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フーガック生物図鑑  作者: 遠藤迄太郎
転生と原初の島と旅立ち

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第十六話

 ノボルとリュウが完成した気球の説明を始めた。


 タチアナとヨシミも驚いた様子で見上げている。


ノボル「〈竜骨動物科・巨竜亜科・ヴェルグリンド〉!コイツのクソデカ〈竜骨〉三本も手に入ってな!

 バーナー作れそうだったから作って転用した!」




 〈竜骨〉。〈竜骨動物科〉の動物が持つガスボンベの様な、内側からの圧力に強く、漏れを起こしにくい筒状の器官。


 その中でも〈巨竜亜科・ヴェルグリンド属・ヴェルグリンド〉の〈竜骨〉は大人の背丈程もあり、相当量の液体気体を溜め込めるとの事。




ノボル「人力空気入れだと普通に死ねるから、加圧に関してはまだ実験中な。冷却考えた方が簡単かもしんねぇ。

 燃料は石炭ガス。これがクソほど大変だった。現状でも風次第でかなりの距離飛べるはず。実験だな。」


タチアナ「・・・。」


リュウ「ちなみに、海に流されそうになったりしたらパラシュートだからね。今のとこ。」


タチアナ「?!!」


リュウ「他にもまだ博打要素多いんだよね〜。」


ノボル「まだ熱風入れるだけで一苦労だしな〜。」



 布地は軽くないと膨らみすらしないと聞いた。素材はなんだ?熱圧着させたプラ糸の布の様に見えるが。



ノボル「多分ポリエステルなんだよ、コレ。カッパとかもあるしな。

 〈ハウルの一団〉が伝えて作り続けてたんだとよ。

 プラのチップっぽいもん溶かして製糸してたから多分間違い無いと思う。」



 衣服のレベルが異様に高いとは思っていたが。

 そんな物の継続生産は可能なのか?大量生産前提の物であろうに。

 流石に考え込んでしまう。伝統のみで作り続けるには相当な負担を強いられるはずだ。


ヨシミ「・・・ちなみにこの〈原初の島〉、多分三十万人位住んでるわよ。」



 ・・・は?



 この場所〈ハイエルフの園〉、もしくは〈福音の園〉、〈マァツ・ハウリア〉だったか?


 住民は三千程と聞いているが。



ヨシミ「〈原初の島〉の北半分は〈トライ・バーミリオン〉の大規模群生地が点在してるのよ。その真ん中を伐採してしまえば住むだけなら問題無いの。

 結果的にはバーミリオンに囲まれるからよね。」


 あぁなるほど、ウォールナントカがいっぱいある感じになるわけか。

 三十万も居るなら需要に応じた継続生産は可能か?

 いや、私の認識が間違っているかもしれない。経済前提で考えてしまっていた。そもそも経世済民の概念なんてあるのか?奴隷労働蔓延ってんじゃねぇだろうな?そういえば通貨自体見ていない。


ヨシミ「それで、ここから西に〈テオマシオ〉っていうかなり広い所があるのよ。」


ノボル「あぁ、そこで糸とか布とか大量生産してんすよね、たしか。行った事ないけど。遠いから危ねえっつって止められるし。

 実際布とか糸とかペレットとか持ってくるヒトら結構な武装だしな。」


リュウ「バーミリオン同士の距離が遠いんだっけ。

 大きな織り機あるんでしょ?ここの織り機もなかなかだけど。」



ヨシミ「あそこ、石油出てるわよ。」



 ・・・は?



リュウ「・・・は?」

ノボル「ちょっと待って意味わかんない。

 糸とかってなんかそういう植物生えててその樹液とかから作ってるとかじゃねぇの?

