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彼女の想いが重すぎる……  作者:


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第54話

よく晴れた朝、俺と恋歌は別荘へと向かう支度を済ませ、玄関を出た。


家の前には一台の高級リムジンが佇んでおり、その傍らに愛瑠歩烈度の兄貴が立っていた。


兄貴は歩みを進めると、俺たちの前で深く、そして綺麗に一礼した。


「おはようございます。恋歌様、壮真様」


「おはようございます。愛瑠歩烈度さん。よろしくお願いしますね」


恋歌は愛瑠歩烈度の兄貴に、ペコリと軽く頭を下げて微笑む。


俺も負けじと元気よく挨拶を返した。


「おはようございます!よろしくお願いします!」


兄貴は俺と恋歌のキャリーバッグを軽々と持ち上げると、慣れた手つきでトランクに詰め込んでいく。


そして、兄貴は後部座席のドアをゆっくりと開けた。


その車内には、すでに和歌さんが腰を下ろして優雅に微笑んでいた。


「壮真くん。おはよう。ここ座って」


和歌さんは隣に座りなさいと、シートをパンパンと叩いてる。


俺は和歌さんに促されるまま、和歌さんの隣に深く腰を落とした。


すると、さっそく和歌さんは豊かなふくらみを俺の腕に押し付けるように抱きしめてきた。


「会うのは恋歌が退院した日以来ね」


「そうですね。今回もお世話になります」


「もう家族みたいなもんなんだから気を遣わなくていいわよ。ふふ」


「ちょっと、お母さん!壮真さんにくっ付きすぎですよ!離れてください!」


恋歌は俺の隣に座ると、俺の腕を抱きしめて、ぐいっと自分の方に引っ張る。


「減るもんじゃないし、いいじゃない」


負けじと、和歌さんも自分の方に引っ張り返す。


親子に挟まれながら、リムジンは出発した。


車内では、恋歌と和歌さんの熾烈な争いが繰り広げられていた。


「お母さん!壮真さんは私の未来の旦那様ですよ!離れてください!」


恋歌は俺の腕に胸を押し付けると頬を膨らませて、和歌さんを威嚇している。


「私の未来の義理の息子でもあるのよ」


妖艶なバラのような香りを漂わせながら和歌さんは俺の腕を抱きしめ、悪戯っ子みたいな笑みを浮かべていた。


窓の外の新緑の木々を眺める余裕なんて、俺には一切なかった。


何せ両腕をがっちり塞がれていて、身動きが取れない。


はっきり言って、この状況は心臓に悪すぎるのだが、俺はただ天を仰ぐことしかできなかった。


「壮真くん。私、最近また胸が大きくなったみたいなのよね」


そう言うと和歌さんは、さらにその豊かなふくらみを俺の胸に押し付けてくる。


「……はあ、そうですか」


「お母さんのはただ太っただけでしょ」


「恋歌!あなた今言ってはならないことを言ったわね!!」


優しい微笑みを浮かべていた和歌さんの顔が、一瞬で般若へと変貌した。 


「お母さんはもう歳なんだから、仕方ないわよ。うふふ」

 

「恋歌だって、何か前より太ったんじゃない?」

 

「うっ、それは」


(俺から見たら二人とも全然太ってないんだが、二人にとっては死活問題らしい)  


そんな争いをよそに、車は山道へとどんどん進んで行く。


そして、二人の豊かなふくらみの感触と温もりを感じつつ、木に囲まれた道を抜けて、俺たちは別荘へと到着した。


◇◇◇


別荘の前へ行くと、そこは最早、自然に囲まれた洋館風ホテルのような外観だった。


海外の高級ホテルのように、エントランスから廊下までは土足であがれる仕様らしい。


エントランスをくぐると、シックな黒をベースとしたメイド服姿のスラッとした女性が、美しいお辞儀をして出迎えてくれた。


「お待ちしておりました」


「花子さん!お久しぶりです!」


恋歌がメイドさんの方へ小走りで駆け寄り、そのまま勢いよく抱きつく。


「ふっ、恋歌お嬢様。大きくなりましたね」


花子と呼ばれたメイドさんはとても優しい目をして、恋歌を見つめていた。


「知り合いなの?」


「こちらは愛瑠歩烈度さんの娘さんの花子さんです。私が小さい頃はよく遊んでもらったんですよ。えへへ」


(……兄貴に娘さんがいたのか、またとんでもない美人だな)


「壮真さん!今、花子さんのこと美人と思いましたね!浮気は絶対にダメですからね!!」


「……いや、浮気はしないって」


(毎回、なんでわかるんだ。俺の心が読めるのか?)


