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そして、俺は〇〇になりました。  作者: Foolish Material
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そして、暗躍する者達。その7

「虐殺兵器でしかないと思ってた機械種の技術にこんな使い道があるとはね…。

 何事も使い方次第だね、ははは!」


 初めて見た大音量のステージに興奮気味のリリは、

 一人の店員がお気に入りになって…

 高級なボトルまで入れてしまってご機嫌である。


「へへぇ♪

 気に入って貰えたんなら嬉しいわぁ♪

 今日はちゃうけどウチもステージ出るで?

 良けりゃ通ってみてな~!」


 フワフワの尻尾をなびかせて愛想よく労働に励む獣人の少女に手を振り、

 場の雰囲気に馴染めずにいる二人の仲間に気を向けるリリ。


「ピッピとササは大きい音は苦手だったかい?ははは!」


 楽しまなかった訳ではないのだが、

 初めての体験に心が追いつかないササは微妙な反応を見せる。


「…アタイ的には曲は素敵だったと思うし嫌いでは無いけど…

 知った上で来たかったわ…。

 出来れば今日はゆっくりと今後の話をしたかったのよ…。」


 全てについて行けていないピッピは聴き疲れてしまっている。


「オジサン的にはもう少し静かな音楽が好みかな…。

 もちろん否定している訳じゃ無い。

 ただわからんし着いて行けないだけだ。

 年寄りはそこいらで一杯ひっかけて宿に帰るから二人は楽しむと良い。

 もう一日くらいならここに滞在しても良いだろうし…

 『フォルナーイ』の件は正式に受けてはないし特に拘る理由も無い。


 他の要勇者案件が出るまでのんびり旅を続けるのも良いんじゃないか?」


 『ギルド公認見習い勇者』のリリリー=コンキリシャを抱えるこのパーティは、

 リーダーはギルドランク上位のピッピが務めてはいるが…

 対魔王クエストを前提として成長途中である。


 先程ギルドで見た北方の魔王からの挑戦状に仮登録はしてみたが…

 かつてギリアと戦場を共にした事のあるピッピとしては、

 まだまだ早計な事だと思っていた。


「ははは!

 そうだね!

 でも挑戦するだけでも良いじゃないか!

 先輩勇者も沢山いるし単独で挑む訳じゃ無いんだ。

 後方で勉強させてもらって危なくなったらケツをまくって逃げればいい!

 オレは最後に笑っていれればそれが勇者だと思うぞ、ははは!」


 肩をすくめるピッピは席を立つと…


「それでこそワタシの理想とする勇者だよ…ははは…。

 とにかく今日は疲れたから先に失礼するよ。」


 と、

 リリの肩を叩いてササの方を見てから背を向けて立ち去る。


(拗れているね…ははは…)


 どうにも面倒臭くなったリリは、

 ダメ元で入り口そばのカウンターに目を向けた。



 ---



「はぁ~…

 ノリはええけどあの客無理やわぁ…

 もう計算計算で視線とか追うので精一杯!

 見習いゆうてたけど…

 勇者とかやろうとする奴の頭おかしすぎんわ!」


 カウンターのすぐ裏の厨房に戻ったニリは疲労困憊でカニャミに愚痴りながら膝をつく。


「ママちゃんの知り合いのパーティみたいだし…

 多分見習いなんかとうに超えてるレベルっしょ…。

 まともに相手するだけ無駄っしょ~?」


「ニャミちゃん~、

 女の子のテンションが上がりそうなスイーツをお願い~。」


 扉一枚隔てているだけのカウンターからパナルマはカニャミに注文を入れる。


 そのカウンターの前を会釈しながら立ち去ろうとするピッピをパナルマが引き止めた。


「連れないわねぇ…

 落ち着いたら昔話でもしたかったのに…。」


 まさか引き止められるとは思わなかったピッピはたじろぎながらも愛想笑いで去ろうとする。


「いやいや…

 それほど役に立った記憶もないですし…

 覚えていて頂けてただけで恐縮です。

 夢見る若者にぶら下がって細々とやって行きますよ。」


 本人はそう言うが、

 最前線で活躍していた勇者達の記憶には残っていて、

 その謙遜癖も彼の美徳として強者達の記憶には残っているのである。


「ほらほら…

 お連れの女性が話があるみたいよ?

 デザートと飲み物くらい一杯サービスするからゆっくりお話しなさい。」


 二人をカウンター席につかせてデザートと飲み物を出した後、

 パナルマはリリに目配せすると、

 静かに厨房へと下がった。


「…ね、ねぇピィネ…。

 コレをいただいたら…

 二人で静かなお店で飲み直さない?」



 ---


 

 思慮に入れるまでも無い追跡者を退けたユリィネル=ソーシャイハは夜を満喫し、

 ベッドの中で二人の女性を両脇に寝かせて今後の事を思う。


(…流石にもう帰らなくちゃですよね~…。

 それにしても尾けて来てた変な連中は何かしら~?

