第8話
「んでさ、テンボーイ、自己紹介も終わったことだし、俺についての話も少し聞いてもらっても良いかな?」
アストラル体についても気になるが純粋にレザさんの事も気になる
「もちろんです」
「俺はさ、それこそ遊びまくってたんだよ、
好きなとこ行って、良い女と映画見たり遊んだり、スポーツだって俺はうまかったんだぜ?」
3Sはこの世界の大人にしてみれば当たり前だ
「スポーツは何してたんですか?」
「スケボーだよ!他にも色々手出したりしてみたが、やっぱ俺にとってのスケボーはフェイバリットでカルチャーだったよ」
フェイバリットでカルチャーか、アメリカらしい言い回しだ
「テン、お前も板に乗ってみな?歩く人をすり抜けて落ちてるゴミをオーリーして超える、
すると街のやつらは俺に釘付けなわけよ笑」
アメリカ人がこうなのかレザ本来のチャラさなのかは分からない、ただそんな話をしているレザはとても楽しそうで、
もう戻れない過去を見つめているような、
なんとも言えない気持ちになった。
「音楽も好きだったな、スケボーに乗りながら聞く音楽はどんなドラッグよりも良いもんだったぜ?」
「音楽ですか」
両親の顔が思い浮かぶ、楽しそうに音楽について語る顔は、文化は違えど生活に、心に根付いてるものなんだと
「あんまり僕は聞かないです」
申し訳なさそうに返事をする俺をみて
「かぁぁぁもったいねぇー、最高な女も、もちろん良いが、人間が作った音楽はやっぱ極上なんだよ笑」
「あとはな、ケプラーっていう惑星に20年くらい住んでみたんだよ、人族が開拓したから街並みなんかは地球とおんなじだったけど、見上げる夜空は別格だったなぁ
でもな、そんないろんな事やりまくったって人間100年も生きてるとさ、大体予測出来ちまうんだよ、何が起こるか、どうなるのか
りんごを落とせば重力で下に落ちるって事は予測できるだろ?
人生もそれと同じなんだよ」
共感できないが分かる気がする
大人の中にもたまに死んだような目をして生きている人を見かけたりするのはこういう事なんだろうか
「するとな、何が起こるか分かるか?
ぜーーんぶ、"飽き"ちまうんだよ」
少しゾッとする、飽きるという言葉で片付けれるほど簡単なものではないと理解できた
「それは.....少し怖いですね」
「そーだろー?感動なんて最後にしたのも70年前ぐらいかな?なーんにも感じなくなっていくんだぜ、10代のテンボーイが羨ましいよ」
見た目は20代なのに、こんな哀愁を漂わせるレザを見ていると、この世界はやはりどこか歪なんだろう
「この世界って完成しすぎてるだろ?」
同じような事を俺も思っていた
「確かに、僕もその違和感には気づいてました」
こう答えると、
嬉しそうにしたレザの表情は、
どこか子供を見守る親のような目だった。
「なぁテン、お前も聞こえてんだろ?
頭の奥でずっとしゃべってる声が」
レザは鋭い目つきに変わり、声のトーンも幾分か下がって俺に問いかけた。
「聞こえるっていうか、そうですね、意志みたいなものは感じます」
強張った俺の表情を見て、レザは
「大丈夫だ、最初は俺もビビっちまったけどよ、強ちこいつらの思想もまちがっちゃいねーと思うんだよ」
俺も、サンちゃんが悪とは思えていない、むしろ、それが正しいような気もしている。
ただハジメやキューさんの存在が今も俺の心を揺さぶる。
「なるほど、、」
するとレザは突然固まって
「......うるせーよ」
街の喧騒か?それとも返事を間違えた?
「どうしましたか?」
「あぁ、いや、俺ん中のやつが急に出てきてな」
多分悪性だ、サンちゃんとは別の存在なんだろうか
「悪性ですか?」
レザは目を曇らせて
「そーだよ、こいつたまにやかましいんだよ、滅ぼせ、殺せって、」
なるほど、サンちゃんより少し凶暴なのかもしれない、
少し話題を変えてみる。
「そう言えばレザさんは寿命薬の事どうお考えですか?」
「あれな、あんなもんぬるいと思うぜ、
一回全部壊れた方がおもしろそーじゃん笑
テンもそー思うだろ?」
そう言うレザは少し怖いと思ったが
俺もいつかこうなるんだろうか、と考えてしまって突き放せない
「僕はそうですね、、まだそう言い切ってしまって良いのか分からないです」
正直な答えだ、同じ部分があるからこそ
レザの思想が危ないとも思えない。
「お前なら"戻れる"よ、テン」
真剣な表情で言うレザに聞く
「戻れる?」
「まぁ簡単な話だよ、そのうち分かる」
「じゃ、俺は行くわ!
また会おうぜテンボーイ」
嵐のように去って行くレザの背中は
やはり哀愁と黒いオーラが漂っていた。




