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スクリーム・オブ・フリークス (scream of freaks)  作者: TOKI-HIROHIKO
第2章 佑樹とジョージと瑛太の場合
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 翌日の夕方。佑樹とジョージは大学からの帰りとなる新玉川線に乗っていた。2人は座席の中央辺りに並んで座って、イヤーピースを一個ずつ耳に付けながら、佑樹のノートブックPCに、昨夜遅くに起きていたという、ネットに40件ほどが投稿されている、歌舞伎町の交番前の銃撃戦の画像と動画を一通り眺めていた。2人は動画に、銃撃犯たちを圧倒している私立探偵たちの活躍を見て、目を丸くして、ため息を漏らた。

 ジョージが的確に銃撃犯たちを始末してゆく私立探偵たちの活躍を見て、「この私立探偵たち、メチャ凄いね。インスタでチェックしてみたけど、日本人はフランス軍の外人部隊に所属していたって言うよね」と話した。

 佑樹がそれに頷いて、「ビルの屋上から狙い撃ちにしている女は、元はロサンゼルスのSWATの狙撃手だったって言うよな」と言葉を加えた。

 するとジョージが佑樹に同調して、「もう1人、車にいるのが香港出身の天才プログラマーだって噂されてるね」と続けた。

 それから佑樹が、『歌舞伎町交番』と『銃撃戦』を検索して、プラットホームに列記されてきたネットの記事のタイトルを一通り確認した。それらを見て、インスタグラムに『探偵事務所フォートレスの回答』という動画を見つけて、そのページに飛んでみた。

 インスタのホームには、事件の翌日に、『フォートレス』という探偵事務所の広報担当者が、テレビの報道番組の司会者と対話しているニュース動画が投稿されていた。佑樹とジョージはそんな動画を2人して見た。

 そこでは、探偵事務所の島崎という名の広報の女性が、顔を出さない条件でテレビの報道番組のインタビューに応えていた。動画では報道番組の司会者の質問に、島崎女史がこのように答えていた。

「先月の17日に起きた、警視庁による中国人貿易商のブライアン・マーの逮捕が、行き過ぎ捜査による大きな誤りだったのではないかとする疑念が、ある時、極秘の情報源によって『フォートレス』へと持ち込まれました」、「私たちは独自に事件の調査をしてみました。あらゆる情報網を活用しました」、「結果、ブライアン・マーのビジネスは、マー家の長兄であるアンディ・マーが組織を束ねる新宿のスネークヘッドとはいっさい関係ないことが分かりました。ブライアンは無実でした」、「事件は、とある警察官のスネークヘッド潰しを画策した捏造でした。スネークヘッドは事あるごとに地元の暴力団と問題を起こしていますからね」、「私たちは独自の調査をさらに続けてみました。すると、しばらくすると、ボスのアンディの指示に従って、武闘派の陳小虎チェン・シャオフーの一派が、ブライアン逮捕のきっかけを作った歌舞伎町交番の巡査部長を殺害するのではないかとするスネークヘッドの不穏な動きを掴みました。私たちは調査を進めて、陳たち一派の交番への殴り込みの決行日を特定しました」

 動画を見てジョージが、「フォートレスか。ここの私立探偵は格段に違うよね。いつも警察がやれないことを解決に導いている」と話した。

 それに佑樹が同調して、「とにかく警察は何もしなくなったからね。コロナが明けてからというもの、なんか国民の全体のタガが外れて、やりたいことを好きなだけやっちまっている。日本人に特有だった暗黙の了解ってやつが木っ端微塵になって、日本が壊れていってしまっている。そんな気もしなくもないよな」と返した。

 そうこうしている間に、新玉川線の列車は駒沢大学駅に到着して、「それじゃあ8時45分に」と言って、ジョージが手を振って列車から降りていった。佑樹は列車のシートに残って、ノートブックをデイパックに片付けると、イヤーピースを両耳に着けて、スマホに音楽をプレイして、次の桜新町の駅に着くまで独りでぼんやりとしていた。


 そうして佑樹とジョージは、そして瑛太は、個々に帰宅途中に買い物をしたり、自宅に帰宅して、その日の大学やオンライン授業の勉強を復習したり、夕食を採ったり、家族と話をしたりして、夜の20時45分までの数時間をそれぞれに過ごした。

 短い時間に集中することで記憶力が増し、理解力が深まって、彼らの勉学能力は日に日に延びていっていた。ジョージと瑛太の母親は、以前より前向きになって勉学に向き合っている息子たちを見て、嬉しくて、とても満足に思っていた。そして彼らは20時45分には自室へと入り、個々にPCの前に集まって、3名はズームでつながった。

