミユズ「書物には〈キィリィン〉の名で出てくる事が多いはずです。〈キィ〉は大きい、〈リィン〉は知的生命体です。
〈エィリィン〉は大柄な者、〈キィリィン〉は〈巨人〉、として使い分けられる事が多いですね。
女性のみが大柄な種です。男性の見た目は〈ニゲン〉と変わりません。
他の〈ニゲン〉種との混血は可能ですが、〈アマゾネス〉、もしくは、〈アマゾネス〉が混ざった男性と他種の女性との交わりは禁忌とされています。
胎児が大きい為です。母体が耐えられない様ですね。」
トウジ「あ~・・・なる程。」
ミユズ「・・・過去〈ニゲン〉の権力者は〈アマゾネス〉の男性を捕らえ、相当数を〈南の大陸〉に追放しています。
恐らく意図的にです。
〈オークリン〉や〈エルフ〉は他種との交わりをしませんので、被害は〈ニゲン〉に対してのものが多かった様ですが。」
・・・〈ニゲン〉ってやっぱ、結構ヤバいな。
ヨシミ「・・・巨人〈アマゾネス〉ね。どのくらい大きいのかしら?」
ミユズ「私の倍未満、といった所でしょうか?私も実際に見た回数は少ないので。
上半身と頭部がやや小さく、足は太く長く、腕は足に比べると細いです。
北の大陸の〈サド〉には、彼女達で構成される軍隊があるそうです。」
ミユズの身長は普通の成人女性位に見える。
〈アマゾネス〉の女性は三メートル前後か?
この世界?惑星?
知的生命体の種類がかなり多い。
そういえば以前ノボルが仮説を呟いていた。
「多分相当な期間、大量絶滅が起こってねぇな。
クソ古い化石の生物と現生生物が似過ぎてる。
そんで生態系が多彩過ぎる。」
なる程、大量絶滅が少なければ確かに、その存在可能性は上がるのか?
更に一月程をかけて準備がなされた。
旅立ちの前日、〈原初の樹シリコア〉の麓にて。
宴が催された。
ミユズは〈アルケマリア〉のエィシィやミィサ、〈ヘプバァン〉のニィア達と共に別れを惜しんでいる。
その輪の中には〈ハイエルフ〉のオーブ・アイ・マルキド・ノウスシィロウド、そしてその夫であるサグザ・サクサ・イドゥーク・ノウスシィロウドの姿もあった。
オーブ『エレンは今もラァン様と共に〈セイキガーラ〉を守っていると聞いています。
どうぞよろしくお伝え下さいませ。』
ミユズ『はい必ず。
〈ノウスシィロウド〉には戻られないのですか?大戦が終わり久しいですが。』
サグザ『私など保険に過ぎませんよ。
〈賢帝レオ〉の直系〈ラスティ〉様が無事お産まれになり、治めておいでなのでしょう?
私に出る幕などありません。』
どうやらこの二人もミユズと旧知だった様である。
話の内容も気にはなるのだが、ミユズやニィアの周囲に集まっている〈ヘプバァン〉の男性と幼体に目がいってしまう。
カワイイのだ。
モンスターをハントするゲームに出てくる二足歩行の猫の様な出で立ちである。
とてもカワイイのだ。
顔立ちには個性がある。
大人男性の体躯はどの者もさほど変わらず、身長百五十センチ程度。
猫っぽい顔立ちの者も居れば、犬っぽい者、熊っぽい者も居る。
総じて吻部の短い食肉目の様な顔立ちだ。
幼体は、四肢の肘先と膝下が硬い鱗で覆われている。
稀に、ヒトの様な顔立ちの者も居るが、彼等は〈女性的な男性〉と表現される。
頭髪や体毛は、金や白、薄い灰色にやや構造色を示す。
目の色は青や緑、赤が多いが様々だ。
そんな〈ヘプバァン〉達と混群するかの様に彼等を囲む四足動物達が居る。
猫や虎、狼や狐、といったシルエットの動物達だ。
共通点としては、幼体成体共に四肢の肘先と膝下が硬い鱗で覆われている。
そして体毛は金や白、薄い灰色にやや構造色を示す。
目の色は〈竜〉や〈聖女〉の様な金色に見える。
本来、野生動物はその匂いで酩酊してしまう為〈原初の樹〉にはほとんど近寄らない。
