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そして、俺は〇〇になりました。  作者: Foolish Material
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そして、本当に雷鳴は轟く。その5

 意識が遠のき自分の身体がどうなっているのかすらわからない。

 アサヒは水中で微かにピー子の叫びを聞いた気がした。


 水上ではエイナとユリィが慌てている。


「お姉さん!

 早く雷でやっつけてよ!」

「ダメダメ~!

 アサヒさんも一緒に感電しちゃいますよ~!」


 エイナが水に飛び込もうとした時…


『ワシが何とかしてやるから特大のをぶち込んでやれ、

 人間の女よ!』


 そう二人に声を届けながら集まる黄金色の光は、

 大きな竜の形をとって水中に飛び込んだ。


「お姉さん早く!」

「緊急モード!我は『雷帝』以下略!」

 

 現れた巨大な雷球と共に雷鳴は轟き、

 水中に投げ落とされる。

 それは水底に潜んでいたボスモンスターを気絶させて水面に浮かせた。


「…残念、

 イカじゃなかったわねぇ…。」


 それは長い触手を多く持ってはいたが、

 イソギンチャクの様な花の様な…


「うう~~ん…

 美味しくは無さそうだねぇ…。」 

「そうですね…

 あ、そういえばアサヒさんは⁈

 何とかするからって、

 慌ててついやっちゃいましたけど…。」


 二人が水面を探しても何処にも浮かんではいない。


『無事だ、心配するな。』


 そう声が頭に響くと…

 水中から翼や首や尻尾を丸めて球体になった、

 琥珀色の大きな竜が浮かんで来て宙に浮く。


 ユックリと身体を開くと中にアサヒとピー子が抱き抱えられている。


「アサヒー!大丈夫ー?」

「ピー子ちゃ~ん!」


 ユリィの声にピー子はプイッ!とそっぽを向くが、

 アサヒは気を失っている様だ。


「あらぁ~、

 嫌われちゃいましたぁ~?」

「…当たり前だよ…。

 で、君は誰さぁ~?」


 そうエイナが竜に声を掛けた瞬間、

 意識を取り戻したイソギンチャクの触手が二人に襲い掛かる。


『お前はいいから一度地に帰れ!』


 同時に放たれる竜の口からのユリィと同様の雷、

 エイナの軽い裏拳から飛ばされた波動、

 追い打ちのユリィの更なる雷撃でイソギンチャクは弾け飛んだ。


「ピーぃぃ♪」


 勝ち鬨を上げるピー子とアサヒを二人の立つ足場に降ろした竜は、

 やれやれ…といった感じで別の足場に鎮座する。


「貴方は…琥珀竜の成獣ね?

 雷撃から彼を守ってくれてありがとう御座いました~。」


『…それよりも、

 その『彼』は良いのか?

 多少はダメージは有ると思うが…。』


 ハッ!としたユリィは慌ててアサヒを介抱するエイナに目を向ける。


「ねぇ、

 お姉さん~…!

 人工呼吸なら教わったから出来るよ⁈

 早くしなきゃだよね?」


 エイナは教わったのだろうが、

 状況に翻弄されてアタフタしていた。

 これはダメだ…と悟ったユリィは急いで人工呼吸の為の姿勢をとる。

 胸骨圧迫を…と思ったが、


「ちょっと待ってエイナちゃん、

 おかしいわ?」

「え?

 アサヒ死んじゃったの⁉︎」

「普通に寝てるだけだわ~?」


 その二人を眺めていた竜は呆れたようにいう。


『ワシはこのダンジョンの主に呼ばれてここに居る故、

 其奴が『客人』なのも知っておる。

 故に不意や許せん事を仕出かさない限りは守る義務がある。

 『程々に』程度だがな。』


 二人は顔を見合わせて納得した。

 『ああ、アサヒは『客人』だった。』と…

 その時の二人の中ではそれで辻褄は合ってしまっていた。


 しかし竜は少しだけ不思議だった。 


 (そういえばこの人間…

  慌ててはいたが、

  普通に水中で呼吸をしておったな…?

  人間共もまた厄介な魔法でも開発しおったのか…?)


