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彼女の想いが重すぎる……  作者:


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13/27

第13話

婚約が決まってしまった。翌日の朝。俺はいつものように恋歌が作った美味しい朝食を食べていた。


今朝のメニューはふわとろオムライスとサラダ、そこに味噌汁に漬物添えられた、なんとも彼女らしい和洋折衷的なラインナップだが、これがまた美味いのだ。


「今日は壮真さんの誕生日ですね」


「あっ……そういえば、そうだったね」


(今日は5日24日、俺の誕生日か。最近、色々ありすぎて、すっかり忘れてた)


「晩御飯とプレゼント楽しみにしていてくださいね。うふふ」


恋歌は天使のような微笑みを浮かべて告げる。


「……うん、楽しみにしてる」


「あっ、オムライスが無くなっちゃいましたね。……はい、私のも食べてください。あーん」


恋歌はスプーンでオムライスを器用に掬うと、俺の口元へと運んできた。

 

「……あーん」


俺は大人しくオムライスを頬張る。


「ありがとう」


「もう一口どうぞ。あーん」


「……あーん」


こんなやり取りがしばらく続いて、朝食を終えた後、学校の準備をして恋歌と一緒に玄関に向かう。


「壮真さん」


玄関先で靴を履き終えたところで呼び止められた。振り返れば、恋歌が俺の胸に飛び込んできて、期待に満ちた表情でそっと目を瞑っている。


「チュッ」


俺は恋歌の唇に、自分のそれをそっと重ねた。


「私、幸せです。えへへ」


いつの間にかこれが俺たちのモーニングルーティンになっていた。


もし、これを拒もうものなら、恋歌は秒で闇ルートに突入する。俺の平和な生活を守るため、俺に拒否権はないのだ……。


◇◇◇


教室に入るなり、秀樹が小さな紙袋をぶら下げて、ニヤニヤと下世話な笑みを浮かべながら寄ってきた。


「誕生日おめでとう。ほれ、プレゼントだ」


「……ありがとう」


受け取ると少し重みを感じた。


「なんだよ。嫌そうな顔して」


「……お前は毎年、ろくなものくれないからな」


「安心しろ今回は自信作だ。小鳥遊さんと一緒に観るといいぞ」


(恋歌と一緒に観る?映画のブルーレイか何かか?とりあえずここでは開けない方がいいな)


そんな俺たちのやり取りを遠巻きで眺めていた高畑さんが、おずおずと近づいてくる。その手には、いかにもギャルらしい、ビビットピンクの包みが握られていた。


「山口くん、はい。これ、私からの誕生日プレゼント」


「……ありがとう。高畑さん。秀樹のせいで淀みきった教室の酸素が、一気に入れ替わった気分だよ」


「なにそれ。あはは」


「開けていい?」


「どうぞ。気に入ってもらえるといいんだけど。えへ」


綺麗な包みを開けたら、ショッキングピンクのスポーツタオルが顔を出した。


(……俺の周りはピンクが多いな)


「……ありがとう。大切に使わせてもらうよ」


「まあ、試合中とか使ってね。あはは」


(マウンドには持っていけないけどね……)


『山口くん、お客さんだよ』とクラスメイトの女子に呼ばれると、一年の教室にはおよそ似つかわしくない、凛とした空気が漂う。クラスの男子のざわめきと視線が一点に集中する。士門先輩が教室のドアの前に立っていたからだ。


「おはようございます。士門先輩」


「おはよう。これ、誕生日プレゼント」


差し出されたのは、可愛らしいラッピング……ではなく、小さな紙切れ。これを受け取って目を通した瞬間、俺は思わず絶句した。


──そこに記されているのは俺専用の殺人的な特別練習メニューだった。

 

