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そして、俺は〇〇になりました。  作者: Foolish Material
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そして、暗躍する者達。その1

「何よ~閉まってるじゃない!

 こんな大きな街でこんな時間にやってないなんてダメでしょう?

 ほら、

 あっちのお洒落そうなお店なんてどう⁈」


 時間は夕暮れ時、

 夜をメインとする店達が花開く時間帯である。


 金の無い冒険者御用達のチェーン店『ゴムール』の前で、

 元々乗り気では無かったササ=ギュルコーナは別の店に行く事を提案する。


「まぁ開いてないんじゃ仕方ないな…

 しかしあの店は…この身なりじゃ入りづらく無いか?」


 ササが指差す店は薄暗くなり始めた街中でも、

 魔道具の光で上品に自己を主張している。

 オジサンであるピッピにとっては入りづらくもあり、

 例え店側や他の客が気にせずに受け入れてくれたとしても…

 その場の居辛さで気が休まりそうでは無い雰囲気だ。


「ははは!

 オレは何処でも大丈夫だ!」

「へいへい、

 見習いでも勇者様は何処でも持て囃されるもんな…。

 まぁ、

 こうなったらそれぞれ好きで良いんじゃないか?

 年寄りはそこらの気楽な屋台で引っ掛けて帰るさ。

 朝にはちゃんと宿に戻って来いよ若者達~。」


「食事をしたらスグに帰るわよ!」


 デリカシーの無い言葉に顔を赤らめるササはムシャクシャする。


「どうしたんだササ?

 ピッピが行ってしまうぞ…

 着いて行かなくて良いのガッ!!」


 見事な肋の内からえぐる肘打ちにリリは呼吸の仕方を思い出そうと沈黙する。


 そこへ『パンパン!』と手を鳴らす音が響く。


「待つっしょ、そこの旅人諸君!

 そこらの屋台はボッタクリ…

 そっちのお店は雰囲気だけの激まず料理っしょ。

 …今ちょっとショータイムのリハーサルだけど…

 今日は初御目見の子達だから見て欲しいっしょ!

 話つけるし料理も出せるっしょ♪」


 突然現れたタヌキっぽい獣人は三人を改めて纏め上げて押し返す。


「ななななんなの?

 アタイはお洒落なお店に行きたいの!」


「わかったっしょ!

 じゃ男性二人だけ貰うっしょ!

 格安絶品料理でもてなすっしょ♪」


 あっさりと切り捨てられたササは一瞬だけ途方に暮れるが…


「ちょっとアンタたち!

 そんなキャッチに引っかかって良いの?」


 若い女の子に手を引かれて満更でもないピッピは、

 『逆にどうした?』という顔で応える。


「いや、

 どう考えても精霊に認可されたチェーン店の方が安全だろう?」

「ははは!

 ショーのリハーサルまで見せて貰えるなら最高だろう!

 またオレの見識が広がるぞ!ははは!」


 テンションマックスのリリに引き気味のピッピは、

 そっとササの背に手を添えて促す。


「入れてくれるなら良いじゃないか。

 気に入らなければスグにあの店に変えればいい。

 選択なんて間違えたらやり直せば良いんだよ。


 君は考え過ぎだ。

 少しはリリを見習うといいと思うよ。」


 カチン!ときた。

 それでもササは睨むしか出来ない。


「あ…貴方がどうしてもって言うなら様子だけでも見てあげても良いわよ。

 ただし!

 この店は貴方たち二人の奢りね!

 店を変えるとしたらそこからは割り勘だわ!」


 何をムキになっているのか分からないピッピは、

 『はいはい、それで。』とササの背中に添えた手で軽くエスコートする。

 お洒落な大人の世界に憧れているだけのササは、

 その無骨だが紳士的な振る舞いにしどろもどろしながらも気丈さを振る舞う。


 そんな二人を振り返りながら見てリリは思う。

(ピッピは強敵だぞ、ササ!

 オレは応援するからな、勇者として!ははは!)

 

 先を歩く二人。

 カニャミ=ドールドートはやたらとテンションの高いままの男に訪ねる。


「御関係は複雑っしょ?」


 鼻で笑い返すリリは頷き小声で耳打ちする。


「親目線の男と、

 大人に憧れる少女の良くあるすれ違いの物語さ。

 …ははは。」


 後方でいがみ合う二人のやり取りを幸せそうに聞いているこの男を、

 カニャミは哀れに思った。

 

(これだから異性の入るパーティは嫌っしょ!)


 真面目そうに考え込んでいる彼女を見たリリは一呼吸して…


「ぷっ!

 君は考え過ぎてるんじゃ無いかな?

 オレは名声を得て酒池肉林の園を求めている!

 ただの俗人だよ。

 友人としてあの二人をどうにかしたいと思っているだけだよ。」


 頭がいいのか悪いのか?

 邪気を感じさせないこの男をカニャミは胡散臭く感じるが…

 暫くして一つの結論に辿り着く。


(…これは『同族嫌悪』っしょ…。)


 自分に納得したカニャミは、

 辿り着いた店の防音障壁が張られた扉の一枚目を開けた。



 ---



 粗方片付けが終わったギルドの食堂の片隅。

 目を覚ましたリアは懇願する。


「…水~~~…、

 お水をちょうだい~…樽で…。」

「まったく…

 あの様な邪悪な物を呑むからだ。」


「シュミカ~…。

 シュミカは何処~…?」

「冒険者用の浴室で、

 アンタのヨダレを洗い流してるっすよ。」

 

 カディスとノーイラは、

ツッコミ所満載の竜人の介護をしながら溜息をつく。


「付き合ってらんないんで、

 自分は店に戻るっすよ。」


 ノイは立ち上がって背伸びをする。


「なんだ、

 今日は歌わないのではないのか?」


「それでも出来る仕事はいっぱいあるんすよ。

 歌わないなら尚更他で頑張らないとっすよ。」


 カディスもゆっくり立ち上がり、

 辺りを警戒する。


「まだこの辺りは物騒だ、

 送って行こう。」


 先程ライゴールがもたらした情報は、 

 既にノイにも共有してある。


「いいっすよ。

 自分らの先祖さんが招かれたのなんて、

 何百年も前っすよ。

 名前は残ってるっすけど…

 もう血も薄れて、

 半分以上が自分みたいな『非発現者』なんすから。


 まだ寝てるルキリ姉さんを頼むっすよ。」

 

 二人は椅子を並べて横になっているルキリを見て笑う。


「では残っている兵達を付けよう。

 店の売上にもなるだろう。」

「それなら大歓迎っす!

 お願いするっすよ~♪」


 食堂の片付けを手伝って残っていた兵士達に声をかけたカディスは、

 労いの意味も込めてノイとの同行を指示する。


「パナルマ殿にもよろしくな。」

「了解っす!

 カディスさんもまた是非!」


 ---


 増え始めた冒険者達に紛れて、

 カディス達を探る男達が居た。


「異端者め…。

 竜人まで懐柔しているのか。

 いちいち鼻につく『客人』どもが!」


 長くつづく『天魔会』。

 彼らの中に、既に大志などは残っていなかった。

 今となっては殆どの者が、

 『ただ気に食わない』と言う理由で群がった、

 ゴロツキの集団である。

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