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腐食病


「シュバルツ。プリュドを連れて来てくれない?」

「わかったのだ。レティはどうするのだ?」

「私は、プリュドが来るまで村長さんについてるよ」

「じゃあ、行ってくるのだ」


そういうと、シュバルツはそのまま一直線に上空へと浮かんでいった。

羽ばたいていないから、風魔法をつかっているのかな。


「お、おい! プリュド様を連れてくるって、本当か⁉」

「伝説の聖女様だぞ⁉ こんな辺鄙な村に来てくれるのか⁉」


ふわふわ上っていくシュバルツを眺めていると、我に返ったらしいゼニスさんたちが矢継ぎ早に質問をしてきた。


「山脈って、エスト山脈だろ? どのへんかにもよるが、北部エスト山脈なら間に合わないんじゃないか?」

「空を飛べるとはいえ、子供のドラゴンだしな……」


希望がみえたと思ったら、また絶望……という感じで、ゼニスさんたちは再び肩を落とした。

ゼニスさんたちの様子に、アイシャが食って掛かる。

アイシャはシュバルツを可愛がっているからね。馬鹿にされたと思ったのかな。


「失礼ね! シュバルツは大きいのよ!」

「お嬢ちゃん、何言ってるんだ」

「そうだぞ、小さいドラゴンじゃないか」


その時、爆発が起きたような光が輝いたかと思うと、巨大な影が村の上に現れた。


「「「なああああああああああああああ⁉」」」

「いってらっしゃーい!」


巨大な影……シュバルツは、弾丸のような勢いで北へと飛んでいった。

プリュドがどのくらい遠くにいるのかわからないけれど、シュバルツよりも早くたどり着ける者はいないだろう。

ゼニスさんたちは、口をあんぐりと開けて目を白黒させている。


「さて……私は村長さんのところに行こうかな」

「え?」

「プリュドが来る前に村長さん死んじゃったら困るでしょ」

「そりゃあそうだが……」


シュバルツを見送ると、私はさきほどの家へと足を向けた。

あまりの出来事にいまだ呆けているゼニスさんは、ふらふらと私についてくる。

もはや驚きなれているアイシャも、すまし顔で私に並んだ。


「レティも治癒魔法使えるの?」

「んーん、プリュドみたいなことはできないよ。でも私は遊び人だから」

「……だから?」


アイシャには意味不明だろう。胡乱な目を向けられているのを感じる。

しかし、遊び人だからこそ、出来ることもあるのだ!



ゼニスさんに案内された家の寝室では、村長のデニスさんが横たわっていた。

ベッドの隣には、先ほど会った薬師のおばあさんが椅子に腰かけて看病している。


「ばあさん、親父の様子はどうだ?」

「……あまりよくないね。この分じゃあ、明日の朝までもつかどうか」

「そんな! さっきと話が違うじゃねえか!」


ゼニスさんの悲痛な叫びに、薬師のおばあさんはゆるゆると首を振った。


「すまないね……思っていたより症状の進行が早いんだよ。痛みもひどいだろうが、和らげる薬も効いてるのかいないのか……」


苦し気にしかめられたデニスさんの眉の下の瞳は固く閉じられ、顔色は悪い。

寝巻の袖口から覗く手の甲や腕は、腐食が進み赤黒く変色していた。

そんなデニスさんを見ながら、ゼニスさんは表情を悲し気に曇らせる。


「親父……」

「すごく苦しそう……レティ、なんとかできるの?」

「わからないけど、やれるだけやってみるよ」

「お願いだ。親父を少しでも楽にしてやってくれ」

「わかった。せめてプリュドが来るまでもたせられるように頑張るよ」


不安そうな面々に頷き返す。

私も不安だけど、プリュドなら治せる。

プリュドが来るまでなら、きっと何とかなる……いや、なんとかしてみせる。

懐かしい僧侶の顔を思い浮かべながら、私は気合を入れるのだった。



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