表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/69

第五十六話 雨の恵みと、罪の間

 精神的に復活したレンとクロ、シロ、ニュート、キリアが落ち込んでいるカレンから強引に封印の魔力をもらい、さくっと完全聖書をマームで封印して、その後長い船旅を終えてミリカ西部の町サリールへと到着した。


「んー、ここも涼しくていい町だわ。しかしなんかそこら中でカップルが仲良くしてるわね?」


「私達も負けない。クロ、レンに引っ付く。熱烈なキスも」


「うおっ!?いきなりだな二人とも?でも南米ってこんなイメージだけどな。情熱の国って感じだ」


「ニュート、妾も父上たちのようにキスを所望するのじゃ」


「えっ!?は、はい……」


 ミリカ特有の情熱的な恋人オーラに負けじと超甘々オーラを展開する5人。


「さて、カレンにリヴァイアサンの情報聞きに行くか。空を飛んだり海に生息したりするなら、今どこにいるかキリアも知らないだろ?」


「大丈夫じゃ父上。リヴァイアサンはスクチャン川から離れた広い海域のどこかに生息しておるはずじゃ。2、3ヶ月に一回ほどスクチャン川上空を飛行するのでしばし待っておれば見つけるのは簡単じゃ。だからこそミリカの住人は割と頻繁に目撃できてかつ雨をもたらすリヴァイアサンを熱心に崇めておるのじゃが……。それに今の状態の阿呆に聞いてもこれ以上のろくな情報は得られないと思いますぞ?」


「スクチャン川?どこにあるんだそれ?」


「ミリカ東部熱帯地域に存在する巨大河川地域じゃ。ここからだとかなり距離があるのう。それよりもサリールの町を案内するのじゃ。クロ母上やシロ母上の好きそうな料理も知っておりますぞ?」


「スクチャン川ね。特徴とか地理的なことを聞くとアマゾン川みたいなもんか。またサンライズキャニオンみたいにとんでもない地域じゃないだろうな?」


「「キリア、今すぐ料理のある店連れて行って!!」」


「熱帯!!!キリア今すぐ行きましょう!!!」


「父上、確かにスクチャン川もありとあらゆる魔物と動植物が生息しておる危険地域じゃ。しかし父上率いる妾達なら問題ないですの。ニュート、個々も充分温かいじゃろ、母上たち、こっちじゃ」


 ぞろぞろとキリアについていくほかの四人。カルガモの雛が親鳥について行く様だ。


 その後、キリアが紹介したレストランに入った5人。

「くはーっ!!お肉もお魚もすっごい辛いわー!!!!レンの作ってくれる辛さとは違って純粋に辛いわー!!お肉も不思議な食感ね?こりこりしててかつ適度に噛み切れるわ。何の肉かしらこれ?」


「すばらしい。このパンのような細長い筒状のものには激甘クリームが入っている。この赤い実もそんなには甘くないけどさっぱりしてる。キリア、これと同じ味のAランク魔物を狩る。案内して」


「どれもすごい辛いですね。パパの作ってくれる料理の不思議な香りとかはないですけど」


「ミリカの料理もジアン南部と似てて辛いんだな。香辛料メインじゃなくて唐辛子メインみたいだ」


「クロ母上、その肉は心臓じゃな。シロ母上、残念じゃがその赤い実を取れるサボテン系魔物はBランクまでしかおりませぬ。父上、ニュート、ジアン南部にもこのような辛さの料理はあったのじゃが、選ばん狩ったのじゃろう。父上、一週間ほどこのままサリールに滞在し、満喫すればよいと思うのじゃ。どうかの?」


「さすがキリアだな。俺よりもしっかり考えてくれてるよ。ばっちりのプランだ。よしよし、俺はすばらしい娘を持てて幸せだよ、ちゅっ」


 レンは優しくキリアのおでこにキスをした。


「父上~褒めて頂き~感謝感激なのじゃ~」


 相変わらずリヴァイアサン討伐前とは思えない幸せな家族オーラを展開する5人。


 その後サリールの教会で一度礼拝に出席し、キリアのプランどおりサリールを満喫してから、5人はミリカ大陸を南北に分断するガルギア山脈を越え、スクチャン川に比較的近い町ハルサンにやってきた。


「でかい町だな。とても危険地帯のスクチャン川に近いとは思えないぞ?」


「スクチャン川から適度な距離の町を選んだからじゃよ、父上。この地域には米もありますぞ?」


「マジか?地球では元々南米に米なかったはずだと思うんだが?」


「気候がジアン南部に似ておりますからの。種籾を輸入して各種米を栽培するようになったのです。牛肉の生産や、コーヒーやチョコレートも豊富なのじゃ」


「そういや南米もコーヒー原産地だったな。熱帯地域で雨量も多いから種を輸入すればだいたいの食物は作れるのか」


「牛肉……じゅるり。キリア、早く早く……」


「久しぶりのチョコ。じゅるり……」


「お肉もチョコも食べたいです!!キリア早く行きましょう!!」


 またぞろぞろとカルガモの雛になる四人と親カルガモのキリア。


「すっごいわねー、いくら食べてもお肉なくなったら店員さんが持ってきてくれるわ……幸せだわー……」


「久しぶりのチョコはたまらなかった。なんとかチョコをエウレアでも簡単に入手できるようにしないと」


「すごい大きいお肉をミリカの人達は食べるんですね?」


「確かにでかいな。でもジューシーでいい感じだ。ブラジル料理ってこんなだったかね?コーヒーもいい感じだ」


「スクチャン川だけでなくミリカはカリフ同様独特の自然が豊かな大陸じゃからな。特に牧畜が盛んなので肉を大量に食べるんじゃよ。シロ母上、エウレアで安くチョコレートを入手するのはかなり難しいと思いますぞ?大量に購入して皆で凍らせておくしか方法はありませぬな」


