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救出作戦(1)

 デルホーンの指示でガタルンドのセイゲルとエンリッツのデイビッドのもとへキーシャは飛んだ。


 ガタルンドに戻ったキーシャは、シンシアの状況やルルクスが亡くなった経緯をセイゲルに伝えた。

 そして、デルホーンと一緒にシンシアを救出したいので、許可がほしいと願い出た。


「んー、どうしたものか。アンジェリカ様ならすぐにやれと言いそうだが……」

 セイゲルがなかなか決断できずにいると、そこへバタンとドアを開けてアンジェリカが現れた。

「だ、誰が呼んだ」

 セイゲルが小声でつぶやいた。

 見るとアンジェリカの後ろにルビーが隠れている。

「ル、ルビー貴様あとで……」

 にらむセイゲルにルビーは舌を出した。


「シンシアはリアナの姉だ、助けてやれ、セイゲル。

 バンデルクはわが国に借りがある。遠慮なくやっていいぞ」

 アンジェリカは両手を大きく広げて大声で言い放った。

「さっすがアンジェリカ様! 最高です!」

 キーシャがおだてるとアンジェリカはとても満足そうに笑顔を見せた。


 デルホーンの手伝いとして、ルビーとルーシャがバンデルクへ行くことが決まり、キーシャは外された。

「今はこれしか出せん!あっちにはマーシャルやチャドもいるだろう!」

 セイゲルが許可を出した応援要員は2名だけだった。


 それを確認すると、キーシャは次に、エンリッツのデイビッドのもとへ飛んだ。

 デルホーンから依頼されたことは、シンシアを助け出したあと、家でかくまうことができるかをデイビッドに確認することだった。


 朝早くデイビッドの家の扉をキーシャがたたいた。

 そこに出てきたのはリアナだった。


「リ、リアナ!」

「キーシャ、どうして……」

 キーシャはリアナを抱きしめた。

「おまえふざけんなよ、みんな心配したんだぞ!」

 そういって今度は乱暴に引き離した。

「どこ行ってたんだよ!」

 キーシャは真剣に怒っている。

「と、とりあえず中へ……」


 家に招き入れるとすぐにキーシャが言った。

「俺の預かった話はデイビッドとクロード様宛のものだ。

 リアナ、お前の話も聞きたいが、2人に確認しなきゃならないことがある。

 呼んでもらえるか?」

 その様子から、自分を探しに来たのではなく、誰かから何かを言いつかって、ここへきたことがわかった。


 デイビッドとクロードが現れるとキーシャは2人に丁寧に挨拶をした。

「私はキーシャと申します。

 お2人に確認したいことがあり、デルホーンの使いでまいりました」


「そうでしたか、デルホーンの。

 あまりかしこまらなくても大丈夫。

 普通に話してください。ささ、座って」

 クロードが言った。


「ありがとうございます」

 頭を下げるとキーシャはソファーに腰を下ろした。

 その横にリアナが、前にはデイビッドとクロードが座った。


「ではお言葉に甘えて、いつもの調子で話をさせてもらいます。

 まずリアナ。お前は今まで何をやっていたんだ?

