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そして、俺は〇〇になりました。  作者: Foolish Material
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そして、暴走する者達。その2

「カディス様~?

 ガトダトまで…全く…。」


 カディスの軍が貸し切っている宿のロビーでは三人の竜人がだらしなく雑魚寝していた。


 早朝であるが、

 十分過ぎるほどに睡眠をとりすぎたルキリ=スターニーは退屈を弄ぶ。

 周囲の気配を探るには、

 念の為自発的に彼等の懐かしい時間を平和に見守ろうと部下達の配慮がある。


「お疲れ様だね…お前達。

 いいさね、

 後はルキリが見てるから休むといいさ。

 そろそろ帰る準備もしなきゃだろ~?」


 姿の見えない気配達は緊張を解き、

 ザワザワと玄関から入って来た。


「おはよう御座いますルキリさん。

 ゆっくり休めましたか?」


 どこでも誰にでも好かれてしまうルキリは当然兵達にも好かれている。

 パチンと指を鳴らして建物周りへの結界を精霊に任せたルキリは、

 ゾロゾロと部屋に戻って行く兵士達一人一人の名を呼びながら労ってゆく。


「こんなにみんな夜通しで…

 ルキリが寝てる間に何か騒動でもあったのかい?

 …何人か戻って来てない様だし…。」


 大あくびをしながら、

 部屋に戻る前に広いロビーでストレッチをしている数人にルキリは声を掛ける。 


「いや、

 ただの職業病ですよ。

 珍しくカディス様達が楽しそうだったので…

 側から余計な水を刺されたく無いじゃないですか。

 思い出話に花が咲いていたみたいですし…

 自主的な警護を勝手に買って出ただけです。

 …『尊い』ってやつですか?へへ♪」


 もちろん彼らにとって昨夜の追跡者などは枝葉末節であり、

 ルキリの気を紛らわせるほどのことではない。


「戻って来てない奴らはカディス様とギルドに行った奴らですよ。

 大方クーロ様が入り浸っているゴムールにでも気晴らしに行かせて貰ったんでしょう。」

「あ~、

 そうだろうな~…

 帰国するまでにもう一度くらいは行きたいな~。」

「そういえば砦を落としたのにいつまで此処に居るんだ?」

「それだけど…」


 と言いかけて、

 ガトスダトス側では無かったその兵士は口をつぐむ。


「それだけど…なんだい?

 何かありそうなのかい?

 ルキリは気にするよ?」


 隠密活動でこの街の情報をかき集めていた彼は、

 天魔会の動きとギルドの動きも知っていた。

 しかし、 

 主人であるカディスと帝国の重鎮クーロから言い渡らせているのは

 『ルキリ=スターニーの心の安寧』

 

「それだけど…、

 まだ懲りて無い残党がいるかもしれないからって、

 ギルドから引き止められてる…らしいですよ?」


 複数のターゲットの中に『ノーイラ=タスツ』が含まれている可能性を、

 決して悟られてはならない。

 そう感じた彼は言葉を濁す。


「ふぅ~ん…

 ルキリには関係ないけど本国の方は大丈夫なのかねぇ?

 どっちかって言うと恨まれてるのはあっちだよね?」


 もっともな意見なのであるが、

 そろそろ部屋に戻ろうとしている残りの兵達は苦笑いで茶を濁す。


「何言ってるんですか…

 精霊と天使に認められた新皇帝のブレム様が目を光らせているんですよ?

 しかもヴァレキレスの魔王グネフにまで目をつけられたからこそこちらまで追い詰めたんですから。

 客人が存在する限り根絶やしは不可能でしょうけど…

 天魔会もおとなしくはなるでしょうよ。」

「お前!

 その話は…」


 もう一人が慌てて口を塞ぐが、

 ルキリ=スターニーはキョトンとしている。


「なんだいその顔は…?

 そうだね、

 早く仕事を終えてヴァレキレスで待ってる親父達と飲みたいねぇ!」


 明るく太陽のような笑みに兵達は深い影を心に刻む。

 その望みが叶えられる事は無いのだと。


「じ…自分達はこれで失礼します!

 何かありましたらすぐにお声がけください!」


 そそくさとそれぞれの部屋に戻る兵士達を静かに見送るルキリ。


「…こんな時間までお疲れ様だったね…。

 ガトダトもこの調子じゃ公園には連れては行けないかなぁ…。

 あの娘の喉も回復して今日も歌ってくれてるといいなぁ♪」


 疲れた兵士達を守る結界を優先するルキリは、

 晴れ渡った空を見上げていつもの公園に思いを馳せた。



 ---

  


「昨日はタダでご馳走食えたのは有り難かったけんど…」

「うるせえ音で耳がイテェだな…」

「あれがノーイラとかいう客人の子って事け…

 高飛車で嫌な女だっただな!

 あんなのに魅了なんてされる訳ねぇだ!」


 宿に泊まる金もない三人の男はとある公園で朝を迎えていた。

 

 広い公園の奥の方から数回流れてくるチャルメラのメロディ。


「…何だか腹が減る気がする曲だなや。」

 

 それが終わるとユックリと流れる伴奏と共に美しく優しい歌声が響いて来た。


「通くで誰か歌ってるみてぇだなぁ…」

「ああ、

 昨日のやかましいのとは雲泥の差だなや。」

「気持ちいい朝にもピッタリだぁ…。

 コレならずっと聴いてられんだなぁ。」

 

 元の調子を取り戻したノーイラ=タスツの歌声は、

 勘違いしたままの天魔会のチンピラ達の心を洗い流す。


「昨日の女も見習うと良いだな!」 

「全くだぁ…。」

「竜人の溜まり場にもなってるみてぇだし…

 いっそ店ごとやっちまうだか?」


 竜人に砦を落とされた恨みも重なり、

 愚かな三人組の間違いと逆恨みは加速して行く。



 

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