 ズームでつながって、瑛太が第一声、佑樹とジョージにこう話した。

「よう、仲間たち。元気にしていたか?2人に会うのを楽しみにしていたよ」

 ジョージがそれに、「俺もだよ。君たちに会いたかった」と応えた。

 瑛太が「なあ、佑樹」と続けた。

 それに佑樹が微笑んで、「何だよ?」と返した。

 瑛太がモニターのジョージと佑樹に目をやって、ちょっと照れくさそうに話した。

「俺は佑樹にチームに誘ってもらって、ありがたく思っている。2人とこうしていられることを心から楽しんでいる。死に物狂いで怪物を倒しまくったり、時には我が身を盾にして、互いに仲間を守り合ったりしてさ。何だか毎日が楽しくってさ。このところ、自分自身が以前とはちょっと違ったように感じているんだ。やりたいことは、生きてる間に何でもやっておかなくちゃってさ。くだらな過ぎる人間社会から、急に目覚めたみたいでさ。こいつはお前が週ごとに作ってくれている俺たち3人のスケジュールのお陰だよ」

 佑樹がそれに照れながら返した。

「俺は何もそんな事まで考えてはいないけどね。勉強は勉強でちゃんとやりながら、3人でしっかりと協力して、ゲームを完全制覇できないかって考えてるだけさ。・・・そのために、ちょっとタイトなスケジュールになっているかも知れないけどさ。人間って、ちょっと時間に追われるくらいじゃないと、日々に充実感を得られないのかもな」

 ジョージが自分も同じような感覚を得ていると、ニコニコしながら、佑樹と瑛太に、「今夜もいつも通りに、9時丁度の集合で良いね?」と、確認を求めた。

 佑樹がそれに頷いてみせて、「うん。いつも通りの時間で行こう。場所はそうだな。そうさ。新宿歌舞伎町の一番街の入り口にしよう。そこから靖国通りを進んでいって、どこまで行けるかは分からないけどさ。5丁目で右折していって、新宿御苑を目指すことにしよう」と応えた。それから、ジョージと瑛太にちょっと気合を入れるかのようにして、「何回殺られるか分からないけどさ。とにかく片っ端から目につく怪物たちを片付けてゆこう」と続けた。

 瑛太がそれに、「良いね。3人で限界を越えてゆこう」と返した。続いて、ジョージが大きく頷いて、2人して佑樹の発言に同調した。


 21時と数秒が経って、佑樹とジョージと瑛太が次から次へと『スクリーム・オブ・フリークス2』の仮想世界のシンジュク・カブキチョウの一番街の入り口へと現れてきた。3名は軽装ながらも、FBIのロゴが入った防弾ベストを身に着けて、頭にはヘッドギアを着け、切れ味鋭い長鉈とサブ・マシンガンでしっかりと武装していた。すぐさま3名のアバターである『ジライヤ』と『オロチマル』と『ツナデ』が、常時3名が多くの情報を共有できるようにボイス・チャットでつながった。

 仮想世界の歌舞伎町は人気が無く、しばらく前から東京屈指の繁華街としての機能が停止しているにも関わらず、ネオンサインや極彩色の電飾看板などの目映い街明かりで溢れていた。もしかしたら原宿の表参道と同じように、いくつかの建物内では今も人々が細々と暮らしているのかも知れない。

 街に面した靖国通りは、路上に放置された事故車や不要車両が左右の外側の車道へと移動させられていて、内側の車線だけが通行可能になっていて、時おり食料品やガソリンの運搬車両や自衛隊の装甲車両や人員輸送車が安全を意識して低速で走り抜けていた。そんな通りの反対側となる新宿駅の東口方面は、そんな一画に比べると薄暗く、どこかで怪物たちが立ち寝している嫌な気配が漂っていた。

 佑樹とジョージは戦闘能力の高い瑛太を先頭にして、周辺に注意を凝らしながら靖国通りを花園神社方面へと進んでいた。明かりに満ちた歌舞伎町の周辺では、怪物たちはわずかしかいなかった。彼らは例にたがわず立ち寝をしていて、眠りのリズムにかすかに上体をユラリユラリと揺らしていた。

 瑛太は車道の放置車両の近くに1体の怪物を見つけると、姿勢を低く、歩みを止めて、佑樹とジョージに手の平を向けて、その場で静止するようにと促した。

 次に瑛太は、ジョージの耳にその口を近付けて、囁くような小声で、「ジョージ、お前が殺れよ。ただし、近くにいるかも知れない他の怪物を目覚めさせないように出来るだけ音を立てないで奴の頭を刈るんだ。俺があいつの脇に回って、お前のサポートをする。頭を割ったら、残った体を車のボンネットに横たえよう」と指示した。これは、このところポイント数でいくらか遅れを取っているジョージに優先的に怪物を倒させて、彼にポイントを稼がせる狙いだ。

 それから佑樹の耳にその口を近付けて、声を潜めて、「佑樹は周辺に注意を傾けてくれ。もしも周辺で他の怪物が目覚めるようなら、躊躇なく銃撃して、奴らの動きを止めてくれ」と言い聞かせた。

