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そして、俺は〇〇になりました。  作者: Foolish Material
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そして、雷鳴は轟く。その1

 ほろ酔いで恐怖感が少し麻痺しているアサヒは、

 ピョンピョン跳ねて懇願するエイナの可愛らしさに負けて同行する事となった。


 もちろんリア達も誘ったが…


「いやぁよお、

 面倒臭いぃ~!

 あのダンジョン管理者の精霊人形は気に食わないしぃ、

 もうあんな穴倉探索は卒業したのぉ~!」

「ん…見ての通り僕は囚われの身…

 この貢物は片付けておくから楽しんで来るといい…。

 晩御飯までには帰ってくるんだよ~…。」


 いつの間にか流されるままのアサヒは、

 エイナと共に受付の順を待ちながら考えていた。


(そういえば…

 サラシェさんどうしたんだろう?)


 騒ぎになっていないと言う事は大丈夫なのであろうが…

 共にこの街を離れると言っていたライゴールの姿を見ていない事も気になった。

 理由が有って別行動をしているのだろうがアサヒがそれを知る由もなく…

 少しの時間の同行ではあったが、

 気の良い二人とまた無事に再会できる事を祈るばかりだ。


 順番はすぐに回って来て、

 アサヒを見た初対面の受付嬢は何かを感じた様に強張って目を逸らし…

 無言の笑顔で右手で指し示して『あちらへ…』と促すと、

 『次の方どぉぞぉ~』とアサヒを無視して職務を続けた。


(なんだ?

 悪意は感じないけど嫌な感じだな…。)


「あっちだってさ、

 アサヒ~。」


 そんな事は気にしないエイナはアサヒの手をとって『そちら』へ向かう。

 その瞬間に納得した…

 『ああ、まだ自分は世界から見たら客人でしか無い。』のだと。


 先程同様に白い空間に包まれたアサヒの前に、

 先程同様の受付嬢が溜息をついてテーブルに肘をつく。

 どうやら面倒な客担当のようだ。


 エイナは結界内を珍しそうにキョロキョロしている。


「また貴方ですか…。

 今度はなんです?

 その子は迷子ですか?ではお預かりします。

 お引き取りを。」


「いやいや…この子は身内でして…、

 よく分からないけど『エレメンタルダンジョン』…?

 とかに入りたいって…、

 あ、こう見えても強いんですよ?この子!


 …先程のパーティ名の件もこの子の悪戯でして…。

 ほらぁ、エイナも謝って…」


 よく分からない様だが、

 エイナはクルッと回ってテヘっとして見せる。


「か、かあ…⁉︎

 か、可愛い!」


 受付嬢は顔を覆ってクネクネと身体を揺らしてメロメロのご様子…。


「ま、まぁ…名前の件は解決してますし、

 大丈夫です。」


「ねぇねぇお姉さん!

 本当は『団』がいいんだよ~!」


(まだ拘ってたか…)


 受付嬢は『だから言ったじゃ無いですか!』と言う目をアサヒに向ける。


「ん~…お嬢ちゃん、

 一度決まった名前を変える手続きって面倒…

 時間がかかっちゃうの~。

 次の街のギルドとかでならきっと直ぐにやってくれると思うから、

 それでどうかな~?

 今の『ファミリー』も良いと思うわよ~?

 そちらの方の世界の言葉で確か…

 『家族』って意味よね~?」


 正解ではあるが、

 様子を見る限り…彼女は口から出鱈目で言ってる様であり、

 アサヒに話を合わせる様にと目配せしてきた。


 一度『団』を認めると、

 気がついたら『ちんちん団』になってしまいそうな気がしたアサヒは…


「そうだよ。

 本当にそういう意味。

 しかも便利な事に血の繋がりよりも、

 心や魂の強い繋がりを大切にする言葉だよ。

 俺たちは『ファミリー』だ。」


 何だかパァっと目を輝かせるエイナはそれを気に入ってくれた様だ。


「『ファミリー』…良いね!