 なんか原料隠してるくさかったから遠慮してたんだけど。オトナたちのヒミツ文化的な感じなんかなって。」



ヨシミ「蒸留?して分離するのよね?全然知らないけど。そういう施設があるそうよ。

 見た目は谷と洞窟だからそんな高度なものには見えないのよね。」


ノボル「・・・えーっと・・・。」


ヨシミ「六十年くらい前に〈ハクロ号の一団〉が建造したらしいわよ。」



 流石に、ノボルが責める様に言う。


ノボル「・・・情報共有・・・。」

リュウ「・・・プラの原料、石油かよ。」



ヨシミ「あ!みんな来ちゃったわね!詳しくはあとでね!」



 ヨシミは誤魔化した。


 私は燃料に詳しくないのでわからないが、石炭ガス。そんなに大変だったのたろうか。さっき数年っつってたな。


 ノボルとリュウは座り込んだまま、力入らずといった様子だった。






『ーーーーーー!ーーー!ーーーーーーーーー!?』


 気球に駆け寄りながらモカ、歌姫ちゃんが何か言っている。なんか楽しそうにノボルに話しかけている。


 意外とアグレッシブなんだよなあの子。


タチアナ「大きさと、膨らんでるのと、浮いてるのと、バカと話せるのがうれしいみたい。」



 ・・・今バカっつったな。あ、いやノボルの名前か、〈バカ・キ・エロ・カスガ〉。


 それ抜きにしてもなんかトゲがあるな。まぁいいか。



タチアナ「あのふたり、顔合わせるたびずっとベッタリなんだよ。」



 ・・・あぁ、そうなんだ。



ヨシミ「石油の発見自体は三百年以上前。ハウルの一団が見つけたらしいのよ。

 見つけたから〈テオマシオ〉を作ったのか、作った後見つけたのかはわからないけど。」


 あぁ、まぁ使い道無くて放置された油田なんて地球でもざらにあったしな。


 よくよく考えれば石油を見つけたからといって、いきなり内燃機関とはならんよな。混合気圧縮してプラグの放電で着火するんだったか。作り方も機能のさせ方もよくわからん。

 せいぜい加熱による蒸気機関か。いや、精密な金属の加工自体かなりキツいな。足漕ぎ旋盤ならイケるか?いや、旋盤自体どうやって作るんだよ。


 ・・・そうか、ハウルの一団はその時出来る事をやったのだ。


 自分達が持っていた知識を使い、見つけた材料を使い、優秀な糸を、布を、衣服を、作り出したのだ。


 ・・・そして集落の生活を見る限り、その時出来る事のひとつとして、おそらく意図的に、ある時点で発展を止めている。


 知識を伝えきる事が大変だったのだろうか。


 時間的な制約があったのかもしれない。


 全てを伝えきらねば、継続は成らない。そしてどこかで間違う。


 私達が受け継ぎ、育み、伝え続けて来た〈技〉もまたそうであった事を、私達は知っている。






 翌日夜明けと同じくして私とテオは〈テオマシオ〉へと向かった。


 干渉などするつもりは無い。


 どうせ手に負えん。見るだけだ。知識を求められても何もわからんからな。



 というのも昨日のうちに、ノボルとリュウが皆に黙って〈テオマシオ〉への移動を強行した。


 これを保護する事が第一目的となる。正直、保護なんぞいらんとは思うが。


 バカ二人の失踪に気付いたウォードが武装兵?を率いて行軍すると騒いでいた様だが、ヨシミとタチアナ、そして側近達も止めていた。


「ウォードにとっては〈神獣〉であると共に〈家族〉でもあるのよ。あの子達の脱走なんて小さな頃からだしいい加減慣れればいいのに。」とヨシミがとてもめんどくさそうな声で言っていた。


「過保護なんだよ、あのヒト。駆除の時もちょっとケガしたヒトいたらすぐに引かせるし。狩りならいいけど戦争だったらすぐ負けそう。」とタチアナも言っていた。






 テオと共に高台へと駆け上がり、テオの前肢を掴んでグライダー飛行。これを繰り返す事でかなりの速度で移動出来た。


 ヨシミが言っていた。

「真っ直ぐ西に行くとツル植物が主の草原が見えるわ。相当な広さだからすぐに分かると思う。

 真ん中辺りに大きな穴が空いてるからそこに入る。テオも入って大丈夫よ、十分な広さがある。

 崩落の危険は無いわ、崩れそうな所はすでに崩して補強してある。

 そこから西に向かって洞窟が延びてる。抜けたら〈テオマシオ〉よ。

 見たら驚くわよ、きっと。」




 ヨシミの言っていた大穴が見えてきた。


 大きいな。目算直径百メートル以上、深さ五十メートル以下といったところか。


 地上に降り、北側から徒歩で中に入る。聞き覚えのある音が響いている。


 多数のハイエルフが働いている。


 ・・・ツルハシを振っている。これは掘削現場か?


