第十四話
儀式が終わり、中庭へと案内を受け食事の席に着いた。
円卓に並べられた食事を頂く。
・・・美味いな、どれもこれも。出汁の概念もスパイスもあるのか。
それにしても・・・ここにいるのはおそらく上位者、護衛、給仕人か?
タチアナを初見した時にも思ったが・・・全員衣服のレベルが高すぎる。不織布でもニットでもない。明らかに織物だ。
つまり、高度な紡績技術があるという事だ。
強靭な紐や糸も作れるだろう。
・・・本当に、なぜこんな所に引きこもっているんだ?
一人の端正な顔立ちの青年がタチアナに歩み寄る。
リュウは女性的な印象だが、彼は少し鋭さのある単に美形の男性といったイメージだ。
ヨシミ「彼の名は〈ミカ・アルト・ガロ・エル〉。さっきの歌姫のお兄様よ。
・・・ちょっと困ってるのよねぇ。」
・・・なんだ?なにかあるのか?
ミカは柔らかく微笑みながら声を掛ける。
「タチアナ、ヤンデレトカイタイワア。」
・・・なんて?
タチアナは手を叩いて笑っている。
ヨシミ「・・・〈月がきれいですね〉よ。意味も全部そのまんま。日本と一緒。口説き文句。」
・・・こんなん多いな。
ミカは現在二十五歳。タチアナ達は十六。五年程前から割と大真面目に口説かれ続けているという。ろ・・・ぺ・・・?なんでもない。
うわなんかこっち来たおっかねぇ。
ミカ「とまぁいつものやつが終わった所で!リケイ様ですね?私は〈ミカ・アルト・ガロ・エル〉。エル家の六男であります。どうぞよろしくお願い致します。」
・・・少々軽いがとても丁寧、って、あ?日本語?
この男もそうなのか?
リュウ「ミカの日本語上手すぎてキモチワルイ。」
ノボル「恋路ってこわい。」
ミカ「お兄様と呼んでいいんだよ?」
ノボル「変な日本語までおぼえやがって、ってオレも教えたのかめんどくせぇ。」
あぁ何となく読めたな。
ヨシミ「タチアナと日本語で話したいが為に日本語覚えたのよ、この子。」
・・・でしょうね。
そういえば〈カスガ家〉の方々には会えていないな。ノボル達の養父母という事だ、挨拶しておきたいものだが。
やはり最上位故簡単には会えんという事だろうか?
突如音が響く。
[パンッ!!パパンッ!!]
銃声の様な破裂音だ。建物の向こう数十メートルといった所か。
周囲の者達は驚いている様だ。
ノボル「あぁ?!硝煙?!なんだよ?!」
覚えのある臭いが漂う。ノボルが取り乱している?様子を見た方がいいだろう。
私は走り、建物の上に飛び乗り、更に跳躍って、あ~やっぱ思ったより跳んだな。
私は空中で音の方向に目を向ける。
地面が円状に燃えている。
炎の内側に女性、件の歌姫〈モカ〉がいる。
そしてその正面に、真っ黒な翼を持った謎の生物。モカに向かい右の前肢を伸ばしている。
まさかアレが件の歌の黒竜か?
手を出させてはならないと、こちらに注意を向けねばと、私は叫んだ。
「ーーーーーーーーーーーーーー!!!」
完全に獣の咆哮だった。
黒はこちらに目を向ける。
私は地に足がつくと同時に、黒に向かい疾走、跳躍、最短で間合いを詰め、左腕の爪で黒の右頬に一撃を見舞う。
硬っったいな!ツルハシでコランダムぶん殴ってるみてぇだ!
だがちっとばかしよろめきやがった!
出来た隙を見て、モカを抱え炎の円の外に飛び退く。
そして再度、黒に対峙する。大きさ的にはクソデカい翼を持ったヘラジカ?顔面は猫科っぽいな。だが手先足先はトカゲだ。
ドラゴンってコトで間違いなさそうだな。そーいや、飛べる奴は入ってくるって話だったか。
打撃だ、効くのは。電撃も試してみるか。
私は構えた。
するとまた白が眼前を覆う。ヨシミだ。
ヨシミは慌てた様子で叫んだ。
「リケイさん!彼女は敵じゃない!!」
・・・ん?
