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作戦名『青い鐘を鳴らせ』(1)

 翌朝、バンデルク国へ潜入している部隊と合流するためリアナはマーシャル兄弟とともに商用船で海賊の島を出発した。

 ダイシャ村ではなく直接王都の港を目指す。

 海賊の島へ渡るときに持参した商人の身分証と、商業ギルドの組合員証がここで役に立つ。

 リアナは、魔法士の風魔法で高速移動する船の最後尾に立って、徐々に遠くなっていく海賊の島を見つめた。


(相手と距離をおけば心を離すことも出来そうな気がする。

 逃げ出したいときにはこの方法が一番良いのかもしれない。

 任務のおかげでラミと距離をおくことができる。

 アエロとのこと、覚醒のこと……たくさん教えてもらった。

 いつか恩返しをしよう。

 どんな形でお礼をすればいいか、今は思いつかないけど)


 リアナは金色の長い髪をつかむと、ダガーでばっさりと切り落とした。

 そしてその髪を甲板の上から海にまいた。

 置き去りにする自分の心への弔いのつもりで。


(バンデルクには姉さまがいる。

 今度は姉さまとの距離が近くなる……。心も近づくことができるだろうか。

 作戦が開始される前に、伯爵家の人たちとどこかに避難してほしい。

 そのことを教えてしまうのは規則違反だけど……。

 大切な人を守りたいその気持ちの前では、私はスパイになりきれない)


 両親はシンシアに格段の配慮をしていた。

 リアナとデイビッドはそれに対してやきもちをやくことはなかった。

 それは両親の愛情の配り方が正しかったからだろう。


 何かを始めるときプレゼントを配るとき馬車に乗るとき、兄弟の中ではいつもシンシアが1番だった。

 嫡男のデイビッドではなくシンシアを優位に置いたのは下の姉弟への手本になってほしかったからだ。

 だがそのことが、こらえ性のないシンシアを作ってしまった。

 たくさんの贈り物をもらっても、リアナやデイビッドの物を欲しがり取り上げる。

 両親が彼女にたくさんの愛情表現をしても、他の兄弟に同じことをすると許せない。

 それが欲しいのではなく、自分のものでないのが許せないのだ。

 いつも全てを欲しがって、手に入らないと嫉妬心をむき出しにする。

 美しく優雅で凛とした姉を、リアナもデイビッドも愛していたのに、シンシアは愛されても人を愛さなかった。



 バンデルクの港につくとまず目に入るのは港の左右にある2つの灯台。

 灯台の中腹はくりぬかれていて、そこには大きな青い鐘がぶらさがっている。

 リアナが港に降り立ったちょうどそのとき、2つの鐘が港に鳴り響いた。

 刻限の合図かもしれないが、まるで自分が歓迎されているようで嬉しかった。


 バンデルクの王都で準備された建物は、買い上げた宿屋2軒と協力者のカッタート子爵の家だった。

 町はずれの武器屋と港近くの倉庫には、長年諜報員たちがため込んだ武器や弾薬が蓄えられていた。

 エンリッツの諜報員や兵士もかけつけ、ガタルンド、エンリッツそして海賊団が共闘する。


 宿屋の1階は大きな酒場で、宿屋を買い上げた後も営業させているため、誰が出入りしても怪しまれない。

 その建物の3階で計画がねられ、主要な打ち合わせも行われた。

 カッタート子爵の家には、状況に応じて救出した第1王子を運び込む算段がついていた。


 リアナとマーシャル兄弟はそこで自国の部隊と合流した。

「お……う、リアナ。 どうしたその髪?」

「これはその……アハハ」

 別れてから10日も立っていないのにキーシャの顏や声が妙に懐かしく感じた。

「アハハじゃないだろう。色が変わったのも驚くが、なんでそこまで短くしちまったんだ?」

 そう言ってキーシャはリアナの髪を触った。


「髪の色が変わった瞬間を俺は見たんだ、キーシャ。

 リアナが覚醒したんだ。その瞬間、髪が金色に輝いた。

 俺はな、ものすごく感動したよ!」

 そう言ってマーシャルは目頭を押さえた。

「そ、そうか。そいつはすごいな。

 覚醒してどうなったのかわからないけど、とにかくめでたい!」

 じゃあ、あれだ。再会と覚醒を祝して飲まなきゃな!」

「おうよ、いい店しってるぜ!」

(あ……いや、飲めないんだってば!)