 そして佑樹がサブ・マシンガンを構えて周辺に注意を傾ける中、まずは瑛太が、足音を立てずに怪物の傍らへと回っていった。そしてニヤリと笑って、ジョージに頷いてみせた。それにジョージが頷いて返し、気配を潜めて怪物の前へと歩き出してきた。それから怪物の頭を目掛けて、利き手の長鉈を振り下ろした。すると怪物の頭がザクロのようにザックリと割れて、ピンク掛かった血飛沫が飛び散って、瑛太が生命の尽きたその巨体を長鉈でコントロールして、音を静かに車のボンネットへと倒れ掛けさせた。

 同様の殺り方をジョージに4体、続けさせた。これでジョージは8ポイントを加えた。

 そして、ファミリーマートの横側にある花園神社の南鳥居の前へとやって来ると、神社の南参道の暗闇では、20体に近い怪物たちが屯して、立ち寝して眠りを貪っていた。

 参道は狭くて暗かった。怪物たちは、せいぜい2体か3体ずつくらいしか通り抜けてはこられないはずだ。この道は、奴らに戦いを仕掛けるには悪い場所ではない。とは言え、血で血を洗う戦いになることだけは間違いない。瑛太と佑樹は参道を見て、そう考え、顔を見合わせ頷き合って、ジョージと3名で、生死を賭けて奴らと戦うその覚悟を決めた。

 3名は可能な限りに気配を潜めた。そして瑛太が一番外側の怪物の傍らに、次にジョージが2番目の傍らに、そして佑樹が3番目の傍らへと息を潜めて立ち止まった。

 3名は顔を見合わせ、利き手の長鉈をしっかりと握った。そして、呼吸を合わせて大きく頷き、声を出さずに、3、2、1とカウントダウンして、長鉈を振り上げ、それぞれに同じタイミングで怪物の頭を叩き斬った。

 巨体が地面に倒れ落ちる音で、即刻、近くにいた怪物たちがその目を覚ました。佑樹とジョージが左右に分かれて、参道の両端にある樹木の陰へと身を隠した。瑛太は鳥居の下の参道の真ん中で、サブ・マシンガンをしっかりと構えた。そして、2体、3体と我先にと襲い掛かってくる怪物たちを銃撃して、突進してくる奴らの身の動きを止めた。

 怪物たちが静止して、続け様に雪崩を打つように崩れ落ちてゆくと、佑樹とジョージは長鉈を振り抜いて、片っ端から奴らの頭を跳ね飛ばした。瑛太も、闇の中からこぼれ出してきた怪物の頭を手早く叩き斬った。

 佑樹とジョージがすぐさま左右に退いて、参道を開けた。瑛太が間を空けずに、目を覚まして走り出してくる、狭い参道でその身をぶつけてもつれ合った怪物たちを続けざまに連射した。

 3名は続けて怪物たちの頭を叩き割り、目につく者からその首を斬り落としていった。それでも次から次へと怪物たちが突進してきて、佑樹の頭にかぶり付き、ジョージの大腿を食いちぎった。

 ジョージが脚の肉を失って、激痛に悲鳴を絞り上げた。次の瞬間、あらがう術もなくジョージはその頭をもがれていった。瑛太も手当たり次第にサブ・マシンガンを連射していたが、やがては俊敏に襲いかかってくる怪物たちのその数に圧倒されて、背後から頭を丸齧りにされた。

 そうして佑樹とジョージと瑛太の3名は、その地の戦いで相次いで二度殺され、気持ちを切り替え、二度リセットして、再生して戦いを続けた。花園神社で祐樹たちは、トータルで22体の怪物たちを殺害し、44ポイントを3名で分け合った。

 怪物たちが眠りに就いている夜の間でも、こうした凄惨な戦いが、街のあちこちで繰り広げられていた。佑樹とジョージと瑛太の3名が、意志をひとつに、チームを作って凶暴な怪物たちと戦っているからこそ、順調にポイントを積み重ねていられるようなものだ。

 これが1人切りでの戦いだったら、そうは行かない。・・・1人でいたって、通りで立ち寝している1体目を狩ることは出来る。しかしその時、間違いなく音がする。同時に、近くにいた怪物たちが目を覚まし、人間の存在を感知して、反射的に襲い掛かってくることになる。そして2体目を銃撃して狩ることが出来るかも知れない。ところが、その先が困難だ。・・・

 佑樹たちの計画では、夜間の戦いで経験を重ねて、怪物たちとの戦いの感覚と効率的な殺害方を身に着けたら、ゆくゆくはプレイの時間帯をコントロールして、怪物たちが眠りから目覚める夜明けに戦いのステージを移すつもりだ。そして、そこでの戦いに充分に慣れて、ポイントを重ねたら、今度は、来る日も来る日も激戦の最中に立たされることになる日中での戦いにステージを上げることになる。

 加えて不可解だが、彼らの脳内には奇妙な変化が起こりつつあった。ただし、それらの起因となる異状は、彼らに限った変化ではない。もっと広範囲で起きている現象だ。

 近年、テレビやユーチューブで人気の、美人で著名な脳科学者で心理学者である安西夏海が、コロナ明け以降、巷で少しずつ目立つようになっている若者たちの心理的変化をこのように語っていた。

