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そして、俺は〇〇になりました。  作者: Foolish Material
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そして、エイナは潜りたい!その4

 アサヒは途方に暮れる。

 現状はとりあえず何も出来ない。

 

 ルキリ姉さんの事を放っぽって行けないし…

 自分達に出来ることは今の所何も無い。


 『家族達の元に帰る。』

 その目的は潰えた為、

 路銀を蓄える事くらいしか思いつかないが…

 路銀の当ても、

 実は十分にあった。


 ギリアからの生活費の補助はもう隠せないが、

 引き出し制限もあるしそれに溺れる事は無い。

 食費と宿代…リアの毎日の酒代から少し足がでれば良い位に見事に設定されている。


 問題はクルセイト王から渡された『石』だった。

 先程、鑑定窓口に提出しようとしたらスグに突っ返された…。


 慌てた受付嬢は辺りを見渡した後に早口の小声で…


「そそそそんな物こんな所に持って来ないでください! 

 こんな街のギルドなんかで鑑定できる物じゃありません!

 何処かの王室お抱えの鑑定士にでもお願いしてください!

 見なかった事にしますから!

 …もうやだぁ~。

 こんなの口滑らせたら精霊さんに消されちゃうよぅ…。」


 椅子の背もたれに身を投げたその受付嬢は天を仰いで反ベソをかく。


(こんな石ころが⁉︎)


 どうやら本物であるらしいその『石』の事が奴等にバレたら旅どころでは無い。

 アサヒ自身も欲が無いわけではないが…

 先程の受付嬢を見る限り、

 簡単に欲に走って手を出してしまったらヤバい事になりそうだと身震いした。



 そんなこんなでギルドの掲示板の前、

 カディス達からの連絡を待ちながら小銭を稼いで自らも鍛える!

 アサヒは独りそんな気構えでいたが…字が読めない。


 リアは併設されたカフェスペースで酒を飲み始め、

 シュミカとエイナは面白そうな依頼を品定めしている。


(…たまには俺もリアに付き合うかな…)


 と、諦めたアサヒは売店に向かいながら燥ぐ二人に目をやる。


「あ!

 シュミカお姉ちゃん…これ行ってみようよ!」

「ん…素晴らしいセンス!

 これは絶対に僕達が受けるべき事案!」


 アサヒは…

 きっと碌でもないクエストに違いないと思いながら、

 『お姉ちゃん』と呼ばれるシュミカとリアを羨ましく思った。


(あの子のお兄ちゃんは『立神零也』だ。

 兄上は『ディルノード』さん。

 …俺は何なんだろう?

 ただの『引率者』…しっくりくるけど寂しいな…)


 そんな事を考えるアサヒは一つの疑問に辿り着く。


(ディルさんは第二王子…

 正当な王位後継者であるはずの第一王子は今どうしているんだ⁉︎)


 あの様なヌルい国で王位争奪の争いがあったとも考えられない。

 希少鉱石よりも文化の方で華を咲かせそうなディルが後を継ぐ。

 …それ以上考えようとしたが、

 アサヒはやめた。


(俺には関係ない。)


 エイナを託されはしたが…

 守られるのはコチラというパラドックスに納得した上での旅の筈だ。

 軽く首を回して深呼吸…。

 

 今日はいいや…と、

 売店に向かうアサヒの耳に騒つく受付の方からの声が届く。


「あら~…オマセさんねぇ、

 でもお嬢ちゃんに日帰りで『魔王』はダメよ~…」

「え~?

 ボクなら絶対いけると思うよ~⁈」

「そう言われても~…

 そもそも近場の魔王は討伐されたばかりだし…、

 あ、もし居たとしてもダメよ~…」


 冒険者の中では周知の事実。

 栄誉を求め(報酬に目が眩み)、

 自信過剰な冒険者が挑んで返り討ちにあう。

 そんなクエストがこの世には溢れている。


 例えばかつてアサヒ自身が短剣の鞘として利用された様に。


 売店の列に並びながらコチラを見ているアサヒに気づいたエイナは、

 その依頼書を持ってクルクル回りながら駆けてくる。


「ねぇアサヒ~、

 これシュミカお姉ちゃんがアサヒにピッタリって~!」


 そう言って差し出された書面の文字はもちろん読めないのだが…


「『高度な呪いと解除の実験の被験者急募!

  サポートは万全!

  最上級術士が開発した最新の呪いを、

  別の最上級術士が解除します!

  呪術の発展に興味の有る方、よろしくお願いします!

     

  なお、実験は特殊な閉鎖施設で最上級神官も同席、

  最悪の場合でもその場で浄化、消滅してもらえるので、

  意識を失ったまま他人に迷惑をかけることも絶対にありません!』 

 …だ、そうですよ。

 やめておいた方がよろしいかと…。」


 その書面を耳元でそっと優しく読んでくれた天使教のサラシェさんは笑みを浮かべる。


「特にお変わりはございませんか?

 アサヒ様。」


(もう貴女が天使でいいと思います!)


 アサヒはそう思いながらも、

 少し離れて舌打ちするシュミカを睨みつける。

 こっそり受けるつもりだった様だ。

 大きく手招き、

 エイナを呼び戻してメッ!てしている…。



「ありがとうございますサラシェさん、

 どうしてギルドへ?」


 辺りを警戒する様なそぶりを見せながらサラシェはアサヒの耳元で囁く。


「ちょっとギルドへ密告しに…です♪

 ライと私はこの街から離れて身を隠します。

 その為に精霊様の加護を頂きに来たんです。」


 その物騒な報告にアサヒは背を正す。


「教会で何か?」


「それは直接ここのマスターの前でしか言えません。

 急ぎますので、これで…

 ギリア様と再会なされたら、

 『あの時は助けてくださって、

  本当にありがとうございました。』

 と、お伝えください。


 …それとお客人様、

 くれぐれも気を抜く事なく…早めの旅立ちを具申致します。

 また何処かで会う時に全て話しますので。

 それではお元気で!」


 何かに気づいた様なサラシェさんは、

 慌てて上階へ続く階段の方へと走り去った。


 最後に『お客人様』と呼ばれた事で少しは予想がつく。

 『天魔会』…そういえば、

 カディス達が拠点を潰したとは言っていたが…

 そんな曖昧な組織がその程度で潰えるはずもなく。


 その背中を見守っていると、

 あからさまに怪しい追跡者がいたが…

 彼女が階段に辿り着くと、

 周囲に気付かれないタイミングで倒れ込んで消え去った。


 アサヒは改めてこの世界の理に戦慄して願う。


(…精霊様!

 あの受付の女性は悪くありません!どうか御慈悲を!)


 アサヒはあの『石』を、

 時が来るまでは決して人前には出さないと決めた。


「あれ?

 サラお姉さんは~?」


 一枚の依頼書を剥がし、

 ピラピラとしながらエイナがクルクル駆けてくる。

 

「あ~…

 ちょっと急いでたみたいだから行っちゃったよ。

 大丈夫、『またね』ってさ。」


「ふぅ~ん、

 きっとまた会えるよね、

 ボクあのお姉さん大好きなんだ♪」


 日常を取り繕う。

 それがこのパーティでのアサヒの仕事だ。

 本人が今それを理解して納得した。


 恐らくだが、

 あの追跡者を消去する事を精霊に命じたのはエイナだったのだと。

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