ヨシミ「〈テオ〉!あなたも何が言いなさい!」
テオ「ヴォれた。出し切ってきたはずだった。」
・・・漏れた?かな?何が?・・・ウ◯コの話してる?ん?また日本語?・・・完全にマズったか?
歌姫ちゃん、モカが膝をついて何か言っている。
『ーーー!ーーーーーー!』
タチアナ『ーーーーー。ーーーーーーーーー。』
「えーと、〈お許しください、大切な友人なのです。〉って言ってたから、〈勘違いしたんだと思うゴメンね、襲われてると思って助けようとしたんだよ〉って言っといた。」
私はすかさず迷わず土下座平謝りを決める。
テオは「ソソウした私が悪い。アナタの生誕を一日千秋。チカラを知れて良かった。」と言ってくれた。
やっぱり爆発物排泄したんですかね?いや大丈夫ですスミマセンデシタ。
私はしばらく土下座を続けたスミマセンデシタ。
彼女の名は〈テオ〉。〈ウロボロス・ドラゴン〉の〈女性〉、と紹介を受けた。翼も身体もヨシミよりずいぶんと大きい。そして、黒い。
・・・というか、私は出会い頭に女性の横っ面ぶん殴ったって事か。最悪だ。
彼女は幼く身体が小さかった頃、世界で唯一海を渡った船である、竜が引く船〈ハクロ号〉に乗り世界を回ったのだという。
ヨシミ「アナタいつまでたってもカタコトよね。もう私の方が上手いわよ、喋るの。」
テオ「〈フェリス〉と〈フェンリル〉は話せるの多い。話せる〈テオス〉は知らない。字なら書ける。」
タチアナ「〈フェリス〉は〈フェリス・ドラゴン〉でママンみたいな白い竜の事。
〈フェンリル〉は発電オオカミみたいなやつ。
〈テオス〉は黒い竜だよ、〈テオス・ドラゴン〉。
百年以上練習しても〈マ行〉とかは上手く発音出来ないんだって・・・いつまで土下座するの?」
そうなんですねスミマセンデシタ。
リュウ「そんで〈マ行〉〈バ行〉〈パ行〉省いて話すと変な文章になるんだと。
いやマジでいつまでやってんだよ。」
なるほどスミマセンデシタ。
ノボル「一応細かい事言っとくと、ヨシミさんは〈フェリス・ドラゴン亜属〉、〈フェルン・ドラゴン種〉。テオ姉さんは〈テオス・ドラゴン亜属〉、〈ウロボロス・ドラゴン種〉って事な。両方共〈竜骨動物科〉〈真竜属〉。
いい加減にしろよもう突っ込まねぇぞ。」
情報量。流石に覚え切れんぞスミマセンデシタ。
私はいましばらく土下座を続けたスミマセンデシタ。
誠に申し訳ございませんでした。
そんな私達の所に向かい騎馬隊?が駆けてくる。二十近くいるだろうか。
表皮を鱗に覆われた馬?であろうか、鞍を背負い人を乗せている。
ラプトルみたいなのもいるな。
武装しているのか。色から見るに青銅だろうか?斧、槍、槍斧か?
ノボル「あっ!オヤジ!」
リュウ「・・・やべぇ忘れてた・・・。」
ノボルとリュウの様子がおかしい。なんだ?
騎馬隊?は地上に降りて駆け寄ってくる、そして跳躍、地面にダイブ。
誠心誠意土下座中の私に向かい総勢十五名によるジャンピング・スライディング土下座である。
『マコトニモウシワケゴサイマセンデシタア!!!』
ヨシミ「・・・〈誠に申し訳ございませんでした〉、マルキド語だけど、日本語そのまんま。
・・・あの子達多分、伝え忘れたわね。」
産まれた私を探す為ヨシミ達は森に向かった訳だが、私を連れて戻って来た事を伝え忘れた。
結果彼らは〈原初の樹〉まで迎えに行ったとの事。
一番にジャンピング・スライディング土下座をキメていた大柄細身筋肉質の男性、彼が〈カスガ家〉の当主〈ウォード・ガリル・カスガ〉。
その後ろの男性がウォードの嫡男、〈シャル・セキワンド・カスガ〉。
そんな彼等に向かっていつのまにかノボルとリュウも土下座をしている。
土下座まみれだよ、混沌だよ、カオスだよ、もういいよ、今日はもう寝よう。




