ウェアラビットの誘拐2
「まずは作戦会議よ!」
「おおー、ぱちぱちぱち」
腰に手を当てて宣言するアイシャに拍手を贈る。
「レティ、なにかいい方法はある? こう、ばばっとウェアラビットの居場所が分かるような」
「うーん。ちょっと考えるね」
「レティに作戦立案は無理ですの。これは秘密なのですけれど、ちょっと頭が弱いのですの」
「……確かに。以前は誰が作戦を立てていたの?」
「ノルンが中心だったのだ。一応賢者だからな」
「一応ですの。今回はプリュドが考えますの」
「プリュドじゃ不安なのだ」
「レティよりましですの」
「いなめないわね」
なにかいいアイディアはないかな、と必死に頭を巡らせているのに、皆が随分失礼なことを言っている気がする。
でもいいアイディアを思いついたわけじゃないので反論できない。
「ねえ村長さん。攫われたウェアラビットたちについて、詳しいことを教えてくれるかしら」
「犯人に心当たりはありますの?」
「う、うむ。恐らくはウェスター王国の手の者ではないかと思っているのじゃ」
「「ウェスター王国?」」
「なるほど。確かにウェスター王国ならやりかねませんの」
「攫ったウェアラビット達を連れて、東のエスト山脈をこえるのは考えづらい。それよりは西に進んでウェスター王国に行く方がたやすいでしょう」
「エスト山脈は険しく、人のあまり立ち入らない山頂には凶悪な魔物が生息しているのじゃ。どうやって攫ったウェアラビットを運んでいるのかわからないが、馬車などに閉じ込めて移動しているのなら山越えはすまい」
三人の話をふむふむと聞いていたアイシャは、何かに気付いたように手をあげた。
「ねえ、ウェアラビット達はいっぺんに攫われたの?」
「そうじゃな……一時に攫われたわけではないが、三日ほどの間じゃった」
「何人くらい?」
「八人じゃ。そのうち子供が三人じゃ。もう一週間もたつで、ずいぶん遠くまで逃げておるかもしれぬ。周辺を探してはみたが、東側はモンスターが強くて捜索もままならなかったのじゃ」
攫われたウェアラビットたちのことが心配なのだろう。
村長さんはしょんぼりと肩を落とした。
戦闘力の乏しい兎人族の村人たちでは、モンスターを倒しながら追いかけるのは難しいのだ。
「やっぱりウェスター王国があやしいね!」
「よくわかりましたの。レティは賢いですの」
プリュドがよしよしと頭を撫でてくれた。
子ども扱いされている気がしたけど、気持ちいからよしとする。
「ウェスター王国は魔族領と接しているからか、人種以外への敵対心が強いですの」
「その通りです。魔族はもちろん亜人や獣人にも差別的です。国境に学園都市カランブアイバができてからはちょっかいをかけてくることは減りましたが……」
「「カランブアイバ?」」
カランブアイバという単語に、私とアイシャは揃って首をひねった。
なんだか最近聞いたことのある単語のような……どこで聞いたんだっけ?
「カランブアイバは、ウェスター王国との国境にまたがるようにある西の湖に浮かぶ学園都市ですの。ここからウェスター王国に向かうなら、湖を迂回するよりもカランブアイバを通った方が早いですの」
「さすがプリュド様、博識でいらっしゃる」
「湖くらい、シュバルツならひとっとびなのだー」
「そうだね、人さらいも湖をひとっ跳びでこえて行ったのかな?」
「そんなわけないじゃない。シュバルツくらいのドラゴンを使役できるなら、人さらいなんかするよりずっと儲けられるわよ」
「「確かに」」
呆れ顔のアイシャに、私とシュバルツはしょぼんとした。
気を取り直して地図に目を落とすと、湖はかなり広大なことがわかる。
南北に長いイーフリート帝国とウェスター王国のほとんど半分以上を湖が占めているのだ。
カランブアイバがあるのはその丁度真ん中あたり。
「カランブアイバへは、船で行き来するの?」
「そうじゃ。このカラヘブ湖には魔物もでる。カランブアイバにわたるものは、定期的に運航している船や貨物船に乗るのじゃ」
「定期船なら私も乗ったことがあります。都市警備隊が守りにつくので安心ですよ」
「ふむ……」
皆からの話を聞き、私は考え込んだ。
「攫った人たちを連れて、陸路を行くのは遠回りだし大変だ。でもカランブアイバは都市警備隊もちゃんとしてるみたいだし、大勢連れて入り込めるのかな?」
「そうね……でも村長さんみたいに兎に近い見た目なら、家畜として連れ込むことは不可能ではないんじゃない?」
「それなら、商品として申請してるはずですの。調べる価値はありますの」
「とりあえず、カランブアイバに行くしかないね」
頷きあった私たちは、カランブアイバへと向かうことにしたのだった。