 その話から聞かせてもらおうか」

 横にいるリアナにキーシャが言った。


 シンシアと共にターマニス大陸を出て他国へ逃げるはずだったが、そこでシンシアがいなくなったこと。

 その後スパイに間違えられたり、他国で諜報活動をしたことを話した。


「お、おまえ他の大陸でもスパイやってきたのか……。

 ある意味すげえな……って、褒めてるんじゃないぞ!」

 そのセリフにリアナは思わず吹きだした。


「す、すみません。

 さっきまで緊張していたのに、キーシャさんらしい言い方を聞いたら少し楽しくなってしまって」

「まあ、笑える元気があるなら良かったよ。

 逃亡中は心も体もきつかっただろう。それは容易に察しが付く」

「はい、ここに戻って、元気になりました」

 リアナはデイビッドとクロード、2人と目を合わせてほほえんだ。


 リアナの話を全て聞き終えると、キーシャは3人の顔を見回したあと1度小さくうなずいた。

「よし、じゃあ本題を。

 落ち着いて聞いてください。

 リアナ、心に力をいれろ」


「な、なんか怖いですね……」


「シンシアは今、ガタルンドで拘束されています」


 当然3人は驚いた表情をした。

「な、なにがあったの……」

 動揺したデイビッドの声は震えている。

 リアナは何も言わず立ち上がるとステッキを出した。

 そのリアナの手首をキーシャが掴む。


「座れリアナ! お前はガタルンドのスパイだろ! うろたえるな!」

 リアナはキーシャを睨んで手を振り払おうとした。

 すでに目には涙が溜まっている。


「リアナ、座りなさい。

 キーシャの話を聞いてから出て行っても遅くないだろう?」

 穏やかにクーバスにうながされ、仕方なくリアナは腰を降ろした。


「そうだ、落ち着くんだリアナ。

 まだシンシアの今の状況を聞いただけだ。

 もっと詳しい話を聞こうじゃないか。

 それからどうすればいいか、決めればいい」

 リアナは小さくうなずいた。


 キーシャはバンデルクで起きたことのいきさつを話した。

 クラウス王の命令でルルクスがさらされ、それを救出にきたシンシアが捕らえられたこと。

 命に別状はないが重傷を負っていること、デルホーンがシンシアを救うためにバンデルクに滞在していることを伝えた。


「ケガがある程度良くなったら裁判に……いや、それはないな。

 裁判なんてやらない。

 おそらくクラウス王は、どんな罰を与えるかを今考えているんだろう。

 決まり次第、刑が執行される。

 このままだと処刑されてしまう可能性が高い。

 デルホーン先生はシンシアを助けるつもりだ。

 俺もその作戦に参加したかったが、外されてしまった。

 セイゲル隊長から指示をされた、ルビーとルーシャが参加することに決まったよ。

 アンジェリカ様がさ、シンシアはリアナの姉だ、助けてやれ!って。

 かっこいいよな」

 リアナの目から涙がこぼれた。


「おい、泣いてる場合じゃないぞ、リアナ。

 戦いはこれから始まるんだ。

 救出がうまくいった場合、罪を背負ったままのシンシアはずっと逃亡者になる。

 安全に暮らせる場所を探すまで、一時的に身を置く場所が必要になる。

 そこで、デイビッド、クーバス様に確認したかったことっていうのは、この家にシンシアを匿うことができるかってことです」


「それは私にまかせなさい」

 クーバスがすかさず答えた。

「これでも元諜報員だ。そつなく任務はこなすよ」

「おお、頼もしい! よろしくお願いします!」


 リアナが勢いよく立ち上がった。

「キーシャさん、私、すぐに立ちます」

「姉さま、シンシア姉さまをお願い。2人で無事に帰ってきて! お願い!」

「わかったわ、デイビッド」

 リアナはにっこりと笑った。


 リアナは身支度を調え、デイビッドに預けていたライリをゲージから取り出した。

 そしてキーシャとともに出発した。

 キーシャはバンデルクへの応援からは外されてしまったのでガタンルドへ戻り、リアナは1人でバンデルクへ向かうことになる。


「リアナ、俺の勘を信じるか?」

 空を飛びながらキーシャが言った。

「い、いきなりなんですか? んーそうですね、信じます!」

「シンシアは無事救出できる。そんでその先はさ、ずっと良いことが続くと思うぜ!」

「アハハ、なんかまったく根拠のない未来予想図」

「信じるっていっただろう?」

「あ……はい、そうでした!」

「リアナ、幸せになれよ!」

「キーシャさん……」

「まあ俺はもっと幸せになるけどな!」

「ええー。 今すごく感動したのにー」

「ハハハ」


 ◇――バンデルクでは。

 クラウスは視力がなかなか戻らず、王の謁見の間での業務ができないため、即位の祝いごとも先延ばしにし、加えて各国の訪問はことごとく断りを入れていた。

 だがそれは、事件の後始末を優先したかったクラウスの口実だった。

 その日、執務室にこもって仕事をしていたクラウスのもとに、突然ラミが現れた。


「クラウス王、マルテ国のラミレス王子が突然お越しになりまして……。

 どうなさいますか、お断りいたしますか?」

「フッ……海賊王子か。お通ししろ」

「はっ!」


 2人は会うのが初めてだった。

「ラミレス王子、すぐにお礼に伺いたかったが、見ての通りまだ謁見もできぬほど目がよく見えない。

 ご理解いただきたい」

「お礼などと……。まったく気にしておりませんので。

 こちらこそ突然訪問をした非礼をお許しください」


 クラウスはラミをソファーに促した。

「さて儀礼的な挨拶もすんだし、堅苦しい言い方はここまでだ。

 私もこの間までは王子だったのだから。

 前触れもなくしかも従者もつけずに来るとは、よほどのことなんだろう?」

「こちらに捉えられているシンシアのことで来た。処刑される前にと思ってね」


「ほぉ……君がなぜそこのことを気にする」

「私の大切な人の家族だから」


 一瞬あっけにとられたクラウスだったが、すぐにフッと笑った。

「歯に衣着せぬ堂々とした物言いは、それだけで君の気質が見て取れる。

 とてもまっすぐで誠実なんだね。

 残念だがルルクスの一派は何があっても許さない。

 と言いたいところではあるが……。

 君には大きな借りがある。そしてリアナという娘にも。

 ではこうしよう。私を納得させる方法を示してくれ。

 城は組織だ。その組織の手前、王妃を処刑したのにルルクスの女を処刑できないような王であるわけにはいかない」


「ではシンシアに個人的な怒りや恨みはないと?」

「怒りはあるが、使われた人間だからね。

 私は使った人間……つまりルルクスへの怒りや恨みが強かった。

 でもまあ、取るに足らない娘など正直どうなろうが興味はない。

 だから都合のいい方法を君が提案できるのであれば、その話に乗ってもいい」

 クラウスがそう言うとラミは小さくうなずいた。


「提案というか……。シンシアを拉致する。 それだけだ」

「ぶっハハハ。 そうか、いいだろう、一度だけチャンスをやる。

 それが失敗すればこの話はなかったことになる。

 それと、もし成功したとしても、シンシアの逃亡者としての手配はとかない。

 再び捕まれば、すぐに処刑されるだろう。

 せいぜい捕まらないところに隠すといい」


「話がわかる相手でよかった、感謝する」

 ラミは立ち上がると手を差しだし、クラウスも立ち上がりそれに答え握手をした。


「ああ、それと1つ頼みがある。簡単なものでいいから私の歓迎会を開いてもらいたい」

 ラミの申し出に、クラウスは少し怪訝そうな顔をした。

「わかった……。いつがいい?」

「明後日だ」


 この話のあと、ラミはデルホーンを訪ねシンシア救出の内容を話し合った。


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