第二十八話
この〈トライ・カミラ〉はかなり以前から確認されていたらしい。
ただ十数年前から状態が変化しており、調査対象となっていたそうだ。
ヨハン「以前はここまで葉は茂っておりませんでした。今は多数実もつけていますね。
この状態であるという事は、地下に水があるという事です。
〈鳥〉もいますねぇ。期待出来そうです。」
なるほどな。樹木の状態から地下の状態を読める訳か。
〈レィムゥ〉は空を舞う生物の総称?翼を持つ者?。〈レィ〉は〈空〉とか〈空中〉とか?〈ムゥ〉は〈這う〉、だったか?
確か〈ディ〉も〈晴れ渡る空〉地域によっては〈太陽〉だったか?あと温和って意味もあったかな?
タチアナのミドルネームには〈レィディ〉とあった。〈タチアナ・ラズ・レィディ・カスガ〉。
・・・皆無事だろうか。
・・・通訳居る分言葉の理解がおろそかになってんな。
まぁ、喋れねえ聞き取れねぇだと詰むけど。助かってますありがとう。
ヨハン「ではファティマさん、お願い出来ますか?」
ファティマ「はい。まずは水を確認します。」
ファティマは〈トライ・カミラ〉に登って行く。
ヨハン「飛行生物ばかり生息しており、ここは主に繁殖地ですね。食事には遠く見える山の方まで行っている様です。
この樹はこの砂漠で孤立して五十年程が経っているはずです。」
この〈トライ・カミラ〉、上に行くほど多く、下に行くほど少なく、隙間が通っている。
いや、隙間が通るというよりは樹洞が洞窟の様に走っており、多数の生物が住み着いている。
そしてファティマはこの島の外で〈トライ・カミラ〉の樹洞、〈カミラドーラ〉の探索経験があるそうだ。
そしてこの樹洞がもし人が通れる程の大きさで、地下に進む事が出来た場合、上手くすれば水面の位置が分かる為、井戸をどのくらい掘れば良いかが分かると。
ファティマ「ありました!でもおかしいです!」
ファティマが降りてきた。そして指を差す。
「水面は、この辺りです。魚がいたので水たまりではないです。」
ヨハン「地面より上、ですか?」
ファティマが指を差したのは地上、大人の足長前後程の高さ。
二、三十センチ程か?
これが起こるという事は、この水面と同じ高さの水源と直接繋がっており、水の逃げ場所も無い?地下河川か?
ファティマ「ちがうことがもうひとつ。水の中が光っています。」
洞窟の中で発光?
[どんな色だ?]
ファティマ「夜光る〈プディラ〉のよう。」
〈プディラ〉はキノコ。ツキヨタケの様な青白い光。
[私も確認したい。少し覚えがある。]
ヨハン「・・・〈迷宮節殻貝〉ですか?」
ロディア「〈迷宮節殻貝〉?!」
知っているのか。ロディアがすごく驚いているな。どうしたんだ?
[そうだ。〈原初の島〉で実際に見た事がある。]
ロディア「〈宮〉、部屋はご存知ですか?」
あぁ、あれか。
[〈死宮〉〈心宮〉〈卵宮〉そして〈迷宮クローン〉だろう?全て見た事がある。確認してくる。]
ロディア「気を付けて下さい。危険かもしれません。」
危険?まぁ強い生物の〈迷宮クローン〉だったら危険といえば危険か?
[わかった、行ってくる。]
ファティマの案内を受けて樹を登り〈カミラドーラ〉内部を下り、水場の入り口へと辿り着く。
確かに光源がある。
私の目には瞬膜がある為そのまま水中も確認出来る。百メートル程あるロープを身体に結び、ロープの端をファティマに持たせる。
潜って確認する。
間違い無く〈迷宮節殻貝〉だ。
水の流れは強くない。真水だ。海抜的にそりゃそうか。
確認の為もう少し泳ぐ。五十メートル程泳いだ先に白い光。
水面から顔を出すとそこは〈心宮〉だった。壁に穴が開いており外に繋がっている。
ロープを外して外へ。直径五メートル程の穴が地上に口を空けていた。
巨大樹とロディア達が見える。急ぎファティマと合流し、再度ロディア達と地上から〈心宮〉に入り確認する。
ロディア「確かに〈迷宮節殻貝〉ですね。これは〈心宮〉ですか。」
ヨハン「この島にも〈原初の樹〉があるという事でしょうか?」
ロディア「いえ、無いわ。あればわかる。」
なんか深刻そうだな。そんなにマズいのか?