 ---


 ティルスガルの近郊。


「さてと…

 これで大丈夫でしょう。

 暫く少し痛みは残るかもだけど…すぐに良くなるわ。」


 ササ=ギュルコーナの治癒魔法で怪我を癒された馬のギルは、

 ピーニゲレ=ピイラギィネの事が気になっていた。

 三人とも優しく介抱してくれて信頼できたが、

 この男の匂いは覚えがあった。

 少し前まで一緒にいたギリアの匂いが微かにする。


「おやおや、

 うちのリーダーは動物には好かれるなぁ!

 ははは!」

「じゃあ、お前らも動物だなっ⁉︎

 …良いんだよ、

 もうこんな歳だし人間は諦めたよ…。」


 …リリリー=コンキリシャは、

 優しく馬に頬擦りする男との間に薄い壁が見えた気がした。


「い…いやいやリーダーぁぁ!

 長生きの亜人や無害の魔物族だって気の良い奴等は居るさぁ!」

「…やめなさいバカ勇者…

 このクエストで助けてきた集落での反応を見たでしょう?

 ていうか、あんた一人で目立ち過ぎなのよ!」


「…動物は良いよなぁ~、

 見た目で判断しないしなぁ~…。」


 黄昏れるピッピに目をやったリリは気付く。


「あれ?

 ピッピ!

 そいつ何か言おうとしてるぞ?」


 体力の戻って来たギルは、

 目指す場所に連れて行ってくれそうなこの旅人達になら任せられると思った。


「『ピッピ』って呼ぶんじゃねぇ!」


 リリの言葉にササも気付く。


「その皮袋の中を見せたいんじゃない?

 どう考えても状況がおかしいもの…。

 どうせ向かう先だし、

 ギルドに任せるべきだわ。」


 好奇心の誘惑に勝てないのも勇者の務めと言わんばかりソロソロと近づくリリ…

 その挙動はともかく、

 この男の仲間ならと信頼の心を寄せるギルは抵抗せずにその袋を奪われて見せた。


「どれどれ…手紙だな。」


 無神経にそれを目の前に広げて目を踊らすリリ。


「…おい、

 お馬さんよ~、

 大切なものだろう…勝手に読んで良いのか?」

 

 穏やかな表情でピッピに頬擦りするギルは彼らに託すと決めていた。


「そうか、

 なるほどそうだった!

 オレはこの国の字が読めん!

 頼むピッピ!

 ははは!」


「とんだ勇者様だな!

 そういえばそうだったよ!

 貸せっ!」


 その手紙を受け取ったピッピはまずギリアの名が有る事に驚き、

 その内容にも驚愕し…

 宛名がない事にも理解して背筋が凍った。


 何故ならその紙に捺印されていた紋章が西の大陸、

 『竜人帝国レイヴン』の帝国章だったからである。 


 同時に、

 常に辺りを警戒し続けているササは異変に気付く。


「何か…まだまだ遠いし多くは無いけど近づいて来るわ。

 その子を撃った奴らかも…?

 何が書いてあったの?それ。」


 パン!っと顔を叩いたピッピは力強く立ち上がり、

 ギルが走れるのか様子を見る。


「向こうに気付かれてないなら…とにかく逃げよう!

 『本物の勇者』案件だ。

 ティルスガルのギルドに保護してもらわんと…

 ここで旅は終わるぞ!」


 人間よりも感覚の鋭いギルは状況をすでに把握し、

 リリもこの目をしたピッピには絶対に従いギルに跨がる。

 それ故に彼こそが勇者パーティのリーダーであるのだから。


「この子なら二人はいける!

 ササは乗って相手との距離を測りつつ、

 この子に補助魔法を!

 後方はワタシが警戒するから急ごう。」


 …結局は何事も無く一行はティルスガルにたどり着き、

 ギルドへと駆け込む。


 本当のところは、

 近づいて来ていたのは唯の冒険者の一行であり、

 手紙を見て急いだ事だけが正解であった。


 何故なら、

 人間よりも感覚の鋭い筈のギルは…

 背中の主人に導いてもらえないと道に迷ってしまうポンコツだったからである。

 それでもこの出会いに辿り着けたのは僥倖であった。

 なお、

 実はゲート近くの集落からは誰もギルを追って来てはいない。


 何故なら、

 今回の『天魔会』の騒動の発端はこの街からなのだから。

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