第十七話
トンネルを抜けて正面に、そのまま下り坂の線路が延びている。
行き着く先に目を向けると石や砂利が山積みになっている。
さっきの掘削は採掘だったのか?
都市の形は円柱状、外周を這う様に、こちらにもやや下り坂の線路が伸びる。
ミユズ「それではお二方共こちらにお乗り下さい。」
促された先には、見た目はかなり大きなトロッコ、ではあるのだが、節足動物っぽい形状の底板の上に楕円形の床板が乗っている。
床板の縦の長さはテオの全長より少し長い程度か?
乗っても問題無い様だ。ミユズが操縦桿らしきものを握っている。
中央にテオを乗せ私も後ろに乗り込む。
ミユズ「こちらは位置エネルギーを利用したものであり、操作はブレーキのみです。
では参りましょう。」
・・・位置エネルギー・・・ブレーキ・・・もうなんか慣れてきたな。
トロッコが動き出す。速度が上がると、ミユズがブレーキ操作を行う。
ゆっくりと確実に降りていく。
テオが呟く。
「線路?に支えられて斜行?転がる?落ちていく?滑空に似ている?」
その通りだ。地面に支えられているか、揚力に支えられているかの違いでしかない。
テオは生きてきた年月分を差し引いても、相当に賢い様に思える。
細い滝の様なものが見えてきた。細い急流?いや、人工的な水路だな。
レンガの様なもので組み上げられている。
かなりの数の水車がものすごい勢いで回転している。回転速度からして木製では無い。あぁ、プラスチックか?
・・・発電所だな。間違い無く。
ミユズ「気になられますか?
あちらもやはり、位置エネルギーを利用した発電施設です。」
・・・ですよね。
そう難しくはないとは聞いているが、発電器の作り方なんぞ知らん。せいぜい電池位だ、分かるのは。
テオ「回転する、こすれる、熱くなる。火は出ない?」
ミユズ「・・・見ただけでよくわかりますね。
金属接触面に潤滑と冷却という対策を行っております。」
テオ「冷却、知ってる。アイス、美味しい。じゅんかつ?とは何?」
ミユズが流石に驚いてわかりにくい応え方をしてしまう。私も驚いた。
・・・今アイスっつったな。
テオの質問攻めにミユズが答えていると、またトンネルに潜る。
抜けると目的地に到着した。
地底湖に見えるが磯臭い。
地底海といった所か。
地上から合計して体感百メートル以上降りてきたはずだ。現在地点が海抜零か。
〈マァツ・ハウリア〉の地下にも地底海があったな。どちらの地上からも海は見えなかったが。
広大なマングローブの森林みたいなもので覆われていたのか?いや、潮の匂いすらしなかったな。
ミユズ「こちらは地底の海〈ミィシィ・オゥムリア〉。
かなり深い位置で海と繋がっているとされており、硬い外殻を持たない海生生物の逃げ場所、繁殖場所となっている様です。」
・・・なるほど。全くいないのか?そうであるならば・・・。
テオ「普通の魚、入ってこない?硬い魚、深く入れない?」
そうそれ。
ミユズ「どうやらその様です。
〈リワァド〉で言う深海魚。これらは硬い外殻を持っていない、そして、硬い外殻を持つ魚は深く潜れない、という事の様です。
まだよく分かっておりません。何しろ調べようがありませんので。」
テオ「調査、進んでない?」
ミユズ「植物は進んでいるのですが。
動物となると絞めてからでなければ危険ですので。
食べられるかそうでないかになってしまっております。
単純に索敵能力、戦力や拘束力の不足ですね。」
そうだな。観察となると難しい。ほぼ必ず先に発見されてしまう。
そして、逃げられるか襲われるかだ。
ミユズ「以前は〈ファントム〉の被害が大変なものでありましたが、〈グレムリン〉タチアナ様がお産まれになり、〈ウロボロス・ドラゴン〉テオ様がお目覚めになり現在、被害は全くと言って良いほどありません。
本当にありがたいのですよ。」
テオ「あの子達はより優れた〈テオス〉に従う。
この〈テオス〉は〈テオ〉と〈エリス〉。
〈黒〉と・・・〈ウイング〉。
タチアナ、優れた〈テオス〉生えてる。」
・・・〈ウイング〉?あぁ〈翼〉か。
発音出来んのね。
〈テオス〉は黒竜を指す場合と、〈黒い翼〉の場合があると。
文脈読めやってことですねわかります。
〈ファントム〉。
コウモリの様な翼を持った黒猫みたいなやつらだな。
タチアナが呼ぶとすぐに三十程が飛んできていたが。
元はそんなに凶暴なのか。
ん?タチアナが産まれる?テオが目覚める?流石に筆談。
[テオ、お前なにやってたの?タチアナ産まれるまで。]
テオ「・・・寝てた。・・・本読んでた。・・・五十年位。」
・・・引きこもりじゃねぇか。
時間が壮大すぎるんだよ。
ミユズ「ちなみに、どの様な本を?」
テオ「〈ハクロ号〉の調査結果。〈ヤドリ〉のはただの日記。」
ミユズ「!・・・それ、いつでも良いので見せて頂けませんか?本当に。本気で。
〈ドラゴンズゲート〉までお伺い致しますので。ぜひとも。」
テオ「・・・死んじゃうよ。持参する。ここの本を拝見したい。」
ミユズ「ぜひお願いします。他にもお望みがあれば用意しますので。」
ミユズの言葉が荒れている。
えらい早口になってんな。興奮しすぎたのか?
話を聞きながら階段を登る。
海抜零まで降りてらからまた登るのか?と思っていたら・・・〈迷宮節殻貝〉の〈死宮〉に出た。
大きな縦穴が開いている。
金属製のパイプが繋がっている。油クセェ。お察しだな。
普通に照明ついてたから気にしなかったが、〈ダンジオン〉の中だったのか?
延びた洞窟の奥が明るい。
なんか人工建造物がある。
多分鉄筋コンクリート三階建てだがもう驚いてやらねぇ。
ミユズ「こちらが油田管理施設の入り口。
これは宿舎ですね。
この洞窟の先に油田がございます。
あちらの明かりは外です。
崖になっており、下は湿地帯ですので大変危険です。お気をつけ下さい。」
あぁ、〈死宮〉から湧いてるわけじゃないのか。・・・なんのパイプだ?
ミユズ「ここから先が火気厳禁ですので・・・」
テオ「あの穴から本の持参、良い?ここの本、気になる。」
ミユズ「あぁ!もちろんでございます!飛べるのですものね!ここに書庫を作りましょう!〈迷宮節殻貝〉の壁は頑丈ですから!あぁ!除湿施設の実験もここで行いましょう!」
・・・ミユズ。キャラが違うぞ。
テオ「滲んだ本の書き直し、したい。ここでやっていい?」
ミユズ「もちろんです!」
・・・盛り上がってんな。
テオは引きこもってたくせに意外とコミュニケーション能力が高い。年の功か?いや、単純に賢いのか。
一頻り話した後テオは出発した。バカ共の無事も伝えてくれるそうだ。
ミユズ「・・・失礼致しましたリケイ様。どうぞこちらへ。」
テオが出発して我に返ったミユズの案内を受けて奥へと進む。
また〈死宮〉だ。こんなに近くにあるものなのか?
油クセェ中座り込んでるバカ共を発見。
またなんかうなだれている。
特にノボルは酷い顔面になっている。
リュウ「・・・あぁリケイさん、来たんだね。」
ノボル「・・・〈竜骨バーナー〉も金属ボンベのバーナーも、なんかもう、すでにあったわ。・・・。」
・・・でしょうね。