〈トライ・バーミリオン〉の森林を超える事もしない。
だが〈ヘプバァン〉の男性達とよく似た顔立ちの、食肉目の様な見た目のその四足動物達は酩酊せず、〈原初の樹〉の下で共に暮らす事が出来る。
野生下で見かける個体はかなり獰猛な猛獣であるのだが。
彼等は〈リグル〉と呼ばれている。
〈グゥ〉は〈混ざる〉、〈リル〉は〈神獣〉、意味合いは〈神獣混ざり〉であろうか。
〈マルキド語〉を知る者にしてみればかなり大仰な名前である。
というのも彼等の中には、四肢と翼を併せ持つ者が稀に居る。
〈ドラゴン〉の様に翼と四肢を合わせて六肢を持つ者が居るのだ。
この〈リグル〉という単語は相当古いらしく、〈マルキド語〉成立以前の言葉である。
同じく〈フェンリル〉や〈リル〉という言葉もそうであり、〈リル〉、〈神獣〉とは本来、〈特別な生物〉を意味するらしい。
現在の〈リル〉は、〈原初の樹から産まれ落ちた者〉を指す。
〈リグル〉達の内の一頭、細身の虎の様なシルエットに、白と灰色の縞模様を持ち、白い翼を持つ個体。
彼女の名はシンガ。
翼の印象は、ノウラやその眷属の〈レイムガウル〉や〈アルバ〉達の翼によく似ている。
体長、翼長はヨシミよりも少し短いだろうか。
シンガを始めとして相当数の〈リグル〉達は、〈シリコニア〉の住民達と共に〈学校〉にて授業を受けている、というよりも、授業にかなりの数が紛れ込む。
教師と生徒を遠巻きに囲み、授業を聞いている、が正しいか。
シンガは文字を理解し、文章を書く事も出来る。
〈リグル〉達の中には、言葉を理解し、簡単な発話を行う者はそこそこの数が居るが、文字を操るのはシンガの他には数頭のみである。
私達が旅立ちを決定したのは三ヶ月程前。
シンガより筆談にて提案がなされていた。
[我が主オパルより許可を頂いている。
私の様に翼を持った〈リグル〉は〈ドラゴン〉の様に眷属を従える事が出来る。
六の〈アルバ〉が私と共に在る。
旅に同行させて頂きたい。
私には果たさねばならない目的がある。]
ここまで堅い意味合いのつもりではなかったらしいが、日本語に訳して書いた所、こうなってしまった様だ。
〈美獣竜フェンリース〉のオパル。
この地〈ククリ島〉を含む〈サウザヨウ半島〉全土を縄張りとする〈ドラゴン〉。
〈アルビオンの悲劇〉の後、〈ハウルの一団〉より言葉を学び、友誼を結んだとされる竜だ。
シンガと同じく文字を操り、日本語も介するらしい。
因みに私達はオパルと謁見出来ていない。
〈アルビオンの悲劇〉の時も今回の〈ゴブリン大侵攻〉の際も、〈迷宮クローン〉の駆除に力を貸してくれていたそうだ。
マリは何度か住処に向かおうとした事があるらしいが、毎度シンガに止められていたらしい。
シンガはオパルの眷属、〈グラシュテ〉である。
竜の眷属は大きく三つに分けられる。
これは種別ではない。
オパルやノウラの様な〈美獣竜フェンリース〉の場合は、狐や狼に翼が生えた様な生物である〈アルバ〉、そして、〈リグル〉の中でも〈フェンリース〉や〈アルバ〉に似た翼を持つ者と持たない者の三つだ。
〈グラシュテ〉とは〈レイムガウル〉の中で、鳥の様な白い翼、特にアホウドリの様な翼を持つ者を指すらしい。
どうやら〈レイムガウル〉という言葉は本来、〈竜〉以外の、翼を持った四足獣全般を指す場合が多く、総称に近い言葉の様だ。
カラスの様に黒い鳥の翼を持つ〈リグル〉を〈グリム〉、黒竜の様にコウモリの様な黒い翼膜の翼を持つ場合は〈グリモワール〉、白天竜の様な白い翼膜の翼を持つ場合を〈マグリア〉と呼んでいる様だ。
これらはあくまで呼び名であり、種名ではない。
だが戦力評価としてならば、この分類は参考になる。
シンガはオパルの眷属の中でも調査員の色が強い様だ。