 あ、エイナちゃん可愛かったですね~。

 …コロンちゃんは元気かしら~?

 早くあのトカゲ男が転んで頭打って絶命しますように…。

 あの変態科学者もですわ~…)


 そんな事を考えているうちに夢の中へ落ちていくユリィを、

 右の脇で寝ていた女性…

 当然今はメガネを外しているが、

 ギルドで爪の手入ればかりしている受付嬢の相棒のユチミイが引き止める。


「あ…あの、

 ソーシャイハ…さん?

 起きてますか?」


 ユリィは多少億劫に感じたが、

 この街での夜を彩ってくれた礼に応じる。


「まだギリギリ起きてますよ~、

 どうしました~?」


「目的の物は手に入ったんですよね…?

 もう帰っちゃいますか?」


「…そうですね~。

 お仕事ですから…物を届けて報告もしないとです。」


「…アタクシも…連れて行っては貰えませんか?」


「…」


「…すみません。

 ワガママでした…。」


「…おやめなさい。

 西はこれからきな臭くなるわ~…。

 ワタシもこの依頼で傭兵なんて辞めようと思ってるのよ~。

 それで…

 あちらにもワタシを待ってる子がいるわ~。

 アナタ達にとってはお姉様になるかしら?

 もし…

 仲良くする事を約束できるなら…

 みんなで南にでも行ってゆっくり暮らさない?」


 ユリィの左脇で途中から聞き耳を立てていた、

 爪の手入れ娘のココツィラがユリィに覆いかぶさって乱入してくる!


「良い話じゃないですか!

 ワッチ先輩に好かれるの得意なんで!

 末っ子キャラで姉さん達の役に立ちますよ!

 家事洗濯はそっちの陰険メガネが得意ですし!」


 顔を真っ赤にして起き上がったユチミイはココツィラをユリィから剥がしにかかる。


「ちょ…ココ!

 いつから聞いてたのよ⁈」


 わちゃわちゃと戯れ合う可愛らしい子犬達を見ながらユリィの気は晴れた。


「ね~、アナタ達。

 ワタシは仕事を済ませて戻ってくるわ~♪

 ギルドにいた竜人のリア=スティルノアはご存じかしら~?」


 ユチミイとココツィラは顔を見合わせて頷く。


「この街でお酒を飲んでる姿以外は知られてない方ですね…。」

「あの変なパーティの竜人の姉さんっすね?」

 

 どこにでも根を広げて様々な花を咲かせる女。

 リア=スティルノアはユリィにとっては太陽であったが…

 そんな手の届かない空へ手を伸ばすのは終わりにしようとユリィは思った。

 手の届く地上にも温かく自分に寄り添ってくれる花が咲いていたのだから。


「リア様はワタシにとってのお姉様…だったの。

 だからお願い。

 アナタ達の出来る範囲だけで良いから…

 あの人の助けになってあげてちょうだい~♪」


 薄暗い人生が続くと自分自身で決め付けていたユリィの心は、

 晴れてしまえば何だったのかとすぐに忘れてしまえる程に澄み渡った。

 

 大嫌いで薄暗い雇い主であるテッド=ケヴィンス本人では無く、

 その下で耐え忍んできた自分に心から感謝した。



 ---



 件のテッドは呼びつけたコロノラ=バージレモに最後の指令を伝える。


「…約束しよう。

 この契約上で小生が君に頼むのはこれで最後だ。

 主の許可も得た。

 君の死神の鎌も雷帝の鞭も好きに持っていって問題ない。

 …どうせ戦いからは身を引くのだろう?」


 全てを見透かされているようで気に食わないコロンだが…

 全てがその通りなので反論はできない。


「で…?

 アタクシは何をすれば良いのかしら?」


 薄暗い笑みを浮かべる科学者テッドは地図を広げて目的地を指差す。


「エルライエリの精霊祭。

 あのゴーレムを動かすのに必要な部品がそこにあるんだよ。

 とある鬼の首が欲しいんだ。

 …最悪ツノだけでもいいよ。

 それでこの契約は終了だ。

 精霊の名において小生は二度と君達に関わる事はない。」


 いくら『客人』といえど精霊の決めた法則には逆らえない。

 それを踏まえてコロンは問う。


「『小生は』と言いましたわよね?

 貴方の仲間全てと精霊の前で決定していただけるかしら?」


 怯むこともなくテッドは、

 むしろ感心して言う。


「ああ…

 流石流石。

 慎重なのは素晴らしい事だ。

 面倒臭いな…

 コロノラ=バージレモが認める仲間とやらの範囲で願う!


 …それで良いかな?

 迂闊な死神様。」


 そして、

 各地で少しずつ歩みを進める影の中、

 ゆっくりと時は針を進める。

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