第2話
見知らぬ男が玄関に立っていた
両親は共働きで家に居らず、俺しかいない
インターホン越しに声をかけられる
「あのーすみません、こちら天美様のご自宅でしょうか」
「そうですけど、どちら様で?」
「こちら中央機密保持AI TYPE9563です、少しお話しを伺いたいんですがお時間ありますかー?」
またこのドキドキだ、思い当たる節は寿命薬しか無い、ただなぜ家に来る?
まだ違法でもないから罪も犯してないはず、などと考えているが1秒ずつ時は進んでいる
少しの沈黙の後、意を決して
「大丈夫ですよ、今玄関開けますね」
考えてたって進まない、とりあえず話だけでも聞くか、そう思って扉を開けた
「こんばんは、初めまして、中央機密保持AI TYPE9563です、長いので、キューさんとでも呼んでください」
やけに人間臭い、親しみを持たせるためそう言う風に設定されているんだろう
「あ、そうですか、じゃあキューさんで」
「はい、それで今回訪問させていただいた理由というのがですね、テンさんの魂から歪みを感じまして」
歪み?
なんだそれ、寿命薬のことじゃ無いのか?
「歪みってどういう事ですか?」
「はい、本日渋谷ターミナルから難波ターミナル、そしてまた渋谷ターミナルまでテレポーされましたよね?」
それはそうだ、テレポートしなきゃどこにもいけないんだから
「はい、しましたけど、、」
「その時にですね、あ、いや、まずはテレポートの原理を話した方が分かりやすいと思うのでそちらから説明しますね」
「はぁ、お願いします」
「テレポートというのはゲートを超える時に肉体を一度細分化して魂だけの状態にします、
そしてテレポート先で身体を再構築し魂を憑依させるんですが、テレポート中は魂が丸裸なんですよ」
「丸裸ですか、、」
「はい、丸裸です、そして普通の人族は魂だけの丸裸の時、美しい花のような幾何学模様になるんですけど、天さんの魂が少々歪んでまして、、」
テレポートの話にも驚かされたが、キューさんの目にはどの様に写ったんだろう
「どのように見えました?」
「そうですね、幾何学模様ではあるんですが光と影、白と黒といった様な相反するものが一つに留まっていると言ったら伝わりやすいですかね、光はとても綺麗でしたが影がまるでブラックホールの様に底のない物に見えました」
何だそれ、いや想像出来なくは無いが理解はまだ出来そうに無い
「そんな人はいないんですか?」
「そうですねぇ、今の時代じゃとても珍しい事だと思いますよ」
日々の疑問が蘇る、あの時の問いの答えはわからないけどこの疑問の始まりは魂由来のものなのかな?
「なるほど、それって身体に悪かったりするんですかね?」
考えてもキリがないので突拍子もない質問をしてみる
「いやいや、身体には全く影響はないですよ、
ただ思想や行動に影響が出るくらいですね」
それってかなり大事じゃないか?
これからの俺の人としての人生そのものが歪んでいく事になるのか?
訳がわからない話をされても妙にしっくりくる説明にさらに頭を悩ませることになる
「まぁ、分かりました、取り敢えず僕には歪みがあるんですね」
「はい、だからと言って病気になったりとかは無いですしそれで死ぬわけでもありません、ただ近年で本当に久々に現れたっていうレベルだったので今回急な訪問させていただきました、夜分遅くにすみませんね」
なるほど、ただまだ話してない事がありそうな
キューさんの笑みをみて少しゾッとした
「いえいえ、話は分かりましたしこちらも貴重な話を聞けて良かったです」
話しが終わろうとした時不意に寿命薬の事を思い出した、なんなら先程まで完全に忘れていた、あれだけドキドキしてたのに
「あっ、そういえば最近ニュースで見かける様になった寿命薬ってあれ何なんですかね」
口から不意に出てしまった
「あーあれはですね、何と言いますか、
まぁ必要の無い物だと思いますよ、あんな物気にしなくて大丈夫です」
濁された気がしたが
それ以上は聞けなかった
「今日はありがとうございました、私自身テレポートゲートにいつもいるのでまた機会があればお話ししましょう、珍しい歪んだ魂の方との会話もなかなか得れるものではないのでとてもいい時間でした」
それは褒めてるのか?
「僕もいろんな話聞けて良かったです、ありがとうございました」
何だかんだ2時間ほどキューさんと喋っていたらしい、ぐちゃぐちゃだった頭の中は妙にスッキリしていた




