第二十三話
ロディアは色々と説明をしてくれた。
「今私達が居る〈エイグレア・イーキ〉を含む、南大陸の東に位置する島々は、〈ナルガサッキ〉と呼ばれています。」
〈原初の島エイグレア・マルキド〉、その西側にある島〈エイグレア・フウクエィ〉、南東の島〈エイグレア・ヒィサァカ〉、遠く南南西にある連なる島〈エイグレア・ニアマァツ〉〈エイグレア・セントオリ〉〈エイグレア・ナル〉、最も南に位置する〈巨獣の島エイグレア・イーキ〉。
これらを併せて〈ナルガサッキ〉と呼ぶ様だ。
地球で言う六大州に近い分け方だろうか?数は六どころではない様だが。
ロディア「この辺りの事を〈ニゲン〉達は〈竜の領域〉と呼び、宝の山の様に考えている様ですね。
実際に、地域毎に〈竜〉が〈眷属〉を率いています。
この〈竜〉は全員が〈ハウルの一団〉と〈ハクロ号の一団〉により育てられた者達です。
・・・いえ、私以外の全員、ですね。
私はこの島、〈エイグレア・イーキ〉を任せられています。
これもまた〈盟約〉です。」
〈ニゲン〉とは、寿命六十年程の直立二足歩行を行う〈リィン〉、知的生命体。
北の大陸に支配的に生息しているらしい。
書物の挿絵を見る限り、どうやらホモ・サピエンスに近い様だ。
語源は〈人間〉だろう。
ロディア「〈盟約〉は〈ニゲン〉達の侵攻に対抗する為のものでもありました。
百年程前〈ニゲン〉達は、南大陸の中央辺りにまで幾つもの要塞を築き、多くの〈リィン〉や動物達を連れ去っていたといいます。
なんの為に連れ去るのかは私には分かりません。
知っているであろう方々も教えてはくれませんでした。
ただ、自分の領域を〈ニゲン〉から守護する事も私達の役割のひとつです。」
〈ニゲン〉による誘拐ね。ロクでもねぇ。
そうだな。分からねぇよな。私も教わるまでは奴隷の意味なんて分からなかった。
〈エイグレア・フウクエィ〉を〈黒鳳竜テオドール〉の〈フヨウ〉。
〈エイグレア・ヒィサァカ〉を〈善化竜シルファ・ドラゴン〉の〈ペルーサ〉。
〈エイグレア・ナル〉を中心に〈ニアマァツ〉〈セントオリ〉の三島を〈白鳳竜フェルマドール〉の〈モリィ〉。
〈エイグレア・イーキ〉を〈銀天狼竜フェンリル〉の〈ロディア〉。
そして〈原初の島〉、〈エイグレア・マルキド〉を〈黒皇竜ウロボロス・ドラゴン〉の〈テオ〉。
それぞれが管理者の様な立場らしい。
・・・テオってあのテオだよな。
アイツそんな立場だったんだな。
ロディア「私には〈眷属〉がおりません。
私の過去のせいですね。
〈孤独相〉となった私を恐れ、皆逃げていってしまいました。
フラウという名の私の家族とその眷属、ノウラとノウラの眷属、ファティマ等〈アルブ〉達の協力のおかげで役目を果たせています。」
ノウラもまた漢字を充てられた〈竜〉らしい。
〈マルキド文字〉は画数の少ない漢字が多数使われている。ほぼ十画以内だ。
だが稀に画数に関係無く漢字を充てられている場合がある。
竜種名もこれに当たる。
日本語表現さえ分かれば文字のみでイメージ出来るからではなかろうか。
ノウラは〈美獣竜フェンリース〉。
眷属は〈アルバ〉と〈グラシュテ〉。
〈アルバ〉はアホウドリが語源であろう。
全身が純白の体毛に覆われ、細身の食肉目動物、狐やチーターがアホウドリの様な翼を持った様な見た目の生物。
〈グラシュテ〉もまたアホウドリの様な翼を持っている。
こちらも顔立ちや身体は食肉目に近いが細身ではない。
翼以外は、豹や虎に近いだろうか。
〈美獣竜フェンリース〉。
タテガミオオカミの様に長く伸びた四肢と鋭く大きな翼を持ち、全身に純白の体毛。
見た目のイメージ通りだ。
ロディア「そこでなのですが〜ちょっとお願いがあるんですよ〜」
ん?なんだ?話し方が砕けたな?
〈ロディアのお願い〉を端的に言えば、島内管理のお手伝いだ。
ロディア「〈アルブ〉達、特にこの島の者達は、敵対する者を殺し、喰らいます。ずっと昔からそうだった様です。
この島の肉食動物達は美味なる〈アルブ〉達を執拗に狙い続けました。
それらを〈アルブ〉達は殺し、喰らい続けました。」
・・・あー、これは。
ロディア「結果、この島の大型肉食動物は絶滅に近い状態になってしまっている様でして。
増えすぎた草食動物によって森がどんどん減っています。
〈アルブ〉達は自分達や住処、耕作地域等が襲われない限り動物を殺しませんし。」
・・・あー。
ロディア「お連れ様を待つ間、草食動物の数調整のお手伝いをお願いできませんか?」
まぁそっすよね。
ロディア「私も〈アルブ〉達も殺せない、殺さないだけで食べれはしますので。
肉は無駄になりません。」
あー、そうなのね、ってかアンタも狩れねえのかよ。あぁ、ここが一番大事な所か。
ロディア「いや〜なんというか、断末魔の声というものがどうしても聞いていられなくてですね。」
・・・ちょいちょい思ってはいたが、ロディアはかなり人間クサい。一応聞いとくか。
[アンタ日本人じゃないよな?]
ロディア「違いますね。〈神獣〉様方にはよく聞かれました。
トドメを刺せなくなってしまったのは〈孤独相〉を抜けてからです。」
あー、そういう・・・。
ロディア「代わりにここにある本、見るなり書き写すなりして良いので。」
報酬は情報ね。
[承知した。引き受ける。紙も貰えるか?そろそろ無くなりそうだ。]
ロディア「もちろんです。
では〈ヒュドル〉に向かいましょう。」
ロディアは立ち上がる。
・・・え?アンタも行くの?
ロディアはトリコとニャフンを背に乗せて走る。
私は追いかける。
もし落ちた時フォローする為だ。
ロディアの走り方はとても思いやりに溢れている。
トリコとニャフンはほとんど上下に動かない。
ニャフンに至っては眠っている様だ。
トリコが抱え込む様に押さえ、ロディアの鬣に掴まっている。
道が整っているおかげでもあるだろうか。
周囲は森林や岩場だが、干上がった河川の様な砂と砂利の道が続く。
とても走りやすい。
ロディアの塒を出て、時折休みながら合計六時間程走っただろうか。
辺りはもう暗い。
見下ろした先に明かりが見える。
ロディア「見えましたね。あちらです。」
町に近付く。
〈原初の島〉の集落の様に〈トライ・バーミリオン〉に囲まれているわけではない。
城壁があるわけでもない。
だがとても平穏な場所に見える。
あぁそうか。
肉食動物は絶滅の危機だったな。
襲われる事はそうそう無い訳か。
レンガやカルシウム質での整地。
水路に道路に排水側溝。
かなりの数の木造家屋。
庭では家庭菜園か?ずいぶんとゆとりのある生活の様だ。
ロディア「ここがアルブ達の住処〈ヒュドル〉。
〈ハウルの一団〉や〈ハクロ号の一団〉が〈始まりの町〉と呼んだ場所です。」
〈ヒュドル〉。始まりの町か。