 前提として、彼らは常にスマートホンに触れている。何かがあると、彼らはすぐにスマートホンを見る。そうした行動が習慣化、あるいは常態化している。もはやスマホは彼らの肉体の一部と言うべき存在である。いいや。彼らの身体の方がスマホの一部なのかも知れない。要するに、彼らはインターネットとSNSに隷属しているのだ。

 例えば、人類史においてインターネットに掲示板やSNSが作られて、それらを代替えとして社会から無くなったものがトイレの落書きである。掲示板やSNSとは、そんな程度の存在である。利用するには、よくよく理性と知性を働かせる必要がある。そんな代物に電子広告や、転売や、課金や、投げ銭のシステムが投入されて、人類の英智が創り出した画期的テクノロジーであったインターネットを台無しにしている、と。

 そして、佑樹たちの脳内に起きている変化というのは、まずは『スクリーム・オブ・フリークス2』をプレイしていて、ゲーム内で怪物に頭を食われて、死して現実世界に戻ってきた時に感じる強大な喪失感、あるいは虚無感に関してである。

 青年たちはゲーム内で起きた死と、『リセット』という『再生』を何度も、何度もくり返して、その際に感じるゲーム内での死を意味する強烈な喪失感に慣れてしまって耐性が生まれている。それに伴い、人間は死んでも再生することが出来ると思い込み、現実世界にある自らの死を恐れなくなった。後に、彼らのようなゲーマーに生じる習性を評論した安西夏海が、この現象を『リセット感覚』と名付けている。

 さらに彼らには、ゲームの中で夢中になって、懸命になって来る日も来る日も怪物たちの首を刈って、殺害することをくり返して、もうひとつの心理的弊害が起きていた。

 彼らはゲームの中で強敵である怪物たちを殺害して、ポイントをゲットして、強烈な悦びに包まれていた。脳内には成功報酬として快感と悦楽を生じさせる『ドーパミン』が溢れ出していた。

 他者を殺すという行動は、人の倫理に抵触する相当に恐ろしい行動のはずである。人の類いに近い哺乳類を殺すとなると、それはかなりの罪悪感を伴う。ところが彼らの心では、まるでハエや蚊を殺すのと同じくらいに罪悪感が薄れていた。彼らは敵対する他者を殺すこと自体に慣れてしまって、他者の死を、強いては敵意を持った他者を殺すことを軽んじるようになっていた。これは国と国、部族と部族の間で起きた戦争によって、戦地に送り込まれた兵士たちの皆が、我が身を守り、味方を守るために敵兵を殺害して陥るのと同じ類いの症状である。

 それにも増して、佑樹たち3名は、日本を没落に追いやった現代の大人たちを頭から見下していた。太平洋戦争以前から続く日本の今の大人たちを、心の底からバカだと思っている。彼らの父親たちの仕事が日本の禁区に近い理由からなのか(祐樹の父親は愛知県の副知事、ジョージの父親は元外務官僚、瑛太の父親は国会議員の第一秘書)、彼らのそうした考えは大変に根強かった。『美しい日本』などとは、バカの標語と同等のものだ、と。

 日本は、自衛隊以外に軍備を持たない半人前の国だ。もしも戦争が始まったら、輸入ばかりに頼っている食料と石油がすぐに枯渇して、2ヶ月で敗戦が確実になる。

 一にも二にも経済のことばかりを考えてきたはずなのに、人口は激減し、産業は海外との競争に負けて、国家は衰退の一途を辿っている。東日本大震災で壊れた原発を、今でも人の力で廃炉に導けると考えている。大した軍備も持たないで経済のことばかりを考えてきたと言うのに、どうしてこの国はキチガイみたいに借金漬けなのか?何をどのように考えたら、毎年、税収よりも大きな借金を作ることが出来るのか?どんな風に考えても、日本の政治家と官僚は、頭がイカれているとしか思えない。普通の家族がこんな風に借金漬けだったら、即刻、破産して、夫婦は離婚。一家は離散だろう。そして、そんな国家が今も存続できているのは、この国の国民たちが同じようにバカだからだ。

 例えばスウェーデンでは収入の50%を税金に摂られるが、出産、育児、教育、医療、介護、老後が国によって完全に守られている。なので、人々は手にした収入を全額使い切っている。別荘を買うこととボートを買うことが世間の流行なのだそうだ。どうしてそんなに無防備な生活が出来るのかと、人々に問うと、彼らは国が信用に値するからだと答える。彼らは国に税金を支払うことを、暮らしの資金を国に預けていると考えている。加えて、銀行は破綻することがあるが、国家は潰れないからだと続ける。それだけ国家が透明に、国民に誠実に創られているのだ。政治家たちが1ヶ月に何に費用を使ったのかは、いつでも国民がインターネットで確認することが出来る。・・・