「ん、ハルサン中のチョコを買い占める」


「いや、シロ、たくさん買うから買占めはやめてくれ。キリア、次いつリヴァイアサンが来るかまでは分からないよな?」


「そうですな、妾もいつ最後にリヴァイアサンが飛来したのかは知りませぬ」


「お、丁度いい、店員さん、俺達リヴァイアサンを見にハルサンまで観光にきたんだけど、次はいつごろリヴァイアサンの雨が見られますかね?」


「リヴァイアサン様は一週間ほど前に恵みの雨をもたらしてくださいました。とても美しく空を舞っておりましたね……はっ、すみません、次はおそらく3ヶ月ほど先ではないかと思われます」


「どうもご丁寧に。これは教えていただいたお礼です」


「こんなに料理を召し上がっていただける上に宿泊までしていただいているので受け取れません。お気持ちだけ頂いておきます」


「そうですか。とにかく教えていただき感謝します。チップは払ってもよろしいのでしょう?」


「金貨5枚などという高額過ぎるチップでなければ喜んで頂戴いたします。それではごゆっくりどうぞ」


「ふむ、しばらく時間はありそうだな。みんな、考えていることがある。部屋に戻ったら家族会議だ」


「ふぁふぁっふぁふぁ、ひょうふぁいふぉ」


「承った」


「もぐもぐ……はいパパ」


「父上何かお考えでも?」


「あの店員さんの謙虚な態度を見てると話づらいんだ。ゼクルスみたいに狂信的じゃないしな。あとで話すよ。後クロ、肉飲み込んでから返事しろ。はしたないぞ」

 

「むぐむぐ……ごくん、は、はい、あなた、ごめんなさい……」


「はい~了解じゃ~父上~」


 その後クロとニュートがレストランの肉をほぼ食べつくし、金貨1枚のチップと支払った金額を見て喜んでいる店員に挨拶してから部屋へと戻った五人。


「キリア、もう少し具体的なリヴァイアサンの特徴を教えてくれるか?」


「父上?何が知りたいのじゃ?」


「そうだな、まずは何故リヴァイアサンが普段生息してる海域からスクチャン川まで来るのか、そしてリヴァイアサンもベヒーモス同様自分が神と崇められている自覚はないはずだ。それなのに何故雨の恵みをもたらすのかだな」


「なるほど、至極自然な疑問ですな。リヴァイアサンは翼が生えており、四肢もあるのじゃがその巨体に対して翼が小さすぎるのじゃ。スクチャン川に来る理由はおおむねベヒーモスと同じ理由だと思われますな。スクチャン川は海よりも限定された地域に大量の獲物がおる。海では足りない獲物を狩りにスクチャン川まで来て補充しておるのだと思われます」


「レン、それがリヴァイアサンを倒すのに何か関係あるの?」


「ふむ、つまりリヴァイアサンは肉体的な飛行能力を魔力で補っているため飛行性能はあまり高くない」


「そこを狙い撃ちするわけですねパパ」


「それもあるな。後は俺の個人的な感情で申し訳ないんだが、あまりリヴァイアサンと会話したくないんだ。キリア、いくらベヒーモスより防御力が弱いとはいえ直接戦闘じゃ傷一つつけられないだろ?」


「そうですな、妾は当時空中戦が不可能じゃったのでリヴァイアサンがスクチャン川に降りたところを狙いましたの。しかし剣術での攻撃はもちろん有効なはずの属性魔法でも鱗に阻まれてろくにダメージが通りませんでしたな。やはりSランク魔物、一筋縄ではいきませぬ」


「それなら硬い鱗も貫通するマイクロウェーブの出力を上げれば有効だろう。ハルサンには教会もあるし、クリスチャンとしても充実した生活が過ごせるはずだ」


「レン……まだ悩んでるの……?」


「クロ、大丈夫、私達が慰める」


「パパ……気持ちは痛いぐらい分かります……」


「ならば妾もニュートを慰めるかの」


「クロ、シロ、ありがとう。大丈夫だ。俺達がリヴァイアサンを殺してもそれは罪ではないはずだし、リヴァイアサンも天国にいけるはずだ。ニュートも共感してくれてありがとうな。キリア、やりすぎないよう適度にな」


 レンはまだSランク魔物を殺すことへの罪悪感に少し苛まれてる。


 人間と同じような知能と感情を持つ魔物を殺すのは、レンでなくともそういった罪悪感を持つかもしれない。


 そんなレンを見て少し悲しくなる4人。


 しかし、それでもリヴァイアサンから完全聖書は取り戻さねばならないことも理解している。


 5人はリヴァイアサン対策の魔法を練習しながら、それぞれ複雑な想いを抱えて残りの期間を過ごした。


 ニエフ最大の魔物リヴァイアサンとの戦い。

 

 果たして、どのような結果になるのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