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そして、俺は〇〇になりました。  作者: Foolish Material
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そして、雑草の芽は息吹く。その2

 教会での戦闘は佳境を迎えていた。


 一般人よりは鍛錬しているとはいえ所詮は烏合の衆と、

 第五とはいえ西の大陸の帝国の皇子の率いる兵である。


「斬れ、刺せ、殺し尽くせ。

 よもや分裂して世界中に広がる魔王まで居るとはな…。

 

 これは精霊も天使共も認めた聖戦である!

 毒草に寄生された哀れな魂達を解放するのだ!

 この結界内にいる我が軍の仲間以外は全て狂った屍である!」


 天魔会の反抗を圧倒的な力で捩じ伏せるカディスだが、

 懸念も残る。


(これで終わるのならばそれで良し…。

 本体のコアも消滅したとて、

 地中の根が全て朽ちた訳でもない…。

 もう一幕程度は考えておかねばだな。

 出来ればこちら主導で…

 ならば…出来るだけ派手に!)


「カディス様~!

 もう少しで爆裂術式は完成するそうですけど…、

 クーロウア様が本当に地上だけで良いのか確認を取れと…。」


 念の為にと、

 カディスの部下の中で最も素早いダトスが伝令に飛ばされて来た。


「…それで構わん。

 コアが消滅したのなら地中に潜んだ根もそのうち朽ちよう。

 最後の反撃を企てるのならば…

 纏めてから駆除した方が楽であろう?


 …その様に伝えよ。

 あと、

 ルキリに得意の結界の展開を忘れるなと。

 周囲に被害を出してはならんぞ!」


 それを聞いたダトスは青ざめる。


「…結界内の自分らは…?」


 呆れたカディスは溜息を吐くが…

 立派になったかつての舎弟が、

 まだまだ完璧には程遠いと知って安堵して微笑む。


「そこまで言わんと伝わらんか…

 なぜお前達が結界内に留まる必要がある?

 奴らを教会内に残して総員は退去。

 爆風は上に逃げる様に結界は筒状に。

 雑草を刈り尽くして花畑を作るのだ。

 まずはその手向けとして空に華を咲かせてみせよ!


 …あぶれた雑兵程度はお前達が処理すれば良かろう?」


 ポンと手を叩いて納得したダトスは振り向きざまに雑な敬礼をして飛び去る。


 カディスはその背中に後を託すに足りる力強さを感じて口元を綻ばせる。



 ---



 教会の地下に逃げ延びた一般信者達は大きな音がする度に不安が増して行く。

 なんとかそれぞれの顔が認識出来る程度に薄暗く発光する苔に照らされた空間で、

 その場のストレスは増してゆく。


「なしてこんな事になっただ?

 何があっても天使様とやらが助けてくれるんじゃなかっただか!?」

「竜人共め…客人共め…!」

「腹ぁ減っただよ!

 腹ぁ減っただよ!!」


 例の三人はともかく、

 この地下室に逃げ込んだのは十数人。


 食事と共に与えられ続けた魔王の因子と恐怖に支配された者達は、

 それぞれに自分達をこの様な状況に追いやった存在全てに悪意を持ち始めた。


 そんな中、

 一人の信者の男が地下室の片隅に木箱を見つける。


「…爆裂法珠がこんなに…。」


 それは、

 己が存在を全うする事を至上の喜びとする精霊種の一つ、

 文字通り『爆裂種』を封じ込めた法珠であり…

 その中では今か今かと待ち望む精霊達がテンションマックスで蠢くダイナマイトである。


 それを見つけた男はもちろん『魔王因子』によって演出の道具として動かされているのだが…。

 男はその爆裂宝珠の存在を、

 それとなく他の一般信者達に流布する。


「これは食えるだか?」

「ええけどここの全員死ぬで…。」

「でける事あるか?

 ただ逃げてなんか食いてぇだけなんだぁ…

 こっただ都会なんぞ来ねば良がっただよ…。」


 ざわつく者達を身振りでそっと落ち着かせ…

 ギリアに完全討伐されたコアを失いエネルギー供給が絶たれ、

 もう消滅するしかない分け身の傀儡となった男は言う。


「せっかくこんなにあるんです。

 せめてこの街の客人や竜人くらいは吹き飛ばしてやりましょうよ。」 



 ---



「…出来れば会話で歩み寄りも考えたが潮時であるな。

 やれ、

 クーロ。」


 世界の転換点を何度も経験している最古の賢者の弟子である獣人は、

 ただただ言われた様に術を行使し、

 ティルスガルの町外れの教会の敷地一帯を消し飛ばし、

 ルキリの張った結界によってその衝撃は上空へ上がり花火ではなく…


 火柱として暮れゆく空を照らした。



 ---



 この街に滞在する者、

 この街を去る者、


 それぞれがその思いを胸に…


『ああ、

 なんかどっかのクエストが派手な事やってるな…』


 程度の認識で皆己が道を進んでゆく。


 そんな中、

 北方の地の集落の手前で腐臭を放ち始めた少女は安堵していた。


「だいぶ涼しくなって来ましたね~♪

 今の私の身体に丁度いいですよ~♪」


「今の私の身体には寒すぎるのよ~!」


 と、幼女の懐に隠れるハムスターは思念で伝える。


「私だって常に魔力や霊力が満タンではないんですから…。

 この身体にとっては犬猫だって保護するには大きいんです。


 アナタが霊体から実体が欲しいって言ったんだからこれで限界です!」


「…あと、

 臭い…。

 むぎゅ!」

「元々アナタの身体でしょう!」


 懐のハムスターを軽く押し付ける幼女は片腕の匂いをかぐ…。


「でも確かに…

 そろそろ少し回復させてから防腐処理をした方が良さそうですね…。

 私の魂が馴染めば少しはマシになるとは思いますけど…。


 とりあえず、

 次の集落に教会でも有れば、

 多少の魔力をくすねる事も出来るでしょうから…

 もうしばらく我慢なさい。」


 ボロボロの衣服で傷だらけのまま、

 生き生きと力強く幼女の屍は歩を進める。

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