 日本は、本来は積立型だった国民の年金を使い込み、損金を埋めようとも返済しようともしない国だ。・・・スウェーデンには議員宿舎もあるにはあるが、日本のような一等地にある家族で住む高級マンションのようなものでなく、議事堂内に備えるワンルーム・マンションのような小さな一室だ。それも地方の議員が国会に出てきた時だけ使用することになっている。

 翻って、この国ではどうだろうか?税金は本当に国のために、そして国民のために使われているのだろうか?・・・日本では、余計なことを掘り起こされないように税金の構造が複雑に出来ていて、年金や社会保険料などを含めると、税額はすでに収入の45%を超えている。それなら収入の50%を税金として支払うから、日本でも出産、育児、教育、医療、介護、老後のすべてを国に工面させようじゃないか。

 スウェーデンも、このままではこの国の財政はダメになると考えて、1991年に世紀の大改革をおこなって、国家の会計を全面的に変えた。同じ人間なら、日本人にだって出来るはずじゃないか。それとも、日本の政治家と官僚は、頭の芯からやはりバカなのか?

 日本の文化とサブ・カルチャーは、このままで良いとしておこう。『余白』を美学とする日本のアートや文化は、世界の人々の心の深くを確実に捉え、他者からの抑圧と強制を排除して、自身の不安定さと共存して、人々の心を自由に導き、世界の至るところに広まってゆくはずだ。しかしこの国の中枢には『革命』が必要だ。

 とは言え、佑樹たちの同世代の何人がそれらの事実を知っているだろうか?・・・勉強以外の時間は、J・POPを聴いて、YouTubeやTikTokを見て、マンガや、アニメや、ゲームに明け暮れてはいるが、親たちの導きがあって、決してそれらだけでなく、佑樹たちは学ぶべきことをしっかりと学んでいる。この国が異常であることを認識するためには、まずは世界にある事実と現実を明らかにして、それらをきちんと理解しなければならない。

 また、『スクリーム・オブ・フリークス2』では、彼らが実際に何度も出掛けたことがある現実の街を完全にコピーした仮想世界へと没入してゆく。そんな世界と人間社会が事あるごとに破壊されてゆく。奇獣のような怪物たちに次から次へと人々が殺されて、頭や大腿をもがれてゆく。佑樹たち3名にとっては、ダメな日本社会が少しずつ破壊されてゆくその様を見るのは、大変に痛快でもあった。

 コントローラーにプレイ・ボタンをタップして、『スクリーム2』の仮想世界に一旦、足を踏み入れたら、3名の脳にはドーパミンが沸々と湧き出してくる。ゲームの中で怪物たちと会おうが会うまいが、怪物たちの首を刈ろうが刈るまいが、怪物たちに頭を持っていかれようがいかれまいが、そんな世界に没入するたびにドーパミンを放出している。スイッチひとつで陳腐で下らない現実世界から抜け出して、終始一貫、充実していられる。緊張感は途轍もないが、彼らは生死が懸かった真剣な世界に生きていられるのだ。

 ところがセックスなり、ドラッグなり、ギャンブルなり、仕事なり、ネットなり、ゲームなりで大きな成功報酬(幸福ホルモン)を脳に得て、興奮に満たされて、それが習癖になると、腰を振るなり、吸うなり、嗅ぐなり、食べるなり、金を賭けるなり儲けるなり、ボタンをタップするなりして、点火するスイッチが簡単であれば簡単なほど、『中毒』に深刻に、執拗に陥りやすくなる。そうなると、それを欲していつもいつでも脳が『依存症状』に晒されることになる。当然、それに伴って人格も変化する。

 それは佑樹たち3名だけでなく、『スクリーム・オブ・フリークス2』をプレイする世界のほとんどの人たちが強くそれらの『中毒』と『禁断症状』を抱えるようになる。そしてその時、世界にはある種の変化が現れるはずだ。音もなく侵攻してきた人類の変化が偏在化するはずだ。・・・加えておくならば、それらの行為が中毒化するには、行為に点火するスイッチは簡単でなければならない。点火スイッチが複雑になると、その時点で行為に対するブレーキが掛かって、人々は中毒に陥りにくくなるからだ。


 2023年の7月。佑樹とジョージと瑛太の3名は、チームを結成して3ヶ月と少しが経って、個々に500ポイントをゲットするようになっていた。詳しくは、佑樹が現時点で518ポイント。ジョージが502ポイントで、瑛太が542ポイントだ。3名で協力しただけあって、通常よりもかなり速いペースである。

 そこで3名は話し合って、夜間の戦いを彼らなりにクリアしたと見なすことにした。3名は怪物たちと向き合った際に身を震わす強烈な恐怖感を、ある程度はコントロール出来るようになっていた。加えて、怪物たちのその首を躊躇なく、着実に刈れるようにもなった。一太刀で怪物たちの頭を叩き割り、その首を断ち斬る長鉈の角度も、振り切る際の力の配分も、自分たちなりに習得することが出来ていた。自分たちの身長より高い位置にあるその首を刈るにはある種の技術が必要であった。それを実行するのは簡単ではなかった。