これまでオパルの為、〈サウザヨウ半島〉を飛び回り、情報を集めてきた。
オパル専属の、長命で超強い諜報員、と言ったところか。
この様に名のあるシンガによる〈神獣〉達の旅への同行希望は、〈ククリ島〉全土に一気に広まった。
その後、〈マジ様ファンクラブ〉の発狂やら神官達によるマリへの過保護爆発やらネムの暴露やら・・・そしてミユズの暗躍の発覚やら・・・本当に色々あり、・・・まぁこの辺りはそのうち紹介する事になるだろう。
結果、西進する者達が決定した。
リケイ、ノボル、リュウ、ミユズ、シャル。
ヨシミと六頭の〈コクヨク〉。
タチアナと私とニャフンと九十六頭の〈ファントム〉。
トウジ。
マリと六頭の〈フェンネル〉。
ヨシミさんとトウジと私にはまだ眷属は居ない。
恐らく幼竜だからだろう。
だがニャフンにはいつのまにか〈ファントム〉が十二頭従っている様だ。
タチアナの群れに混ざり込んでいる。
出かける際危険だからと置いてきたニャフンを、タチアナの元へと運んで来るという事がよくある。
私とニャフンは成長するまで〈ククリ島〉に居た方が良い、という話も出ていたらしいが、私が記憶と自我を取り戻した事で二人とも同行する事となった。
ネム・ルシファ。
彼女の見た目は〈肌色ディブリン〉の少女ではあるのだが、実はすでに三百年以上を生きているとの事。
〈ディブリン〉の本来の寿命はほぼ四十年未満、〈肌色ディブリン〉は六十年前後である。
胸骨辺りに〈ルシファ石〉なる白い石が〈寄生〉している。
これは〈マセキ〉の一種とされている。
産まれて間もなく保護されていた〈アルケマリア〉の集落にて、虫の様な何かに襲われた事があるらしく、その際に寄生されたのかもしれない、というものが本人の談だ。
これに寄生されて以来歳を取らず、稀に知らない記憶が頭に流れ込んで来るようになったらしい。
〈シンソウキリウ〉を所持しており、本人の声で起動させる事が出来る。
彼女が持つ〈シンソウキリウ〉はマリの物とはずいぶん形が違い、刃付きの太めの杖といったイメージだろうか。
これは、十一年前、〈原初の樹シリコア〉の〈旧迷宮〉の〈卵宮〉から〈ケッカ〉の〈迷宮クローン〉と共に、ネムの目の前に排出されてきた物なのだという。
道理で言葉に時間を感じる訳だ。
ウェン・ディ・モセス。
〈ハイエルフ〉の女性。
十年程前に〈旧迷宮〉内部で水害に遭い、弟のポルカと共に〈死宮〉に落下し、〈迷宮節殻貝〉に取り込まれた。
気がつくと、〈卵宮〉より排出されており、胸元に〈ルシファ石〉、両腕に黒竜の腕甲の様な物が生えていた。
両手の腕甲、アレ防具じゃなかったんだな。
ポルカ・ルゥ・モセス。
〈ハイエルフ〉の男性。ウェン・ディの弟。
姉のウェン・ディと同じく、〈死宮〉に呑まれ、〈卵宮〉より排出された後気がつくと、胸元に〈ルシファ石〉、手には赤い刃物が握られていた。
形状は、出番包丁、もしくは先端が尖ったナタ、であろうか。
因みにこの包丁、ポルカが使うとスゲー切れる。
ニィア。
〈ヘプバァン〉の女性。
これまでの歴代グランマリア全員の乳母を務めた。
彼女だけがなぜか聖女の様に、歴代グランマリアの、過去〈ククリ島〉を訪れた〈神獣〉達の、所有者不明の、触れた事がある〈シンソウキリウ〉を全てを起動させているらしい。
彼女が現在持っている〈シンソウキリウ〉は、三振り杖型の〈シンソウキリウ〉が一つとなったものらしい。
ハルバードの様な形を取っている。
という事は産まれて三百年以上。
アホっぽいのに賢いなとは思ってたが、年の功だったか。
そしてシンガと六頭の〈アルバ〉。
サグザ『〈原初の島〉からここまでは生息生物の戦力が高い為でしょうか、あまり目立っていない様ですが、〈カンナ大湿原〉の水生生物や、その先の陸生生物には、〈マセキ〉に寄生された〈マモノ〉と呼ばれる者達が目立ち始めます。
