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そして、俺は〇〇になりました。  作者: Foolish Material
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そして、暴走する者達。その1

「ん…やばい。

 この勢いで飲み食いされたら破産する…

 何故にこんな時にバカディスは居ない…?

 財布としての価値しか無い愚かディス…め!」


 成長期の子供の食欲とリアの酒の量は、

 あっという間にシュミカが管理する金銭の底を暴くべく暴走していた。


 もちろんアサヒが隠している資産からすれば問題はないのだが…

 それがバレてしまっては冒険の旅がただのバカンスの旅に変わってしまう。


(…あれ?別にそれでも良くないか?)


 アサヒはこの先続く旅の『真理の扉』に手を掛けた…その時である。


 駆け寄ってきた先程の受付のお姉さんがやって来る。


「お待たせしましたー!

 お話は…可能でしょうか?」


 テーブル溢れる飲食物に呆れながらお姉さんは遠慮がちにキレ掛けている。


「…シュミカ、

 この場を任せていいか?

 …俺には抑えられないし…

 エイナがダンジョンで割と稼いでくれたから…

 最悪はギルドを通してギリアさんに連絡を取ろう…。」


「ん…了解。

 どのみち僕は動けない…。」


 本日のムシャムシャは終了!と宣言されたリアは、

 尻尾でシュミカを固定して逃そうとしない。


「せめて雑務くらい担当してちょうだいぃ~

 オス人間~。」


(お前の愛しのギリアさんだって『オス人間』だぞ!)


 飲みながらシュミカに頬擦りするリアにとっては、

 『種族』よりも『オスかメスか』が重要の様である。

 もちろん最重要視されるのは『強いか弱いか』なのであろうが…。


 お姉さんについて受付へ戻ったアサヒは、

 再び例の結界へ招かれた。


「無茶苦茶です。

 アナタのせいではありませんが、

 アナタ方が原因です。」


 例の受付嬢は広く白い結界内のテーブルに肘をついて苛立っていた。


「天使教の上層部は『天魔会』を黙認していたようですが…

 今回の戦争…アナタは知らない事でしょうが、

 レイヴンの件で『天魔会』はやらかし過ぎたようで敗走。

 挙句には今回の様に下っ端どもが勝手に各地で『客人』狩りなどをしている模様。


 …太古からこの地に根付いて共に在る御子孫まで差別対象として害し始めました。

 よって、

 天使教からは直に『天魔会』撲滅の依頼を受領致しております。

 明日正式に全ての冒険者へとクエストが発令されますが…


 我らが友人であるレイヴンの友が東の地で撃たれ、

 例の馬がもたらした情報では『客人』を是としない者達に愉悦種が加担している様です。

 複数の名が記載されていましたが…

 最近この街でも愛され始めた歌姫…

 ナイトソードの『ノーイラ=タスツ』の名が有りました。


 …ご存知ですよね?」


 勢いよく捲し立てる様に話す怒り心頭の面持ちの女史は、

 肩を震わせながらアサヒを睨みつける。


「し…知ってはいますけど…?

 『ナイトソード』…

 俺の世界の言葉…?

 騎士の剣って同じ意味ですか?

 もしかして同じ世界の…」


 目つきは変わらないままだが少しだけ心を落ち着かせる様に女史は言う。


「あ~…

 多分違います。

 どれだけの世界が存在してると思ってるんですか…?

 それに彼らは大昔に招待されて血も薄まって、

 王族ですら不発現者…『無能力』です。

 …そんな者にすら敵意を向けるなんて…。

 今の天魔会はそんな歪んだ劣等感の持ち主の集まりの様です。」


 『天魔会』のそもそもは、

 かつての魔王に唆された天使教徒の過激派であったが…

 当時は信念もあった。

 現在のほとんどは、

 上手くいかない人生を異端の徒に責任転嫁して…

 表では天使教徒を名乗り、

 裏では偏見をかざす排他主義者の蒙昧の徒となっている。

 

 女史は手元の書類を見ながらアサヒに言う。


「…全く…、

 ちょっと街で目立っただけの客人の子孫が狙われて…

 今まさに存在するアナタの名前が出て来ないのかが腹立たしいですね!

 いくら弱くて目立たなくてつまらなかったとしても…

 この世界に貢献している他の方々の分まで犠牲になろうと何故しない?

 客人名義泥棒!」


 その『客人』と呼ばれる事に嫌悪を覚えて途中から聞くことを放棄していたアサヒは、

 この世界の部外者として一言だけの質問で答える。


 「で⁉︎」



 ---



 幕間でゴムールのキッチンの脇にある楽屋的なスペースで休むリャイラナ達に、

 軽食と飲み物をノイが運ぶ。


「途中から観たけど良かったっすよ、

 リャイラナ~!

 激しい楽曲もココなら輝くっすね!」


 憧れのノイに声をかけられたリャイラナだが、

 昂る気持ちにプライドが蓋をする。


「あ…あら~、

 ノイさ…ノーイラさん。

 身体の方はもうよろしくて?

 突然喉を悪くするなんて…体調管理くらい出来ませんと…

 それに…ほほっ♪

 この様な華やかな舞台ではアナタ方の田舎臭い音楽より、

 ワタクシ達の音楽の方が合っている様ですわね~♪」


 『ごもっとも~』と頭をかくノイを見ながら次の料理を待つニリは、


「なぁなぁ、

 アイツぶん殴ってもええかなぁ?」


 と殺意をカニャミを使って押し殺そうとする。


「やめるっしょ…

 ニャミ達が居なくなってから鬼ママの指導で気づくっしょ…

 自分達がどれだけヌルい環境でやってたか…

 地獄を見てから同じ言葉を言えるか…っしょ?

 ひひひ…。」



 ---



 幕間の客席では人が増えて盛り上がっている。


 馬鹿なキャラを演じ、

 仲間の恋路を後押しできたのか…?

 それともいつも失敗の原因となる余計なお節介をしてしまったのか…?

 こっそりと仲間二人が退店するのを見送り、

 結果としてもっと良い方法は無かったのかと…

 自問自答しながら目の前に残る三人分の料理を眺めるリリリー。


(さてさて…

 食べきれないのは勿体無いけどな。)


 出来ればワンナイトを楽しめそうな…

 と店内を見渡すが、

 何故だが増えているのは屈強な兵士達…しかも竜人が目立っている。


(…そうか、

 舞台に立つのは女の子達だものな…。

 こうなるか。)


 諦めたリリはとにかく周囲に目を配らせて、

 自分が主導権を握れそうな薄暗い存在を探す。


(見つけた!)


 女性は諦め、

 入り口の側にたむろう気弱そうな男達。

 誰に話しかけても返事を引き出せる『勇者力』。

 もちろんそんなものは無いが、

 リリは使う。


「…あ、

 あの…すみません、

 自分はこう言う場に慣れて無いんですが…

 連れが気分が悪くて帰っちゃったんですよ~。

 お料理、

 ほとんど手を付けてないのでご一緒にいかがです?」


 突然声をかけられた、

 大柄小柄細いその三人は普通にお腹を空かせていた。


「え…?

 オラ達金ねえど?」


「平気です、

 オレも食べきれないんで!ははは!」

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