 それから3名は、次のレベルにステップアップして、怪物たちが眠りから目覚めて活動を始める夜明けの世界に戦場を変えた。夜明けの世界は夜間の戦場とは異なって、まったくの別世界だった。


 東京タワーを丘に眺める、真夏の東の夜空が薄っすらと明るくなってきた。

 佑樹とジョージと瑛太の3名は事前に話し合って、ゲームのプレイ時刻をやがては東の空が白み始める午前4時丁度に設定した。それからプレイ・ボタンをタップして、地下鉄千代田線の乃木坂駅近くの通りへと現れ出してきた。佑樹たち3名はいつものように長鉈とサブ・マシンガンで武装して、身に着けた防弾ベストに加えて、顔には日光に対処する新しいアイテムとして偏光レンズのゴーグルを着けていた。

 夜明け前の赤坂通りは事故車が乱雑に放置されていて、車の通行が出来なくなっていた。この地は東京の中心にあたる一等地であるが、幹線道路の不通によって食料の供給が止まってしまって、周域での人々の暮らしはすでに不可能なはずだ。どこかで火災が起きて、延焼しているらしく、周辺はひどい黒煙に包まれていた。消防車両の進入が出来ないために、建物はこのまま術もなく燃え続け、鎮火するまで延焼を続けてゆくのだろう。

 3名は赤坂通りを西へと進んで、道なりに延びている地下道には進まずに、左に湾曲した上り坂を上がっていって眼上に見えている外苑東通りを目指していた。

 途中、路上で立ち寝をしている怪物を見つけたら、佑樹と瑛太で怪物を囲んで、ジョージにその首を刈らせた。死した体を長鉈や腕やその手でしっかりと押さえて、体の重みを吸収して、出来得る限りに音を立てずに路上へと怪物を横たえるためだ。

 東京タワーを丘に眺める、東のビルの向こう側に朝日の筋がゆっくりと延びてきた。

 佑樹とジョージと瑛太の3名は、通りで立ち寝する怪物たちを殺害して、外苑東通りを六本木方面へと進んでいた。通りには、夜明けを目当てに出没してきたプレイヤーたちが他にも40名近く現れ出してきていた。

 東の空が明るくなってきて、青山墓地の静けさの中で立ち寝していた怪物たちが顔面の筋肉や、肩やその首を小さく痙攣させて、少しずつ目覚めてきた。その地で眠っていた怪物たちの総数は、600体を優に超える様子だ。

 24時間体制で街頭を煌々と灯している246方面には、1体も向かわなかった。怪物たちは前傾姿勢に、その歯を剥き出して、両腕をだらりと下ろし、100体ほどが骨董通り方面に、200体ほどが外苑西通りを下りてきて西麻布方面に、他の100体ほどが413号を通って青山墓地中央へと下りて、路地へと広がって赤坂方面に、残りの200体ほどが星条旗通りや六本木トンネルや、路地や建物の敷地内を通って乃木坂や六本木方面へと我先にと進んできた。

 すると夜明けの時刻と同時に、100人に近いプレイヤーたちが、いいや、個々に最適化して武装した、目の周りを横長に白くペイントしたゴッズ・ウォリアーズ(神の戦士たち)が通りや、ビルの敷地や、それらの玄関内へと現れ出してきた。彼らは日本人と思われる者たちが数名。その他は、世界各国の白人たちや黒人たち、ラテン系やアラブ系やインド人たち。中国人や韓国人や台湾人や中央アジアや東南アジアの腕利きのプレイヤーたちも何人かが混じっている。

 やがては青山墓地方面から、小刻みな地鳴りのような不吉な物音が聞こえてきた。佑樹とジョージと瑛太はそんな無気味な物音に反応して、その場所に立ち止まった。そしてウエディング・ブランドのビルが建った乃木坂駅と、ステーキハウスやメルセデスがある駅の北側方面へと振り返って、耳を澄ませていた。すると、やがてはその音が大量の力強い足音のようだと判別できるようになった。

 3名は顔を見合わせて、息を飲み込んだ。少しして、数10体もの怪物たちが、佑樹たち3名がいる外苑東通りへと雪崩を打つように走り出してきた。

 佑樹とジョージは怪物たちのその数を見て、その身が恐怖に凍りついてしまった。さすがの瑛太も動揺を隠せずに、迫りくる危機感を露わにした。

 それでも瑛太はあらゆる所から駆け出してくる数10体もの怪物を睨みつけ、佑樹とジョージに、「撃てーっ!!撃て、撃て!撃ちまくるんだ!!」と叫び、佑樹も「奴らを止めないと、俺たちが喰われちまう!」と嘆き、ジョージが「殺られてたまるか。殺ってやる!殺ってやるからな!」と返して、3名でサブ・マシンガンを一斉射撃して、迫り来る怪物たちのその動きを止めた。