「ふっ、仲がよろしいのですね。壮真様。お初にお目にかかります。愛瑠歩烈度・花子と申します」


花子さんは父親譲りの、隙のない綺麗な一礼をした。


長い黒髪に日本人離れした整った顔立ち、そして、高い身長とモデルようなスタイル。


どこか凛としていて、クールビューティーという言葉がピッタリの人だ。


「初めまして、山口壮真です。よろしくお願いします」


俺は丁寧に頭を下げた。


「花子。これを」


「承知しました。お父様」


愛瑠歩烈度の兄貴が花子さんに、俺と恋歌のキャリーバッグを手渡している。


「部屋へと案内させて頂きます。どうぞ、こちらへ」


俺と恋歌は、花子さんの後ろをついて行った。


案内された部屋の扉を開けると、そこはまるでアンティークの家具に囲まれた、高級ホテルのような一室だった。


部屋の入り口でスリッパに履き替えるようだ。


俺たちが足を止めると、花子さんは俺たちのスリッパを丁寧に並べてくれている。


「では、失礼します」


花子さんはキャリーバッグを部屋の隅に置くと、美しい一礼をして部屋を出ていった。


二人きりになると、恋歌がすぐに荷物から盗聴器発見器と工具を取り出し、部屋中を調べ始めた。


「……もしかして、また盗聴器があるのか?」


「あの歩く非常識(母)のことですから、絶対何か仕掛けてあるはずです」


少しすると、恋歌が何かを発見したらしく、慣れた手付きでクラシックな置時計の裏蓋を開けた。


「壮真さん!ありました!」


恋歌は器用にレンズの付いた小さな精密機械を取り外すと、それを床に叩きつけ思いっきりスリッパで踏み潰した。


「今回は盗聴器じゃなくて、盗撮カメラか?」


「ええ、これは音声も拾えるタイプですので、悪趣味にアップグレードされてますね」


「……和歌さんは相変わらずだな」


「でも、これで安心ですよ。壮真さん」


恋歌は工具を床にそっと置くと、俺の胸に飛び込んできた。


潤んだ瞳でじっと上目遣いで俺を見つめられ、ゆっくりと瞼を閉じられる。


俺はそれに応えるように、恋歌の柔らかい唇に優しく自分の唇を重ねた。


俺は舌を滑り込ませると、彼女も嬉しそうに舌を絡め合わせてくる。


愛の交換に夢中になっていたその時。


ガタッ。


奥の部屋から何か物音がした。


「誰かいるんですか!」


恋歌が叫ぶと、奥の部屋から和歌さんが現れた。


「あんな激しいキスしちゃって若いっていいわね。ふふ」


「見てたんですか!それよりどこから入って来たんですか!」


「隣の私の部屋からあなたたちの部屋へと入れる特殊な扉を設置しといたのよ。ほらこっち来て見て」


俺たちが奥の部屋に見に行くと、和歌さんが大きな本棚に向かってリモコンのボタンを押した。


すると、本棚が観音開きにゆっくりと開き、中から扉が現れた。


「なにくだらないものを作ってるんですか!」


「だって、こうでもしないと恋歌が部屋に入れてくれないから。ぐすん」


和歌さんは高級そうな黒いシルクのハンカチを取り出すと、目の下に当てた。


「嘘泣きはやめてください!私たちの部屋から出ていって!!」


「わかったわよ。うるさい子ね」


和歌さんが部屋を出ていくと、本棚は元の位置へと戻っていった。


気を取り直して、再び、恋歌と深いキスを交わす。


しかし、お互いの舌が絡み合おうとした瞬間、今度はコンコン、と硬い音が部屋に響いた。


俺たちは慌てて唇を離す。


「……は、はい、どうぞ」


ガチャリと扉が開き、花子さんが音もなく、滑るような美しい足取りで入ってくると深く一礼をした。


「午後十二時からお昼でございます。壮真様のお好みの食事はしっかり調査済みですので、ご期待ください」


「わ、わかりました。ありがとうございます」


「では、失礼します」


再び、美しい一礼をすると、部屋を出ていった。


花子さんが出ていったのを確認すると、俺たちは深い口づけを再開した。


さらに、お互いの舌が激しく絡み合う。


俺たちは息も吸えないくらいに、愛を求め合っていたその時。


再度、コンコンと乾いた音が鳴り響く。


俺たちはまた慌てて唇を離した。


「は、はい」


「失礼します」


ガチャリと扉が開き、やはり花子さんが先ほどと変わらぬ、くノ一のような隙のない足取りで再び入って来た。


そして、クールな顔でタバコの箱ほどの一対の小箱をテーブルの上にコト、と置く。


「極薄の避妊具です。壮真様のサイズはしっかり調査済みですので、安心してお使いください」


花子さんは淡々とした口調でそう言うと、少しだけ口元を緩めた。


「……え?……あ、ありがとうございます」


「では、失礼します」


花子さんは何事もなかったように深々とお辞儀をすると、部屋を出ていった。


(……できればタイミングというものに気を遣ってほしかったのだが)


昼食までまだ少し時間があったので、俺たちは昼食の時間まで熱い時間を過ごすことにした。


アンティークのダブルベッドの上で、恋歌が天使の微笑みを浮かべている。


「壮真さん。早く来てください。うふふ」


とりあえず、先ほど支給された避妊具をありがたく一つだけ使わせてもらう。


(俺のサイズって調査されてたのか……というかどうやって調べたんだ……?)

読んでくださりありがとうございました

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