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そして、俺は〇〇になりました。  作者: Foolish Material
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そして、雷鳴は轟く。その4

 大きな胸を揺らして走るユリィネル=ソーシャイハは、

 有り余る魔力を惜しみなく垂れ流して明々とダンジョン内を照らす。


「んもぉ~!

 小さ過ぎて探知できないわぁー…。

 ただでさえ精霊さんは竜種を庇いがちだし…

 怪しい者じゃないんです~!

 出てきて下さい~!

 ちょっと羽根を何枚かむしり取りたいだけなのー!」


 物騒極まりない呼び掛けに応える者は居ない…。


「居るのは分かったんだから…

 テッドさんの不思議アイテム、

 使ってみちゃいましょう♪」


 重装なローブのポケットを探り探り奇妙な小道具を選定し、

 ユリィは一つのアイテムに望みを賭けた。


「『アイツコイツあっちかこっちかコイン』~♪」


 明るく独り舞台を演じながら…

 手の中にある小さなコインを見ながらユリィは深く溜息をつく。


「…こんな物で未来が切り拓ける訳がないでしょう!

 変なマッドサイエンティストめ~!

 辞めちゃいましょう!

 契約は今回の任務で終わりです!

 リアお姉様の事は美しい思い出して…

 コロンちゃんと静かに暮らすのも悪くないですよね…♪」


 何かしらの魔力の込められたコインを床に叩きつけ、

 何かしらの決意を固めたユリィネル=ソーシャイハは、

 改めて慎重に魔力を抑えながらその階層の探索を始める。




「あ!

 そういえば客人の兄ちゃん…名前なんだっけ?

 お父ちゃ…親父が気に掛けてたけど、

 居ないけど…死んじまったのかい?

 弱そうだったからルキリも心配してたんだよ…。

 …どうなんだい?

 覚悟して聞くよ…?」


 ギルドの食堂に同席していないと言う時点でルキリは覚悟を決めて訪ねる。


 リアとシュミカはテーブルの下で強く手を握り締め合いながら言う。


「ん…アサヒは大丈夫。

 新しい仲間とダンジョンで遊んでる。」

「きっとすぐに根を上げて帰って来ると思うわよぉ~♪」


 二人は爆笑したくて仕方がなかった。


『名前すら記憶して貰えてないとか…

 どんな哀れなピエロだよ⁉︎』

 …と。


 もちろん記憶改竄の副作用の一つではあるのだが、

 それは些細な物であり、

 改めて対面すれば修復される程度の記憶である。


 元より記憶操作など関係ない。

 一目惚れで密かにカディスを好いていたルキリ、

 リアにゾッコンだがリア本人から拒絶されているカディス。

 ルキリに恋愛対象なのかも曖昧なアサヒ…


 愉快なネタを手に入れたリアとシュミカは邪悪な笑みを浮かべる。


 もしかしたらより辛い思いをさせてしまうかもしれない…

 その罪悪感からクーロが気を利かせてルキリの想いをカディスに伝えてやった行為は、

 それとは真逆に使われようとしていた…。




 アサヒ達…

 と言うよりエイナの快進撃は続き、

 あっという間に先程までユリィが居た階層のボス部屋まで辿り着いた。


「さっきまで誰か居たのかな?

 まだボスが復活してないし…

 なんかいい匂いがする~♪」

 

 アサヒには匂いまではわからないが、

 他では綺麗な部屋からの演出で現れるボス部屋とは違い、

 まだ微かに砂埃が舞っている。


「このまま進んじゃダメなのかな?」


 んー?と考えるエイナは先に進む扉の方へ向かう。


「多分ダメだと思うよ~。

 ちゃんと倒さないと精霊さんが通してくれない筈だから…」


 と言いながらエイナは全力で扉を殴りつけた。


「ほらね、

 びくともしないでしょ。」


 そう言って振り返ったエイナの笑顔は引き攣っている…


(…痛かったのかな…。)


「もう少ししたら部屋も綺麗になって、

 ボスが生えて来ると思うよ…。

 絶対に許さないから!」


「生えて来るって…」


 それは良いとして、

 自業自得のトバッチリを受ける事が決定した状態で生えて来る…

 そんなボスをアサヒは哀れに思う。


 そうこうしていると、

 何処からか風が吹き込んで来て空気を洗った。

 所々にあった壁の傷などもいつの間にか綺麗になっている。


「ひひひ…

 何処から生えるかな~?」


 その空気を感じたのか…

 ボスはなかなか姿を現さない…。


(…何でボス部屋なのに、

 入り口にも扉を作っておかなかったんだよ…

 可哀想に。)


 やがて覚悟を決めたのか、

 エイナが部屋の片隅にいる間に対角の床が一気に盛り上がる!

 

「続けての瞬殺はいやなので、

 ほどほどでお願いします!」


 人型の造形を成そうとしたそれは、

 エイナが振り返りながら放った拳の拳圧によって粉砕された。


「…せめて名乗りくらいはさせてあげようよ…。」


「ふーんだ!

 あんなのの名前なんか興味ないものっ!」


 断末魔をあげることすら許されなかったボスが崩れ落ちると、

 先程はびくともしなかった扉が勝手に開く…


(…もういいから早く行ってくれって事かな?)



 ユリィネル=ソーシャイハは、

 これからアサヒ達が向かう階層の探索を続けていた。

 その階層は岩肌剥き出しの洞窟の様な作りで、

 いたる所に人一人通れるくらいの穴があいている。


「ん〜、

 何かの魔物の巣かしら〜…?

 魔物はいいとしても…

 ひとつひとつ見るしか無いわね〜…。

 一人で来るんじゃなかったわ〜…。」


 今更ギルドに戻ってメンバー探しなどしても、

 その間に目的の幼生体は更に行方をくらますだろう。


 しかし存在している事は確認できた。

 後日探索隊を組んで来ても良くはある…。


 しばらく考えたユリィは、

 とりあえず出来る所までと決めて…

 手始めに最も近い穴に、

 その柔らかく引っかかりやすい身体を潜り込ませた。

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