 ところが3名は突然に窮地に陥って、脳が萎縮して、その身が動かず、怪物たちの頭を刈るまでには至らなかった。接近してくる怪物たちを制止することまでは出来たものの、たいしてポイントは加算されず、ただただ銃弾を浪費するばかりだった。

 都市の所々に進み出してきたゴッズ・ウォリアーズは、それぞれに肩や上腕に、ゴッズ・ウォリアーズの限定品である、円形の添付タイプの『タカラダ・ブレンド』と呼ばれる注射薬を射ち込んだ。これは、フリークに化体し始めたマモルの骨髄から採取した強化された免疫細胞を、宝田博士が大量に培養して、興奮剤で希釈した注射薬である。ゴッズ・ウォリアーズがこの薬を接種すると、心が堅固にコーティングされて、身の動きが俊敏になって、肉体が強靭化されるらしい。そしてウォリアーズは鉈や手斧や剣をその手にしっかりと握って、迫りくる怪物たちをサブ・マシンガンで銃撃して、間髪入れずにそれらのその首を刈っていった。

 怪物たちの突然の急襲に、多数いた他のプレイヤーたちが驚いて、あちらこちらに逃げ惑い、1人、また1人と頭を食いちぎられていった。そんな中、佑樹たちは何とか2体、3体と怪物たちを倒して、六本木方面へと後退してゆくことが出来ていた。

 やがては、同じ地域にあるミッドタウン・ガーデンや檜町公園、さらには赤坂にある乃木神社や、乃木坂の国立新美術館の敷地内からも600体ほどの怪物たちが目覚めてきて、長い両腕をダラリと垂らし、人の匂いを嗅ぎ分けて、俊敏な動作で周域へと散らばっていった。

 ゴッズ・ウォリアーズはサブ・マシンガンで銃撃して、怪物たちの身の動きを強制的に止め、次から次へとその首を斬り落としていった。そして口々にこの言葉を呟いていた。

「この日をもって、我らは地表に這いずりまわるウジ虫であることを辞めた。すべては自身の決意によってだ。今日から我らは、輝かしい神の下僕となる。そして、兄弟の絆によって結ばれる。我らが命果てるその日が来るまで。・・・どこにいようと、神の下僕たちは我らの兄弟だ。多くはクソまみれの地獄へと落ちる。ある者は二度と戻ってはこない。それでも心に固く命じておこう。神の下僕は永遠であると。よって我らも永遠であるのだ。白を黒とし、疑わしき者たちは、ただちに我らのこの手で罰する!」と。

 これは、プレイヤーたちがゴッズ・ウォリアーズとなってファイナル・ステージに上がると、彼らの1人1人に与えられる『ニューワールド・バイブル』なる書物の一節だ。その書は単純に訳して『新世界聖書』。2008年にヴァチカンが発表した『新たな7つの大罪』に則って、ゴッズ・ウォリアーズの1人1人に戦いの意味と導きを授ける覚書である。

 ちなみにその書に記された、新世界に向けた『新たな7つの大罪』とは、遺伝子改造などの生命倫理の罪、人体実験などの胎芽を傷付ける不道徳な実験の罪、麻薬乱用の罪、環境汚染の罪、社会的不公正の罪、過剰な富を持つことの罪、貧困を作ることの罪、というこれらの7つだ。

 これらはすでに現代社会に溢れ返っている。コンビニエンス・ストアに入れば、そこにはすべてが並んでいる。そこにあるのは便利なだけのクズばかりだ。現代人は便利さを求めてチープに貧欲に生きている。そうして細切れにされた7つの罪のすべてを甘受しながら、日常を暮らしている。そして『スクリーム・オブ・フリークス』の物語の起源は、想定していなかった事故を引き金に、それらの罪を混合した、人間を原型とした怪物がこの世界に創り出され、地球の隅々まで広がっていったとする設定だ。そして、人類が(多くは企業が)撒き散らしてきた害毒を糧に増殖してゆく怪物たちに、人類は向き合うことになる。現代人の生活は天然との対極にある。人々は安っぽい作り物の世界で生きている。『スクリーム・オブ・フリークス』とは、実にリアルな物語である。

 夜明けの街には過酷な戦いを求めるゴッズ・ウォリアーズが、あるいは新たにゴッズ・ウォリアーズの一員となったニューフェースたちが、そうして腕試しにやって来ていた。

 ここでの戦いをクリア出来れば、一気にポイントを稼ぐことが出来る。おまけに投げ銭で小遣いを稼げる。さらには、ポイントを積み上げて上位に上り詰めてゆけば、やがてはゴッズ・ウォリアーズの中でも大天使ミカエルやガブリエル、ラファエルと同等の高位へと就くことが出来る。そうすれば、彼らは生涯を音楽と共に生きることが出来、天上にいる神たちを近くに感じ得ることが出来るのだ。