ロディアの巨体では探索は不可能、ヨハンは体力が心許無いという事で、洞窟内部の探索は私とファティマが、ロディアとヨハンは野営の準備をする事となった。
数時間探索した範囲では、山側に向かって一本道であり、もう一つの〈心宮〉を発見、〈死宮〉も一つ発見した。
水没地点が多く、足元にはずっと小川程度に真水が流れていた。
海側も調べたが全て水没しているかもしれない。息が続かなかった。
〈迷宮クローン〉は一体たりとも発見出来なかった。
ヨハン「〈心宮〉と〈死宮〉のみですか。
拠点を造るには都合が良すぎるくらいに良いですね。
決して楽観視は出来ませんので隅々(すみずみ)まで調査しましょう。」
ロディア「私が一度戻りましょうか。人手が必要でしょう?」
ヨハン「あ、お願いできます?
〈タタンシマイ〉から十人位引っ張って食料も運べるだけ運んでもらって。」
〈タタンシマイ〉?〈姉妹〉か?十人?まぁ長命ならあり得るのか?
ロディア「使い方荒いわねぇ。
リケイ様、私は離れます。無理はされません様お願い致しますね。」
私は頷く。ロディアは夕暮れの中出発した。
私とファティマは座らされ、ヨハンが調理をしている。手慣れている。ヨハン考案の具材入り揚げパン〈アナクラシュ〉はとても美味しい。〈ヒュドル〉でもよく食べられている。
ヨハン「〈タタンシマイ〉は〈リワァド〉で〈漁師団体〉。
数少ない泳げる者達なのでこの探索にはうってつけですよ。」
漁師?
あぁ確か建網の代わりに岩礁を使うんだったか。〈原初の島〉でもやっていたな。
ヨハン「しかし〈迷宮節殻貝ダンジオン〉に〈死宮〉ですよ。大変都合が良いですねえ。」
ヨハンが楽しそうだ。どうしたんだ?
[無知ですまない。都合が良いとは?]
ヨハン「あぁ、そうですね。
〈死宮〉はあらゆるものを消化吸収します。動物、植物、動物性植物性の廃棄物、油、鉱物。
過去の実験記録に依れば、その辺の土で埋めてみたら、それすらも全て吸収したそうですよ。
おそらく、時間をかければなんでも消化出来る。
つまり、〈死宮〉があれば廃棄物処理、下水処理を考える必要が無いのです。」
うっわ出たよ便利動物。
そういう事か。
〈テオマシオ〉の油田で〈死宮〉に繋げられた配管は、〈迷宮節殻貝〉に下水処理をさせていた訳だ。
〈原初の島〉で集落が線上に並んでいた理由もこれか。
〈死宮〉の近くに集落を作っていたのだろう。
ヨハン「しかも、過剰に何かしら与え続けていればその〈死宮〉は、勝手に大きくなったり、増えたりするのです。
まぁ捕食器官ですからね。何かしらが豊富に餌があると判断するとそうなるのでしょう。」
いろいろと腑に落ちた。
[勉強になったよ。ありがとう。本など書いていたりはしないのか?]
ヨハン「結構書いてるのですけどねぇ。
ロディアさんとかしか読んでくれないんですよねぇ。」
ヨハンは笑いながら言う。
少々難解な書籍になってしまっているのだろう。
[ぜひ読ませてくれ。興味深い。]
ヨハン「え?ホントですか?ホントいろいろ書いてるんですよ。
交配出来る生物と出来ない生物いるじゃないですか。種類が近いと交配出来るっていうやつですよね。そんで、遥か西に〈オーガ〉っていうリィンがいるんですけど、彼等って〈ハイエルフ〉とも〈アルブ〉とも混血出来るんですよ。この混血個体〈クマリィン〉って呼ばれてるんですけどーーーーーーーー」
・・・この後コイツ三時間位喋り続けやがったマジヤバイ。




