そして、雑草の芽は息吹く。その3
「まぁ当然…
そう簡単にはいかんであろうな…。」
ド派手な火柱が立ち昇った後、
教会へと逃げ遅れた者達は消し飛んだが…
教会そのものは無傷で残っている。
「早う飲みに行きたいんで割と本気を出したんじゃが…
それなりの者が頑丈な結界を張っておるの…。
世界中の情報を探っておった魔王じゃ。
放任主義の魔王協会も陰で力添えしておるんじゃろうな。」
カディスの元へ戻ったクーロはその傍らで人形の様に佇む天使を見て鼻を鳴らす。
「お前達もお前達で何か企んでおるのかのう?」
無表情の天使は口も動かさずに言葉として音を発する。
「天はただコチラに寄り添う者達を導くだけです。
その中に異物を見つけた為、
然るべき処置を行うまで。
下界に目を向けずに気づかないままでいた我らなりに協力しているつもりですが。
善意も悪意もバランスが取れていないといけませんから…。」
表情は全く変わらないのに嘲笑を感じさせるその風貌はカディスを苛立たせた。
「そもそもお前達の信者が教団などを作り、
意に添わん者を認めようとせんからだろう?
そちらでもう少し手を貸せんのか。」
天使は動かぬまま声を届ける。
「…天使教などというものは下界で人間達が勝手に始めた事です。
天は関与していませんし、
この世界は精霊達の物です…。
ギルドを通して精霊からの要請があったからこそ可能な範囲で手を貸すまで。
排除すべき者に印を付けただけでも分かりやすくなったでしょう?」
印とは天魔会の兵達の後頸部から出た芽の事であり、
炊き出しなどの食事を通して体内に入った魔王の因子を表面に浮かび上がらせた物だ。
…時々嫌な匂いを出すのですぐ天魔会の者だと分かる。
「…その気になればなんでも出来そうな物言いだな。」
「まさか…。
ただ我らが介入し過ぎればこの世の理が歪みます。
可能な限りこの世界に生きる者同士で解決していただきたいのです…。」
軽い溜息を空に吐いたカディスは外方を向く。
「あわよくばもう少し楽をしようと思ったが…。
白兵戦か。
仕方あるまい…
ルキリ=スターニー、
結界の一部を破壊出来そうか?」
大人しく話を聞かされていたルキリは、
ようやく来た出番に意気揚々と立ち上がる。
「ルキリの精霊ちゃん達は結界のスペシャリストだからね!
任せておくれよカディス様!」
「よし…。
ダトスは突入の準備をさせよ!」
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結局アサヒ達を見つけたのはガトスの部下達であり、
現在起きている事を説明したところであった。
「え?
俺狙われてるんすか?!」
兵はう~ん…と首を傾げる。
「いえ…
不思議とアサヒさんの名前は無かったんですよね。
この街に来たばかりだからでしょうか…
ただ、
念の為に一応護衛を付けておけと。
まぁカディス様が本当に守りたいのはリアさんでしょうけど。」
あからさまに嫌そうな顔のリアはシュミカを抱き締めていう。
「いぃ~らないわよぅ、
そんなのぉ!
全部シュミカが守ってくれるものぉ~♪」
抱き締められたままブンブン振り回されるシュミカにアサヒは問う。
「お…俺も守ってくれるかな?」
そのブンブンの中でも余裕でニヤけるシュミカは…
「…ん。
交渉次第…とにかく…リアに跪くの…このブンブンを止めて…!」
「リア!リア!
シュミカが!シュミカがぁ!」
我に帰ったリアは、
目を回しているシュミカに気づいて大慌て。
呆れて見ているガトス部下の竜人は提案する。
「とりあえず…
他に狙われている客人の関係者は我々とは無関係ですのでアレですが、
我らはガトス様とゴムールでノーイラ様を匿っていますので…
出来れば合流していただけると分散せずにお守りしやすくなるのですが…。」
ゴロゴロと大人達が話しているのを暇そうに聞いていたエイナは我慢の限界を超えた。
「もぉ!
難しい話は退屈でやだよ~…。
みんなで行ってやっつけちゃおうよ!
悪者なんでしょ?」
兵の一人は膝を折り、
エイナに目線を合わせていう。
「う~ん…
お嬢ちゃんはお兄ちゃんと一緒に安全な所に行こうよ、
美味しいご飯もあるよ?」
それを聞いたエイナは若干迷う。
「…うぅ…、
でもご飯はリアお姉ちゃんがいっぱい食べさせてくれたし…。
ちょっと遊びたいんだよ~…。
ねぇ!
アサヒはどうしたい?」
「俺は守られたい!!」
エイナ、リア、シュミカの視線はとても冷たい。
「…ほ、ほら、
ノイちゃん達も心配だろ?」
「…へえぇ…。
いつの間にあの店員と『ノイちゃん』なんて呼べる間柄になっていたのかしらぁ?」
「ん…僕たちが炎天下で駆けずりまわってた中…
とおちゃを誑かせて如何わしい店に入り浸っていた…と。」
「炎天下でもなかったし如何わしくも無いだろう!
しかもお前らは自分の欲望のままに腐った遺物を散策してただけだろうが!」
そんないつもの団欒に小さな影が一つ闇を落とす…。
「…ふうぅぅん…。
そうやってボクが居なかった頃の事を楽しそうに話すんだね…。
ちょっと寂しくなっちゃうけど…
よその子のボクも混ぜてくれると嬉しいんだよ…。」
目を合わせようとせずに訴えるエイナにアサヒは利己的な自衛芯を恥じた…。
「…ご同席させて頂いてもよろしいでしょうか⁉︎
出来れば身辺の護衛もお願いいたしたく…!」
パーティ全員での見学が内輪だけで決定した。
半ば家庭内コントではあったのだが…
アサヒが行きたく無いのは本音であった。
『あの竜人が嫌いだ。』
アサヒ自身の心は浮つきながらも、
ルキリ=スターニーを足蹴に扱うカディスに嫌悪感を抱いていた。
そんな事を知ってか知らずか…
「行動しなくちゃ変わらない事もあるしぃ…。」
「ん…行動しても変わらない事もあるの…。」
リアとシュミカは何故か哀れみの瞳でアサヒを見る。
「とにかくアタシ達のルキリ姉さんに会いに行きましょう?」
確かに言われてみれば戦場に彼女はいるはずだ。
「…俺は役に立たないどころか、
足を引っ張るぞ?」
アサヒの勘違いを承知の上でリアとシュミカは肩をすくめる。
「誰が戦いに参加しようって言ったのよぅ…。」
「ん…どうせ今から向かっても作戦の邪魔になるし…
普通に考えれば着いた頃には終わってるはず…ね。」
「見学に行ってみようってだけよぉ♪」
「えぇ~⁉︎
そうなの?
あーばーれーたーいー!」
「…ん、
明日またダンジョンにでも潜って稼いで来るといい…
これからの旅もお金は有ればあるほど楽しめる。」
それを聞いたアサヒは思い出す。
「そうだ!
早寝早起きをしてピー子に会いに行こう、エイナ!」
エイナはアサヒを凝視して考え尽くしてから答える。
「…ピー子って誰?」
驚いてエイナを二度見するアサヒに、
エイナは吹き出す。
「あはははは!
アサヒびっくりしすぎ!
さっきの仕返しだよー♪」
(…変なイタズラばかり覚え出したな、
このちんちん姫は…。)