 上位のゴッズ・ウォリアーズたちが自ら怪物たちへと向かっていって、サブ・マシンガンで銃撃してその動きを止めて、頭を正確に斬りつけてゆく。それでも圧倒的な怪物たちの数が災いして、昇格して間もないゴッズ・ウォリアーズの中には、ちょっとしたミスを仕出かして、怪物たちに傷付けられ、次の瞬間に消え去ってゆく者たちがいた。

 怖いもの見たさで、この時刻に集まってくるプレイヤーたちは、後を絶たないでいた。ところがそんな者たちは、怪物たちの数の多さに驚愕して、悲鳴を上げて逃げ回り、あるいは、現れるとすぐに次から次へとその頭をもがれていった。そんな中、佑樹とジョージと瑛太の3名はボイス・チャットで言葉を交わし、連携を巧みにサブ・マシンガンで銃撃して、倒せる者から怪物たちを倒して、ミッドタウン方面へと進んでいた。

 息もつかせぬ戦いの最中、ゴッズ・ウォリアーズのその中に、佑樹が見覚えのある1人の女が現れてきた。・・・間違いない、あの女だ。シブヤのPARCOのカフェで出くわした、佑樹が女にデコイとして利用された、手斧を持ったあの女だ。確か、名前をアルテミスと言った。

 美貌の女を睨みつけ、怪物たちを連射して、佑樹がジョージと瑛太へと告げた。

「ミッドタウンの入り口にいるプラチナ・ブロンドの女を見てくれ。防弾ベストにボブ・カットの女だ。あの女、シブヤで怪物たちを誘き寄せるために俺をデコイに使いやがった」

 すると女が俊敏に動き出し、ジョージが連射した怪物2体のその頭を叩き斬っていった。続けて、女が怪物を銃撃すると、瑛太が女に体をぶつけて怪物を横取りし、長鉈の一振りでその頭を強く跳ね飛ばした。ところが次の瞬間、背後を走り抜けてきた怪物が大きく口を引き開いて、瑛太のその頭を噛みちぎっていった。

 瑛太が消えていなくなると、佑樹とジョージの戦力はいきなり低下した。女が横取りして、銃撃されて動きが止まった怪物たちのその頭を叩き割ってゆくと、佑樹が横から飛び出してきた怪物にその頭を噛み砕かれ、続けて、別の1体にジョージが素早く頭を持っていかれた。


 それから3分ほどの後、佑樹とジョージがそれぞれに自室で、『スクリーム2』から離脱した生命の喪失感に身悶えしていると、個々のデスクのノートブック・パソコンに電子音が鳴った。それは、瑛太からのズームの呼び出し音だった。

 ジョージと佑樹がズームに出ると、瑛太が憤って、佑樹にこう言った。

「なあ、佑樹。あの女、生かしちゃおけねえな」

「だろ。マジでイラつくだろ。いつか俺たちをデコイにしたことを後悔させてやる」

 佑樹が苛立ってそう返すと、ジョージがそれに同調して、強気になって加えた。

「だったら、今からあの場所に戻って、あの女を殺っちゃえば良い。怪物を狙った流れでサブ・マシンガンで殺っちまったら、誰にも分からないだろ。流れ弾に当たったってことで片付けられるはずだ」

 瑛太が、「そうだな。手っ取り早くて、それが良いかも。な、今すぐコンテニューしようぜ。あいつを見付けて、すぐに殺っちまおう」と続けた。

 佑樹がそれに、「確かに。悪くない考えだ。とっととあいつを片付けてしまおうぜ。だったら、今すぐコンテニューしよう」と返した。

 すると、ジョージと瑛太が、「コンテニューしよう」、「コンテニューしようぜ」とオウム返しした。それからジョージが笑顔になって、「それじゃあ、あっちで」と続けた。

 改めて3名は、個々にその顔にゴーグルを着けた。それからコントローラーを手に、大型モニターにそれを向け、プレイ・ボタンをタップした。


 数秒後に、瑛太、佑樹、それからジョージの順番で、ゴッズ・ウォリアーズが怪物たちと殺し合いをくり広げている早朝のミッドタウンの入り口へと現れ出してきた。

 3名は現れ出した瞬間から、襲いかかってくる怪物たちをサブ・マシンガンで撃ちまくった。そうして、殺れる奴から頭を跳ねてゆくしか生き残ってゆく術が無かった。それだけ戦闘スポットである早朝の戦いは激しさを極めていた。

 それともう一つ、3名は戦いながらも周辺にアルテミスの姿を懸命に探していた。そのために10数分間を費やしていた。ところが復讐するはずだった女の姿は、その地にはどこにも見つけられないでいた。すでに女はこの場所から離れて、どこかに移動していったらしい。・・・この地のような厳しい戦いの最中にいると、戦士が移動を強いられるのは当然のことだ。2分もあれば新たな標的を求めて、あるいは身の安全を確保しながら、どこか他所へと移動してしまうものだ。

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