 ボク達『ファミリー』なんだね⁈」


 アサヒは笑顔でエイナの頭を撫でながら、

 一時の利害が一致した受付嬢に後ろ手で親指を立てて、

 上手くいった…と合図する。


 それからエイナは何だか嬉しそうにクルクル回っている。


「で…

 そうそう、ダンジョンでしたね。

 貴方は初めてで?」


「そうですね、

 外の野生のダンジョンは依頼なんかで普通に潜ってましたけど…

 ルールのある所だと聞きました。

 あの子は故郷で遊んでたみたいなので…

 一応経験者みたいですけど。」


 ニッコリと笑うお姉さんは、

 両手を伸ばして言う。


「入場料二人分、お子様割引はございません。」


 


 ざわめき立つギルドの食堂。

 そこは夜間警備等の任務や依頼を終えた兵士や冒険者、

 これから冒険に出発する者達で溢れかえって来ていた。


「ここに居るだろうとは思ったが…

 やれやれ朝っぱらから豪快であるな、

 リア。」


 ポンと肩に置かれた手を軽く払い除けたリアは、

 シュミカを抱き締めたまま、

 その男を無視して他の冒険者達との話に夢中である。


「シュミカ殿…いや、先輩ぃ~!」


 膝を突いてシュミカにすがるカディスは…

 キャラバンではリアを追って入った為に、

 その様な立場であった。


「はは…あはははは~!!

 お前達!

 本当に…本当に生きていてくれたんだね⁉︎

 ああああ!

 良かった!

 ルキリはとても喜んでいるよ!」


 その声にリアは立ち上がり、

 滑り落ちたシュミカも信じられない様な物を見る目でその声の主を見つめる。


 喜びと驚きが入り混じった感情でゆっくりと歩み寄るリアとシュミカ。

 満面の笑みで再会の涙を流すルキリ=スターニーは、

 それを迎え入れようと両手を広げて言った。


「全く心配かけやがってぇ~!

 ルキリお姉様が迎えに来たんだからもう大丈夫、

 早くキャラバンの親父達の所へ帰ろうさね!」


 二人は強張った表情で目だけをカディスに向ける。

 その視線を受けたカディスも…

 眉を顰めて唇を噛み締めながら目を伏せた。




 アサヒは傍で退屈そうにクルクル回るエイナと共に、

 食堂でリアが言っていた精霊人形からの説明を受けていた。


 岩を組み上げて造られた様なその身体は、

 正に地の精霊のイメージそのままである。


「…とまぁ、

 無理さえしなければ大丈夫って事なんだけど…

 君達冒険者は無茶をするからねぇ。

 我々は楽しんでもらいたいだけなんだけど…。」


 表情からは感情は読み取れないが、

 その口調から憂慮して悩む気持ちが感じられた。


「んもぉ~!

 アサヒの事はボクに任せてもらったんだから、

 僕が教えてあげるよー!

 どうせ戦うのはボクなんだし、

 アサヒに危険は無いんだからぁ!」 


 世界の深層で全てが繋がっている精霊迷宮。

 その管理者は過去全ての挑戦者を記憶しているらしい。


 もちろんエイナの実力もわかっているが、

 エイナの精神的未熟さも彼にはわかっている。


「そうだねぇ…

 晩御飯は家族と食卓を囲む予定なんだよね?

 じゃあ、

 そんな君達にオススメのアイテム!

 タイマー式の強制帰還結界のネックレスだよ~。」


 突然の路上販売が始まった。


「君…アサヒ君だっけ?

 記憶したよ。


 装備した者に触れている地上の者達が、

 設定した時間になったらギルド内の…

 『とある個室』に転送して貰える素敵アイテム!」


「それは良いですね…

 てか『とある個室』ってなんですか⁈」


「そりゃぁ…ねぇ、

 いきなり公共の場に酷い死体が戻って来ても皆んなが困るでしょ?」


 いい加減に酔いも覚めて現状を把握したアサヒは、

 踏み入れてはいけない境界線をすでに越えている事を理解した。 


 

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