第二十四話
〈ヒュドル〉に到着するとロディアを見つけた住人が集まって来た。
夕闇の中一瞬で百人程が集まる。
やはり相当な人望がある様だ。
私の所には子供達が集まって来た。
「ねー、おはなしできるー?」
子供が話しかけてきた。
十歳未満だろうか。日本語だ。
取り敢えず筆談で応えてみる。
[これは読めるか?私は話せない。だが字は書ける。]
ミッチ「あー!読めるよー!わたしはミッチだよー!」
やはりか。
[私の名はリケイだ。
ミッチ、言葉はどこで習っているのだ?]
ミッチ「学校だよー。毎日行ってるんだよ。」
間違い無いな。
敢えて〈普通の日本語〉で筆談をしてみた。普通に通じる。しかも子供にだ。
ロディアとノウラが話す日本語も余りにも流暢だった。
こちらが書いた文章も問題無く通じていた。
通って来た道沿いにある店舗らしきものの看板や品書き表示等を見るに、日本と変わらない。
この町の言葉はまるっきり日本語だ。
この島全体がそうなのか?もしそうならば不自然な事があるな。
ノウラは一番最初私に会った時、何故〈マルキド語〉であろう言語で話しかけてきたきたのだろうか。
ファティマはなぜあんなにもカタコトなのか。
今度聞いてみるか。
案内を受けて広大な敷地にたどり着く。
案内を終えると何か気遣う様に皆帰って行った。なんだ?
看板に〈ハウルの館〉〈学校〉〈図書館〉と書いてある。
玄関前にノウラが居る。
ノウラ「・・・ロディア様もいらっしゃったのですね。」
・・・ん?・・・機嫌悪い?
・・・まさかノウラを見て皆帰ったのか?
ノウラ「動物寄せの場所に動物避けが来てどうなさるおつもりですか?」
・・・動物避けっつったな。
ロディア「・・・ゴメンナサイ。」
素直に謝んのかい。
ノウラ「どうせ楽しそうだからってだけでいらっしゃったのですよね?」
ロディア「・・・ハイ、ソノトオリデス。」
あぁそうなんだ。
ノウラ「〈アルブ〉達だけ残して来たのですか?何を考えているのですか?肉食の猛獣は減っているだけで丸呑みしてくる蛇型なんかは普通に居ますからね?帰ったらみんな喰われてましたとか私は嫌ですよ?決めましたよね?必ず私かロディア様が留守を守ると。忘れられてしまわれましたか?約束を忘れてしまわれましたか?」
ロディア「でもホラ、ファムちゃん居るしフラウも帰ってくるし・・・。」
ノウラ「ファティマはこの地にまだ慣れておりません。フラウ様は普段から働きすぎです。毎日毎日どれだけの距離を飛び回っていらっしゃる事か。帰ってきた時位休ませてあげて下さい。ロディア様にフラフラされると巨獣達が散って蛇型が集まって来るでしょう?せめて蛇型にくらいトドメを刺せる様になってからになさって下さい。痛めつけただけで寄ってこなくなるのはある程度知性のある生物だけです。蛇型には全く効果はありません。そんなんだからオーミ様に最強の腰抜けとかって揶揄されるんです。」
・・・激詰めじゃねぇかよ。
一頻りロディアを詰めたノウラは、飛べる自分の方が速いからと、ロディアの塒に帰って行った。
ロディア「・・・こわいでしょ?あの子。」
私は大きく頷いた。
広大な敷地。南東側に入り口。北側には東西に長い図書館。北東に水泳場。南西の正方形の建物は大浴場らしい。
入り口正面、敷地の東から南東にかけて大きな正方形の建物。
これが教室と客室を有する〈学校〉であり〈ハウルの館〉。
田舎の庁舎とか校舎とかを思い出す。
入り口はかなり大きく作られており、中を覗くと通路も広い。
〈ハウルの館〉に入る。
出入り口は大きく、ロディアでも余裕を持って出入り出来る。テオでも大丈夫だろう。
入って正面の壁に〈ヒュドル〉とその付近の地図が描かれている。後でよく見ておこう。
右に通路を抜けると南北に部屋がひとつずつ。
南側にホール。北側に寝室。
ロディア「・・・私は気疲れしましたので、このまま眠ります。どうぞ寝室をお使い下さい。
詳しくは明日に致しましょう。」
ロディアはホールに入るなり横になる。
・・・疲れてんなぁ、効きまくってんだなぁ、説教。
翌日早朝。
ロディア「おはようございます!それでは参りましょう!楽しいらしいですよ!好きな人にとっては!」
・・・なんだよ朝っぱらからキャラ崩壊カンベンしろよこっちは寝惚けてんだよ。
トリコとニャフンに留守を任せ、もとい、〈ハウルの館〉の一室に鍵をかけて閉じ込め、出発する。
フラフラ動かれると危ねえからな。
一応果実類と干し肉を置いておく。
夜明けの大通りを歩く。大きな町だ。
すれ違うアルブ達はロディアに道を譲りながら会釈をする。
道を譲りながら会釈だ。
まぁいいか。
まだ日が昇って間もないにも関わらずかなりの人数がすでに働いている。
側溝の清掃、果実らしきものの運搬、何かしらの道具を持ち、何処かに向かう人々、目に入るだけでも相当なものだ。
〈ヒュドル〉はこの島の最北端に位置し、北にある〈エイグレア・ナル〉より稀に襲い来る飛行生物による襲撃を食い止める為に集まった〈アルブ〉達が住み始めた事が始まりである様だ。
数百年、千年、ともすればそれ以上前からの事であるという。
地図に依ると、北端から海側を、主に南東に向かって居住地と農耕地が広がる。
山側は広大な果樹園だ。
やや高い位置にある〈ハウルの館〉からでも全てを見渡せない。
高台や森に阻まれてしまっているからでもあろうが、おそらく単純に広い。
ロディア「この道は海まで続きます。
下って中腹辺りの大きな建物。
あそこに向かいます。」
明らかに町の中央。
基本的には平屋建て、一部二階建て、といったイメージの広大な敷地に建造物。
多分豊洲位あるぞなんだアレ。
大きな門を潜り正面の建物の扉を開ける。
[依頼書]と書かれた紙が山程貼ってある。
[陸鯱の討伐]、[ベナム防除作業]、[側溝の清掃]、[嘴貝の駆除]、[モスコ解体作業]、[登窯運営補助]、[シナパンディア焼却作業]、[ジャァンキルシュタインデス採集]、[ダメリカ伐採作業]、[果樹園でのディナケッカ迎撃]、[ゴブリカスの迎撃]、[農耕地でのイスバァン迎撃]、[ジャガイモンの採集]、[ブリカス駆除作業]、[コニー加工]、[ハングゥルゥ殲滅作業]、[タマネギルスの捕獲]、[ガイコクニンジン討伐]、[ヨルムンガンドの誘導]、[ロケトデンワ裁断作業]、[海岸道舗装]、[ヤクシアダイコン討伐]、[トライ・カミラの調査]、[北の岬看板建造]、[コンナトコマデヨムトワ計測作業]、等々・・・。
アルブの女性が声をかけてくる。
「いらっしゃいませェ!〈コンニチワオシゴト〉へようこそ!ご依頼ですか?!〈オシゴト〉ですか?!」
・・・ハロワじゃねぇか。
声がデケェんだよと思ったらロディアに緊張してんのね。