 東に向かい横に、南に向かい斜め下に掘削している様だ。




 そして西に、〈テオマシオ〉側に目を向けると、トンネルがあった。


 ただの洞窟では無い。

 現代日本にある様な、コンクリート半円状のトンネルなのだ。


 舗装までしてある。・・・アスファルトだ。



テオ「これが〈ヨウドラァン〉?リケイ驚いた?」


 ・・・驚くどころの話では無い。混乱だよ、最早。


 〈ヨウドラァン〉、〈知識の通り道〉だったか?


 一定間隔で点灯した電球が吊るされている。電力の供給がなされているのだ。


 この先にある〈テオマシオ〉。一体どんな所なんだ?



 一人の女性が視界に入り声をかけてきた。日本語だ。


「はじめまして、〈ミユズ・アラタ・サガ・フリア〉と申します。

 シャル、スズと共に〈テオマシオ〉の責任者を任せられております。」




 〈フリア家〉。〈カスガ家〉、〈エル家〉と共に三つの王家の一角。重要人物だな。

 日本人じゃねぇだろうな。日本語が流暢過ぎる。


 衣服が余りにも現代的だ。白いシャツに綿素材の様なものであろう黒いパンツに革のブーツ、雨合羽の様なフード付きの白衣の様なアウター。


 銀髪の〈ハイエルフ〉は初見だ。その髪にやや構造色の虹色を見て取れる。

 左右で瞳孔と虹彩の色が違う。右の瞳は形も違う。

 コロボーマだろうか。日本でノボルが生まれつき患っていたのを思い出した。


 頭部の細い冠?が妙に目立つ。ヘッドドレスとかいうものだったか。

 髪で隠しているようにも見えるが。


 服装としては、水回り作業の様な出で立ちだろうか。

 イヤ、コスプレにしか見えんな。日本だったら。



テオ「私はテオ。彼は〈リル〉のリケイ。リケイは〈リワァド〉しかわからない。」


ミユズ「まぁ!やはりテオ様でしたか!お噂はかねがねお伺いしておりますわ!

 リケイ様におかれましてはご生誕お慶び申し上げます。」



 繰り返すが、流暢な日本語だ。取り敢えず会釈を返す。

 私の生誕ね。なんか大袈裟なんだよな。



ミユズ「バカ様とマジ様はすでに到着されておりますのでご案内致します。」


 あぁ、バカ共もう居るのか。追い越したかと思ったが。アイツら思ったより速いな。


ミユズ「あぁ、先に断っておかねばなりません。

 テオ様、この施設には火気厳禁、火元から離さねばならないものが多数ございます。テオ様には少々不自由をお願いするかもしれません。」


テオ「いいよ。案内に従う。」



 ・・・火気厳禁。大規模施設。ホントにどんな所なんだ?





 三キロ程を歩いただろうか。


 道の途中から、真ん中にやや狭いだろうか、線路が走っている。

 トロッコの様なものがあるのだろう。


 出口の明かりが見えてきた。


ミユズ「ご足労ありがとうございました。こちらが〈テオマシオ〉。

 天より隠された知識の園でございます。」





 絶句した。


 眼前に広がるのは地下都市。


 天井を支える様にいくつもの支柱が並ぶ。


 支柱に寄り添う様に数階建てのマンションの様な建造物も確認出来る。


 知識によって積み重ねによって作られた、照明により照らされる文明だ。


 私は日本に戻って来た様な錯覚を覚えた。






 ・・・ん?・・・天より隠された?っつったか?今。


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