大変危険です。
〈マセキ〉に寄生された者達は、同種の〈マセキ〉を持つ者同士で群れを成します。
異常を感じる混群には気を付けられて下さい。』
〈マモノ〉とは〈マセキ寄生体〉の事だ。発音が〈マモノ〉となる。
ノボル『あぁ、やっぱ危ないんか。ほとんど本でしか知らないんすよね。
〈ゴリトカゲ〉と、この前の〈ワイバァン〉がそうだったんだっけ。
アイツの赤い〈マセキ〉、ドコに行ったんだろ。』
ヨシミ『そうね。
あの子は背中に〈赤いマセキ〉を持った〈モンスタ〉、〈ワイバァン〉は腹に青い〈マセキ〉を持った〈エネミ〉だったわ。』
サグザ『この〈ククリ島〉ではかなり念入りに駆除が行われてきましたのでほとんど見る事はありませんね。
〈エイグレア・イーキ〉から〈サウザヨウ〉ではどうでしたか?』
リュウ『話に聞いてはいたんで、結構覚悟決めてたんですけど。
一匹たりとも遭遇しませんでしたね。
〈サラマンドラ〉で走ってきたせいかも。』
サグザ『そうでしたか。
〈ニーザ山〉辺りでは、以前かなりの数を確認できました。
もし減っているとすれば、狩られたか、すでに集まってしまったのか、という事か。』
ノボル『・・・そういえば、集まるとどうなるんです?』
サグザ『〈ハウルの一団〉が倒したとされる〈原初の蛇リヴァイスオーマ〉。
あれは〈赤いマセキ〉、〈オウマ石〉の集合体だと伝えられています。』
ノボル『あ~・・・そう言う感じのバケモンなんか・・・。
そういや〈ナキ〉もそんな話だったな。〈青いマセキ〉取り込んで強くなるとかなんとか。』
サグザ『はい、その様に伝えられています。
赤い石、〈オウマ石〉の集合体である、〈原初の蛇リヴァイスオーマ〉。
黒い石、〈ルブル石〉の集合体である、〈原初の蜘蛛ワルキューレオーズ〉。
紫、〈ハプラ石〉の集合体、〈原初の蛙エシアルポッカ〉。
黄、〈ファルブ石〉の集合体、〈原初の巨人メリクリィン〉。
青、〈シシル石〉の集合体、〈原初の貝アルナキ〉。
この数百年で多くの〈神獣〉様方がこの地にお産まれになられましたが、それ以前、大昔に何度も現れては、破壊を繰り返した怪物だとされています。』
この後もサグザとオーブは、彼等が知る情報を惜しみなく教えてくれた。
纏めなければならない重要な情報ばかりだった。
夜は更けていった。
マルキド歴331年。
一年程滞在したククリ島を旅立つ日が訪れた。
見送りに集まった者達は心配そうな面持ちである。
旅に対してではない。
〈ククリ島〉と大陸を繋ぐ道、危険極まりない〈トンボロジャンヨ〉を渡らねばならないからだ。
トンボロ現象により現れるこの道を渡れる時間は一時間も無い。
その間に、海面より突き出た滑りやすい岩礁を約五キロ、渡りきらねばならない。
渡る事が可能となる時間までに、ヨシミ、トウジ、私、シンガとその眷属達、タチアナとマリの眷属達によって、残っていた荷物とニャフン、マリ、タチアナ、ネムの輸送が完了した。
残ったのは走って渡る者達だけだ。
渡りが始まった。
ミユズを背負ったリケイを先頭に、リュウ、ノボルが続く。
その後ろからシャル、ウェン・ディ、ポルカ、ニィアが続く。
種として持久力に劣る〈ヘプバァン〉のニィアは、『もし落ちてケガしてもきっと治るんだ、ニャ〜』等と言っていたが、最悪の場合、ヨシミ、トウジ、シンガが無理矢理運ぶ予定だ。
程なく全員が無事渡りきった。
地上からでは竜の眼をもってしても、対岸の人々はもう米粒程にすら見えない。
ノボル「全員無事だぞ〜!行ってくる!!」
リュウ「聞こえねぇよな、日本語だし。
行ってきまぁーす!!!」
まぁなんか言いたくはなるよな。
いつかまた、無事に戻ろう。