「嘘だよ、本当の誕生日プレゼントはこっちだよ。ふふ」


白い紙にブルーのリボンが施された綺麗な包みを差し出された。


「ありがとうございます。開けていいですか?」


「うん、どうぞ」


ブルーのリストバンドだった。


「壮真くん、青好きでしょ。ふふ。じゃあ。また後でね」


士門先輩は軽くサムズアップすると自分のクラスへと帰っていった。


練習メニューで凍りついた心が、一気に解かされていくような、青空のような爽やかさが染み渡った。


◇◇◇


今日も野球部の厳しい練習も終え、俺は泥のように重い体を引きずりながら帰宅した。


リビングのドアを開けた瞬間、恋歌が小走りに駆け寄ってきて、俺の胸にダイブした。


「おかえりなさい。壮真さん」


「ただいま。恋歌」


俺の中に収まった恋歌が上目遣いに俺を見つめ、ゆっくりと瞳を閉じる。


──いつもの合図。


俺は吸いよされるように、その柔らかな唇に自分の唇をそっと重ねた。


「食事にしますか?それともいつものようにお風呂にしますか?」


「……うん、風呂にする」


「では、一緒に入りましょう。うふふ」


「え、また、一緒に入るの……?」


動揺する俺などお構い無しに、恋歌は俺の腕に自身の豊かな胸を押し付けてくると、そのまま風呂場へと連れて行った。


初めて一緒に入って以来、これはもう習慣(ルーティン)になっていた。


湯気に煙る透き通るような白い肌の裸体。少しは見慣れてきたとは言え、二つの豊満なふくらみと柔らかな曲線には、何度見ても理性が焼き切れるほどの衝撃を受けてしまう。


「はい、次は前を洗いますよ」


恋歌は満面の笑みを浮かべながら、俺の腕や胸にハンドソープを優しく擦り付けてきた。


「次はここも洗いますね」

 

恋歌は視線を俺の股間に落とすと、小悪魔のような笑みを浮かべじっと見つめている。


湯気の中でさらに赤く染まった頬が、普段の彼女とは違う妖艶さを醸し出している。


恋歌の小さな掌が、優しく、そっと俺のそれを包んだ。


恋歌が手を動かすたび、ボディソープの泡ごしに、ぬちゅ、と甘い音が響く。その丁寧で、執拗な手つきに俺の理性が悲鳴を上げ始めた。


徐々に手の動きを早める恋歌。もう、完全に確信犯である。


「我慢しなくてもいいんですよ?……うふふ、壮真さん」


恋歌は小悪魔のような笑みを浮かべ微笑んだ。


その甘い言葉に、俺の理性は豆腐のように脆くも崩れ去った。


「今日も元気ですね。うふふ」


恋歌は俺の急激に成長した息子を優しく掌で包み込み、そのまま、愛おしそうに弄りだした。


俺は今日もまた恋歌に身を委ねることになり、彼女の手によって理性の最後の砦まで、溶かされることになった。


◇◇◇


風呂から上がり、恋歌の手料理を堪能した後。俺はリビングのソファに腰を下ろし、恋歌が予約していてくれた誕生日ケーキを口に運んでいた。


「はい、壮真さん、最後の一口です。あーん」


隣に座る恋歌が、自分のケーキをフォークで掬い、俺の口元へ差し出す。


俺は躊躇いもなく、その甘い一口を頬張った。


「壮真さん、これ。誕生日プレゼントです」


恋歌が少し照れたような顔をして、ショッキングピンクの包みを俺に手渡してきた。


(昼間も見たな、ピンクの包み……)


「ありがとう。開けていい?」


「どうぞ、気に入ってもらえると嬉しいのですが」


包みを解くと、中からシルバーに輝くハンドカフ(手錠)のペンダントが現れた。


「う、嬉しいよ。格好いいな」


「私のペンダントと手錠が繋がるようになってるんですよ」


恋歌は愛おしそうに微笑むと、自分の首から下げているハンドカフのペンダントを指差した。


「……へー、そうなんだ」


「逃がしませんよ。壮真さん。うふふ」


「べ、別に逃げないから」


(……なんだろう?背筋に氷を押し当てられたような、奇妙な悪寒が走ったのは気のせいか?)


「約束ですよ」


恋歌は俺に抱きつくと、潤んだ瞳で俺を見つめると、そっと瞼閉じた。


引き寄せられるように唇を重ねる。途端、熱い舌が滑り込んできた。


互いの吐息が混じり合い。先ほどまで食べていた生クリームの甘さが、絡み合う舌を通じて溶け合っていく。


息をするのも忘れるほど、深い、深い、キスだった。


「……壮真さん、私」


唇を離した恋歌はゆっくりと服を脱ぎ捨てる。そして、透き通るような白い肌が露になった。


「れ、恋歌……」


「触ってください。壮真さん……」


導かれるまま、豊潤なふくらみを優しく掌で包み込む。指先で小さな突起を愛撫すると、恋歌は切なげな声を漏らした。


「そ、壮真さん、そこ……あ……っ」


柔らかな熱を帯びた果実の感触、甘い香り、そして、鼓膜を揺らす艶っぽい声。俺の理性を決壊させるには、それで十分すぎた。


壊れ物を扱うような手つきで、しかし、執拗に、恋歌の白い肌に愛を刻み込んでいく。


「そ、壮真さん、私もう……っ」


夜が明けるまで、俺たちは幾度も、深く重なり合い続けていた。


(俺を繋ぎ止める手錠は、思いのほか甘くて心地のよいものだった……)

読んでくださりありがとうございました

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