「まあでも、ちゃんと成長できたわけだ。がんばったな」

 キーシャはリアナの肩をポンっとたたいた。

「はい! ラミ様のおかげでものすごく成長できました!」


 宿屋3階の部屋には、ガタルンドとエンリッツの諜報員と兵士が集まっていた。

 アンジェリカとユベールの間の話し合いで、作戦の総指揮はセイゲルが務めることになった。

 国軍の兵士も組み込まれるが、今回は両国の諜報部が中心になって計画をすすめることで合意していた。


「にしても、これっぽちの人数で国を落としちまうような規模の作戦をやってのけられるのか?」

 マーシャルが小声でボソッとつぶやいた。

「少ない勢力でいかに大きな成果を見せるか。諜報員のだいご味でしょう」

 キーシャがニカっと笑って見せた。

「へえぇ、そんなもんかねぇ。

 確かに数が多くたって、成功するとは限らないしな。

 スパイのお手並み拝見といこうかね」


 ルビーから作戦についての説明が始まった。

「副隊長のルビーです。本部はこの場所、部隊は3つ編成されます。

 エンリッツとガタルンド、双方の諜報員と軍の兵士で組織します。

 作戦中の連絡ミスは許しませんから。

 みんなライリの宛先を間違わないように、顔合わせはしておいてくださいね」

 ルビーが説明している間に組織の概要書が回ってきた。


 1かく乱部隊

  海上から海賊の中型船が陸への砲撃をする際、同時に行動を起こす。

  ・仕掛班

   起爆予定時刻までに爆発物の設置。

   1日目 夕刻、城の周りの雑木林に設置。

   2日目 深夜、港の船の舵板に設置。

       明け方、港湾の西側にある燃料庫に設置。

   3日目 明け方 港湾の東にある武器庫に設置。

  ・起爆班

   予定時刻に起爆。

   1日目 夕刻。

   2日目 深夜と明け方。

   3日目 明け方。

   魔法士が遠距離の火炎弾を爆発物周辺へ撃ち込み、すぐに立ち去る。


 2情報部隊

  ・海上班

   羽が生えたライリをもつ魔法士が港湾外に設置されている暗礁浮標5カ所近くで2名1組で待機。

   外洋からのサヘル艦隊を目視した時点でカマラ海賊団のいるザッカス島へ1組が連絡へ。

   他のものはライリで港湾班と本部へ報告後、海上で待機し随時戦況を本部へ連絡。

  ・港湾班

   海上班からサヘル艦隊出現の報告を受けたのち、開戦のきざしを巡回班へ連絡。

   港付近の住民への避難の呼びかけと、その後の状況を本部へ報告。

  ・巡回班

   港湾班からの連絡を受けたのち、町の住民への避難の呼びかけと、その後の状況を本部へ報告。

   最後に作戦完了の合図を行う


 3攻城部隊

  ・突入班

   先んじて城の壁内に侵入しておく。

   海上開戦の連絡を本部のライリから受けたら、窓や扉を壊して侵入。

   戦わずに各部屋の扉や窓を壊しながら、出口の確保をしていく。

   救出班に突入成功をライリで連絡。

   その後場外で待機し第2王子の逃亡を阻止する。

   戦況や首尾の状況を随時本部へ連絡。

   救出班の作戦成功が確認できればすぐに第2王子の確保に向かう。

  ・救出班

   戦闘する者5名と救出する者3名の計8名を1つの班とし、2つの班を編成する。

   (1班 オルハン王の救出 2班 第1王子クラウスの救出)

   突入班からの突入成功の連絡を受けたのち侵入し作戦決行。


「この資料は明日の朝までには文字が消えて白紙になります。各自、頭に入れておくように」


 ルビーの話が終わるとセイゲルが立ち上がった。

「総指揮官のセイゲルだ。

 サヘルをおびき出すための海賊団の攻撃は、現時点では3日間の予定だ。

 なのでこちらのかく乱作戦も3日目までの予定になっている。

 サヘル艦隊が現れてくれれば、海賊艦隊がそれを叩く。

 その間に我々は王と王子の救出作戦を行う。

 王に関しては病状がわからないため、部屋に突入後、救出班の判断に任せる。

 監禁されている第1王子は、確実に助け出せ。

 3日の間にサヘル艦隊が現れない場合だが。

 本当は城へ攻め込み第2王子を拉致して、第2王子が握っている王権を奪還したい。

 だがそれでは、サヘルが逃げおおせる可能性があり、そうなればカマラ海賊団との約束が反故になる。

 現れなかった場合は、かく乱作戦を延長、あるいは計画の見直しをすることになる。

 だが攻撃やかく乱作戦が長引けば、バンデルク国民への被害はもとより、我らの状況も危なくなる可能性が高い。

 サヘルが来てくれることを祈るしかあるまい。

 今回の作戦名は『青い鐘を鳴らせ』だ。

 作戦の成功と諸君らの健闘を祈る。

 くれぐれも、命は落とすなよ。以上!」


 セイゲルの説明のあと、各部隊への配属が発表された。

 救出班は1班はベルモント、2班はルーシャが指揮をとる。

 ルーシャは随分前からバンデルクに潜入し、諜報活動を行っていた。

 リアナは2班で、班長のルーシャ、城の内部に詳しいマーシャルと一緒に行動することになった。


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