そして、雷鳴は轟く。その2
もちろんリアとシュミカはゴムールで状況の説明は聞いていた。
それでも…目の前の本物のルキリ=スターニーに、
偽物の自分達を演じて見せて行かなくてはいけない事に少しの躊躇がある。
それでも…二人は良かった。
生きて再会できた…ただそれだけで。
「感動の再会の邪魔などの無粋な真似は出来んな。」
カディスがギルドを訪れた本題は家族との再会ではない。
身を翻して受付の中央に設けられた祭壇の前に立つと、
一礼して片膝をつき頭を垂れる。
「先刻こちらにサラシェという勇者が訪れたと思う。
その者の身代わりとなって、
もう一人の勇者が我の元へ傷つきながらもたどり着いた。
その者の加護を願いたく参じた次第。
この街の掃除…我らにも手伝わせていただきたい。
隣人であり友人である精霊殿!」
ガトスとダトスに護衛された傷だらけのライゴール…
クーロに治療されていなければ絶命していた筈の彼は、
それでもガタガタな身体を押して一歩前に進んでカディスの後でひざまづく。
「小生の知り得た人生の記憶の全てをお捧げ致します。
『天魔会』…
彼らは『客人様』の御子孫までも標的とし始めております…。
この周辺の天使教はそちらに組みする勢力の様です。
扇動する魔王までは知り得ませんが…
重要人物と思われる内の一人の名は
『テッド=ケヴィンス』シーティスカヤの賢者で、
『愉悦種』が招いた『客人様』の様です。」
当然カディスが頭を下げた時点から結界で一同は外界から切り離されている。
そのまま上階へと転送され、
目を開けると殺風景極まりないベッド一つの部屋である。
そのベッドで寝息を立てるサラシェを見て、
ライゴールは身体の痛みなど忘れて静かに嗚咽を抑えるので精一杯であった。
「良かった…無事で、
ありがとうございます…。」
ライゴールはそのまま意識を失って倒れ込んだ。
「そろそろ慣れてきた?
アサヒ~♪」
気がつけば命の保障のある階層などはサラッと飛ばして…
階層ワープ等も経験して15階層である。
アサヒが階層を理解出来るのは、
精霊人形から渡された初心者向けの『魔法のガイドブック』のお陰。
その他に教わったのは、
・各階層には必ず回復の泉がある。
・セーブポイントの様な特別な部屋。
キチンと達成の証さえ残せば、
そこの祭壇からの挑戦の再会や集めたアイテム等を受付へ転送、
保管や換金もやってくれるらしい。
・あとはガイドブックの20階層までのマップ。
・下へ潜れば潜る程貴重品は手に入るが、
敵も強くなる…当然で有る。
・死への救済処置は無い。
「無理無理!
少しは戦わせてもらってるけど…
なんかな~…」
エイナは人差し指を口に当てて少し考え込んでから提案する。
「ギリアっちが大丈夫って言うんだから、
スジは悪く無い筈なんだよね…
ちょうど近いみたいだし、
このエリアは泉とポイントが一緒みたいだから休憩しようよ♪」
遊びとなるとリーダーシップを取れる良くできた子、エイナ!
アサヒは喜んでそれに従った。
共に冒険に出る筈であったレイヤとクルセイト側から挑戦し、
システムを知り尽くしているエイナに任せっぱなしであったアサヒは…
初めてのゲームっぽいエリアに辿り着く。
(思ってたのと違う…)
神々しい空間を想像していたアサヒが入室した小部屋には…
入った途端に点灯する小さな蝋燭に照らされたタライ程の小さな泉、
その他にはメモ用紙と筆記用具が置かれた机と物を置くスペースが有る祭壇。
「がっかりしたでしょ~?
ひひっ♪」
イタズラっぽく笑うエイナはクルリと回ってレクチャーを始める。
「上の方だとこんな感じ。
使い方を教えるね?
まず泉、
傷や呪いなんかは程々に回復するけど万能じゃない…だったかな?
お腹は減るからココに住もうとしちゃダメ!」
アサヒはレイヤがエイナに何を伝えようとしたのかが、
手に取るように伝わった。
(奴も振り回されてはいたんだな…ザマァ無い!)
「下の方に行けば行くほど豪華になって行くから、
楽しみにしててよね♪」
自分が同行しているせいで先へ進めないエイナへの申し訳なさもあったが、
エイナは先導するのを楽しんでいる様なので…
うんうんと頷きながらアサヒはエイナ先生の微笑ましい授業に耳を傾ける。
「後この祭壇!
こっちのメモの『換金』にマルして~…」
すぐに適当な物が見当たらなかったエイナは足元の小石を拾う。
「取り敢えずこれでいいや。
メモと一緒に祭壇に置くでしょ~?
で…
『アリシエファミリー』から!」
バン!っとエイナが祭壇を叩くと、
パッと光を放って小石とメモは消滅した。
「これで上に戻ったら鑑定してくれたお小遣いがもらえるよ♪
助けて~っていうのも送れるから、
ボクと逸れちゃったらスグに使ってよね?」
良くあるアニメの様にレベルアップの概念が有るのなら、
暫くはこの付近で経験値を稼ぎたい所であったが…
それでもレベルマックスの仲間が居るだけでもマシかとアサヒは諦めた。
(絶対に逸れちゃダメなやつだ、これ!)
そのポイントからは少し下層。
依頼の為に『琥珀龍』の幼生体を探すユリィは途方にくれている。
「んもぉ~…
昨夜のお楽しみが無ければ挫けてたわよ~…。
幼生体は警戒心が強いから簡単じゃ無いのはわかってましたけど…
ひとりぼっちは寂しいなぁ…。
コロンちゃ~ん!
リアお姉様ぁ~!」
薄明かりしか無い長い通路に向かって叫ぶユリィネル=ソーシャイハは、
返事の無い空間にトボトボと歩みを進めた。




