そして、三度目のエピローグ。
「一応最後に確認するが…
本当にええんじゃの?」
目の前で手を組み跪くカディス=レイヴンに、
未だ傷の癒え切らないクーロウア=バエレは念を押す。
「…かまわない、やってくれ。」
早朝に三人だけでルキリの墓碑の前で密かに行われた儀式。
魔力をクーロが。
精霊との契約をシュミカが担う。
「…ブレム坊…皇帝には何と伝えるのか?」
憑き物が落ちたような穏やかな笑みを浮かべるカディスは…
「失恋に耐えきれずに自害したとでも伝えておいて欲しい。」
目を逸らして『ん…どの口が…』と、
苦笑いで口元を緩ませるシュミカ。
「ん、
この後それが事実となる事も契約に折り込む…?」
カディスはその表情に肩を震わせて冷や汗をかく。
「…相変わらず酷いな…。
だが、
我が守ると決めた者達の為にならいつでもこの命は差し出すと誓う。
少しだけ猶予を頂けるかな?」
「…ん。
少しだけなら…ね。」
その覚悟を受け止めたクーロはシュミカに問う。
「契約の精霊は?」
優しげな精霊の気配だけは感じながらも、
その姿が見えないシュミカは辺りを怪訝そうに見渡しているが…
ふと上を見上げるとそれは居た。
「んひぃ!!
…いた…居ました…!
んひゃ~…竜…神……!?
…僕が指差す方に誓って。
愚かディス。」
その呼び名も鼻で笑いながら力強くカディスは言い放つ。
「もう我の身などはどうでもいい!
皇子なんぞ元々柄でもない!
加護もいらん!
放っておいてくれて結構だ!
ただ…今までありがとうございました。
今まで頂いていたそのお力、
少しでもレイヴンの民に注いでいただければと…。
この時を持って我はレイヴン帝国、
竜神様の加護下より離反致します!」
シュミカにだけ視認出来るその竜神の精霊は…
少しだけ微笑んだように見えた後、
カディスに雷を落として消えた。
もちろん命を落とす程ではなかったとはいえ…
ボロボロになって倒れているカディスは、
もう二度と『レイヴン』とは名乗れないただの野良竜人となった。
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昨日の葬儀後から続いた宴の後に雑魚寝した部屋。
大きな音で目が覚めたノイ、
早朝ではあるが最後の弾き語りに選んだのはいつもの公園。
その曲をあの丘で歌うのは『ただいま』の時であり、
『行ってきます』の今に相応しいのはこの場所だ。
一人でハミングを始め、
シリウトを弾き…
やがてリウトラと簡単な打楽器もアクセントでちょっぴり。
こっそり着いて来ていた二人と…
三人でこの街で最後の無観客ライブが始まった。
…その音に合わせて揺れる三本の雑草は誰にも気づかれる事もなく、
演奏の終わりと共に枯れ果てて朽ちて行った。
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ギリアに所在がわかるようにこの街から離れる事を登録しに、
アサヒ達はギルドを訪れた。
いつもの別空間隔離は無い。
ただ、
あのいつもの職員さんを探してみるが…
その姿は見当たらなかった。
(…最後に挨拶だけでもと思ったけど…
仕方ないかな。
…旅ってこういうもんだよな。)
それもよし。
と、
アサヒは別れというものに慣れ始めてきた。
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やがて一同が揃ってそれぞれの場所への別れの時。
「アンタ…
ノイちゃんに手ぇ出すんじゃ無いわよぉ~?」
カディスの胸に人差し指を突き立ててリアは念を押す。
「痛っ!
…加減を覚えよ…。
大事な妹分にその様な事はせん!
旅の道中、
ルキリ=スターニーの愛した歌声は我が守る。
それだけだ。」
そう言いながらも、
胸に突き立てられたリアの手を取って愛おしそうに見つめる。
「そぉいう所なのよぉ!
アタシが嫌いなのはぁ~!」
その手を振り払ってカディスの顔面に一発食らわせたリアは…
振り返って誰とも目の合わない方を向いて皆んなから距離を置いた。
「じゃあカド兄っすね!
よろしくっす!」
「…カド兄…?」
「語呂がええやろ?」
「家族ごっこが好きなんしょ?
ニャミ達もそうっしょ♪」
「…元も子もないっすね…。
でも…
いつかなれたら良いっすね、
あのキャラバンみたいな大きな家族に!」
その言葉にカディスはただ空を見上げた。
そして、
それぞれが一晩や二晩の宴などでは語り尽くせない程の思いを胸に抱き、
『じゃあまた。』
と手を振りあい、
一行はギルを筆頭に数頭立ての馬車で旅立って行った。
小高い丘に咲き乱れる花たちに見送られて。




